00602_「社内サービス提供部署」である法務部を、サービス内容・提供組織の両面から機能デザイン(設計)する

「社内サービス提供部署」
である法務部を、サービス内容・提供組織の両面から機能デザイン(設計)する場合、まず、確認しておくべきは、
「機能設計上の正解が存在しない課題である」
という前提です。

正解はありませんので、どのような機能デザイン(設計)をしても、不正解となるリスクはありませんが、ただ、制約要因をきちんと意識し、これら要因に抵触しないようにする必要があります。

制約要因の1つ目は、予算制約です。

これは、経営幹部、すなわちトップであったり(オーナー系企業の場合)、ボード(非オーナー系企業)であったり、予算権限を持つところの意思決定に依存します。

年間数億円の予算があるなら、相応の規模感ある法務部という組織が構築・運営できますし、数百万円あるいはこれにも満たない予算であれば、法務部設置を諦め、顧問弁護士に、特に重要な法務サービスに限定して丸投げし、社長自らが外注管理する方が合理的です。

制約要因の2つ目は、法務スタッフ(顧問弁護士を含む)の知識・経験・スキルといった能力による制約です。

法務サービスの質や量は、実際サービスを提供するスタッフの能力・経験・守備範囲に依存します。

法的素養がほとんどない社内法務スタッフに、難度の高い事案遂行(M&Aや国際取引や上場実務等)や過酷な訴訟事件の処理を任せるのは無理というか無謀です。

この場合、社内法務スタッフが提供できるサービスについて、サービスレベル設定(一定の限界設定)をしておき、当該限界を超えたサービスは、外注調達等する、と言った取り決めを経営判断として決めておくべき必要があります。

無論、予算制約や調達ネットワークが貧弱のため、外注調達すら困難であれば、
「最終的に法務対応を放棄する(ギブアップする)」
という消極的意思決定も含めた、不愉快な状況認識と態度決定をも、経営判断として決めておくべき必要が出てくることもあるでしょう。

こういう現実的で実際的な状況認知・状況解釈・態度決定ができないと、は
「できもしないことを、できもしない人間に、(仮にも法務なんだから、そこそこ法律には詳しいだろうし、)できると誤信して、任せておく」
ということをしてしまいがちで、このような愚かな行為は、不可逆的で壊滅的な危機をもたらすことに繋がります。

「最終的に法務対応を放棄する(ギブアップする)」ほかない
としても、それでゲームが終わるわけではありません。

そのような状況にあっても、(シチュエーション・コントロールは諦める他無いが)ダメージ・コントロールに資源を集中して、危機を乗り切る(あるいは、大事を小事に収める)ということも考えられからです。

重要なことは、
「正解が存在しない課題」
に向き合った際に、
「現実的な環境や、制約要因を無視して、あまりに非現実的な最善解を、情緒的に追求するような愚かな真似」
をしないことが重要です。

制約要因を冷静に把握し(=分際をわきまえ)、
現実解(シチュエーション・コントロールを早々にギブアップし、
ダメージ・コントロール課題に注力するなどを含む)を現実的手法で実現していく
ことが重要です。

このような観点で、デザインされた、
・当該企業の法務サービスレベル
・当該企業の法務スタッフィングの、予算レベル相応のサイズとクオリティ
が、当該企業にとっての正解といえます。

禅問答のようですが、間違った言い方を避けるとすると、こういう言い方しかできません。

安全保障の必要度や投入資源の冗長性は、ケースバイケースとなりますので、企業法務に経験のある専門家の指導と助言で決定していくことが推奨される、といったところになろうかと思います。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです