00885_グローバル化とは全く無縁の、国毎に顕著に異なるモザイク的国際法環境

世界市場は単一化され、国際取引は日々活発化しています。

ビジネスや会計の世界では、ヒト・モノ・カネ・情報の動きが国境をやすやすとまたぎ、言語の問題は別として、マネーや会計という共通言語で国際的なプラットフオームが形成されつつあることも事実です。

このような状況をふまえると、
「法律という分野においても、国境がなくなり、自由に取引できる環境ができるようになったのではないか」
という錯覚が生じます。

実際、法律を全く知らないビジネスパースンは、往々にして、世界に
「“国際所有権”とか“国際登記”とか“国際特許権”といった趣のものが存在し、債権や物権その他の法的関係を全て可視できる共通のプラットフォームがあるはずだ。国際取引における法律は、この種のツールを利用して、一元管理すればいい」
などといった安直な妄想を抱きがちです。

しかしながら、(ビジネスやマネー、会計と異なり)法律に関して、各国は、国際化の動きに一切関知せず、むしろこれに背を向けた姿勢を固持しており、それぞれ主権国家が独自性を貫く状態が続いています。

すなわち、国際社会における法秩序に関しては、主権国家という“巨大な暴力団”が、それぞれ、法律という“ナワバリ”を使って、領土という固有の“シマ”を排他的に堅持する状況が続いているのです。

このようなモザイク的な国際法環境は、世界が単一主権国家によって独裁される状況でも出現しない限り、永遠に続くものと思われます。

ある程度国際法務を経験された方であれば常識以前の話ですが、
「世界のあらゆるところであらゆる民事規律として通用するオールマイテイーな法、としての国際法」
なるものは全く存在せず、一般に
「国際法(国際私法)」
と呼ばれるものの実体は、“シマ”ごとに異なるルールのハーモナイゼーションの手続ないし方法論に過ぎません。

一般的に、欧米先進国においては法律による統治がなされており、法律に従った行動をしていれば、予見不能な事態に陥ることは少ないといえます。

また、欧米先進国においては、日本の法令とその基本的哲学のレベルで異なる法令が存在することも少ないと思われます。

ただし、日本の法令とは大きく異なる制度が海外には存在することも事実であり、民事裁判における陪審制や懲罰的損害賠償の制度など、現地に進出する日本企業としては、その特性を十分に理解しておく必要があります。

したがって、国際法務においては、そもそも
「どの国の法律を用いて、当事者間の関係が規律されるのか」
が重要なポイントとなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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