かつて(1990年代)の民商事紛争は、判決を作成するのに、設計理論(要件事実)が必要であした。また、地裁・高裁レベルの権威が弱く、和解を強力に押し進めるだけ権力基盤に乏しき、そこのため、事件滞留が顕著でした。
しかし、これでは、規制緩和への対応が不安視されました。
すなわち、規制緩和の意味するところは、規制撤廃ではなく、規制を維持した状態で、行政による手厚い規制対応コーディネートが廃止され、規制対応は各企業や私人の自己責任で行われるようになりました。
そして、私企業間の各種調整も行政の手から離れるようになりました。
これにより、企業間の紛争も、企業と行政の間の紛争(規制遵守・抵触の疑義)も、すべて司法の場で解決されることになりました。
他方、司法予算は特段拡充されることなく、当時の司法資源(ヒト、設備、カネ)で対処することが必要となりました。
そこで、司法当局は、1998年民訴改正と平仄を併せるタイミングで、新様式判決を容認しましたが、これは設計理論なしでの判決書を是認することであり(設計図面なしで建築施工をするのと類似の手法の容認)、簡素化(手抜き)により、司法ニーズに対処することを意味しました。
合わせて、地裁・高裁レベルの権限強化が行われました(3審制から事実上の2審制へ。さらに、高裁即日結審実務の普及で、1.3審制へ)。
これに伴い、民事弁護実務や商事紛争実務、すなわち、裁判所への対処方法のあり方が顕著に変化しつつあります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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