法務部の業務は、黙って座っていて持ち込まれることよりも、積極的に
「営業」
にでかけ、法務サービズニーズを発見し(気づき、気づかせ)、法務サービスニーズの価値と有用性を理解してもらい法務サービスの介入を受容してもらう必要もあります。
もちろん、黙って座っていたら、法務部に他部門(原局)から
「法的に問題が起こりそうだから、助けてくれ」
と救援が求められることもあるでしょう。
しかし、素人目にも明らかに法的問題が生じている段階、すなわち、
弁護士名義の内容証明郵便の通知が来た、
所管官庁等から問い合わせや照会文書や呼び出しがきた、
訴状が送られてきた、
新聞や週刊誌の取材がきた、
という段階では、手遅れか、あるいは解決するために顧問弁護士等社外専門家の動員を含めた気の遠くなる時間、コスト、エネルギーを要する状態にまで、成熟(悪化)してしまっていることがほとんどです。
すなわち、法務サービスの起点、すなわち法的リスクを探し出し、法務サービスを介入するような
「営業活動」、
すなわち、法務サービスの価値や有用性を他部門に気づいてもらい、早期に介入(お節介)を許容してもらうことが必要です。
この
「法務営業活動」
も
「営業対象」たる「法的リスクが生じうる事案」
を認知しないことには始まりません。
したがって、(長年平穏に行われていて法的問題が生じないことが経験上明らかな通常サイズのルーティン取引を除き)新規取引、新規事業プロジェクト、大規模プロジェクト、未経験な状況や事態の浮上、といった新規性・スケール性・病理性がうかがえる企業活動を
「取材」
によって覚知することも必要です。
したがって、法務サービスの
「営業」
にでかけ、法的リスクが潜んでいる企業活動を
「取材」
によって覚知し、
「法務サービス」
の契機を探し出し、法務サービス介入を当該担当者に理解してもらうべく、説得することが必要になってきます。
早期に発見・特定できた法務リスクは、簡単に制御できます。
契約のリスキーな条項をリスクがなくなるよう(あるいは減らせるよう)
「上書き」したり、
ビジネスモデルや座組や商流を変更してリスクを回避したり転嫁したり、
さらには、最悪、検討しているビジネスから撤退してしまえば、
リスクは根源的に消失します。
おそらく、営業部門や企画部門からは、手柄ないし手柄を立てるチャンスを潰されそうになっていることから、怨嗟の声が上がるかもしれません。
ですが、法的リスクに目をつぶったからといって、法的リスクがなくなるわけではありません。
また、法務部としては、事業を中止する権限をもっているわけではなく、最終的には取締役会ないし担当取締役の裁量により決定されますので、
「法務部が余計なことをいいやがった」
という怨嗟の声はお角違いです。
組織内にこういうことが何度か経験として蓄積されると、
「法務部が介入するとロクなことがない」
というネガティブなイメージができあがり、法務部の
「営業」
は、非常に厳しい営業活動になるかもしれませんが、このような障害をはねのけ、
「法務営業」
に邁進するタフなメンタルをもつことも必要です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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