「正しくデザインされ、策定され、発令した命令」
が、
「漫然と成果を待っていただけでは、永遠に正しく実行されないまま放置されるか、あるいは、本来の方向とは違った方向に進みだして、有害な結果をもたらすリスクが増殖する」
危険性があり、この危険を防ぐためには、マネージャーが
「正しい命令が、正しく実行されるためのスキル」
を実装し、これを実践することが必要です。
そして、
「正しい命令が、正しく実行されるため」
には、この前提として、命令の達成状況が適時適確にモニタリングされる必要があります。
人間は、ウソをついたり、ごまかしたり、すっとぼけたり、言い訳を考える習性を有する動物です。
もし、
「私はウソをついたことがない」
「ごまかしたことはない」
「すっとぼけたりしたことは生まれたこの方一度たりともない」
「人生一度も言い訳をしたことはない」
という方がいたとしたら、その方は、人間ではないか(人工知能か何かが脳に入っているか)、あるいは病的な嘘つきのはずです。
このような現実的前提をふまえると、正しい命令を誤解したり、理解してもサボったり、サボるつもりはなくとも迷走したり、あるいは勝手な判断で暴走したりする可能性は十分あり得ます。
そのような失態を犯した挙句、自己保存のメンタリティから、
「自ら招いた結果とはいえ失敗を指摘され非難される」
という不名誉な事態の発覚を先延ばしにして有耶無耶(うやむや)にしてしまおうという、姑息で卑怯な魂胆が芽生えます。
そして、
報告連絡相談を意図的に懈怠したり、
責任者や上層部が積極的に突き回さない限り報告を忌避したり、
報告をするにはするが、抽象的で曖昧で
「どうとでも解釈されるような、しかも、現場は努力して頑張っている、というメッセージが入った」
無内容な報告に終始して、事実上、事態の露見を隠蔽する、
ということも、実際の企業社会ではよくみられる状況です。
いずれにせよ、線表(せんぴょう)を策定し、線表に基づく達成状況の監視は必要です。
また、遅滞や懈怠に対するペナルティーを定め、これをシビアに運用することは必須です。
進捗状況すら管理せずに、丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制を放置容認したり、現場からの抽象的で無内容な報告を鵜呑みにするのは、NGです。
「現場を信じて、任せる」
「(線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用などは)部下を信頼していないと思われ、却ってやる気をそぐのでそこまで細かいことはしない」
などと命令の達成状況や進捗を細かく管理することを放棄すると、撤退のタイミングすら見失い、泥沼の状況に陥り、果てしない資源喪失を招きかねません。
「正しい命令が、正しく、予定どおり実行され、成果が想定どおり達成される」
ということ自体が稀有である、
という保守的な想定のもと、慎重に、臆病に、命令達成状況を細かく把握し、確認することが、プロジェクト・マネジメントにおいて必須であり、また、そのために必要な人員やシステムも、きちんと整備構築しておくべきです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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