人は法を犯さずには生きていけませんし、企業も金儲けという本能を抑え込んで法を遵守する、ということはおよそ期待できません。
無論、経営幹部やビジネスパースンが、
・楽観バイアスを克服し、正しく法やリスクを認識し、賢く振る舞い、
・平時から有事を想定した法令遵守や文書管理を緻密に行い、
・危機にあって、大事を無事に済ませるための知見やスキルや経験をもって、知的にかつ賢明にかつ冷静に対応できるスキルをもっている
ということであれば、もちろん問題ありません。
ですが、実際は、そのようなことを期待するのは絶望的に困難です。
なぜなら、経営幹部やビジネスパースンは、金儲けのことが頭がいっぱいで、上記のような金儲とは無関係の事象は、ノイズとして遮断する傾向があるからです。
したがって、これから先ずっと、企業が
「1円でも多く、1秒でも効率的に金儲けをしたいし、そのことにすべての資源を集中する」
という根源的本能に忠実に活動する限り、法的リスクはなくなるどころか、企業の発展・成長にしたがって、リスクがどんどん増殖・拡大・多様化します。
すなわち、企業は、ゴーイングコンサーンを志向する限り、法務機能や法令遵守機能を実装することは不可避であり、このことは、同時に、法務キャリアの活動領域は、ますます拡大することを意味します。
他方で、現在の日本企業の法務機能実装状況は、目を覆うばかりに貧弱です。
その意味では、
「偏差値79の受験生に東大受験指導をするのではなく、偏差値29の学生に机に30分座らせる程度のことをすれば称賛され、多額の報酬がもらえる」
ような活動前提状況であり、発射地点があまりに低く、これから、どんどん成長・発展する分野であり、
「開拓者にとって無限の可能性を秘めた豊穣な処女地」
と評し得る魅力に満ちています。
企業が必要とする法務サービスや法令遵守サービスを、正しく捉え、正しく提供することで、法務プロフェッショナルを志すキャリア人材にとっては、今後、活躍の場を大きく豊かに広げることが可能な状況にあり、したがって、
「努力すればした分だけ、精神的にも経済的に社会的にも、十二分な見返りが期待できる、一生を捧げるに値する業務分野」
と考えます。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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