本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年3月号(2月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」四十九の巻(第49回)「製造していないのに『製造業者』?」をご覧ください 。
当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
米国 健康食品メーカー ストマックス
相手方:
一般消費者
製造していないのに「製造業者」?:
当社は、ダイエット効果があるとされる人気健康食品を、倒産しかかっているアメリカの会社から、大量に安く買い、日本で販売しようとしています。
PL法というのは製造物責任のことですから、メーカーが責任を負うものであり、販売するだけで製造にはタッチしていない当社には一切関係ないはずです。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:特別法としての製造物責任法
ある製品の欠陥が原因となって損害が発生した場合、その損害の賠償を請求するためには、民法の不法行為(民法709条以下)に基づいて、被害者が加害者である製造業者に故意・過失があること等を立証しなければならないのが原則です(過失責任)。
平成7年に製造物責任法(PL法)が施行され、故意・過失の有無に関係なく、被害者が製品に欠陥があることを証明すれば、製造業者に損害について責任を負わせることとしました。
対象となる
「製造物」
とは、製造または加工された動産であり、未加工の農産物や目に見えないサービス、土地・建物は対象外です。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:メーカー以外は関係ないか?
消費者保護の観点から、製造物責任は決してメーカーだけの問題ではありません。
同じ販売業者であっても、国内製品の販売であれば製造物責任法は適用されませんが、輸入品の場合は適用されます。
次のいずれかに該当する者を
「製造業者等」
として、製造物責任法上の責任主体と規定されます。
1.「当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者」(1号)
2.「自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」(2号)
3.「当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者」(3号)
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「欠陥」とは
製造物責任法が無過失責任だといっても、
「欠陥」
がなければ、責任を負うことはありません。
「欠陥」
とは、
「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(法2条2項)
とされ、次の3種類があります。
1.設計上の欠陥
2.製造上の欠陥
3.指示・警告上の欠陥
消費者の目に付きやすい態様で指示・警告内容を明確に理解できる形で表示しなければ、
「欠陥あり」
とされてしまいます。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:輸入業者としての対策
輸入業者としては、海外製造者との間で事前に契約上、責任の所在を明確にしておくべきです。
「本件商品の欠陥により・・・(略)その全額を売主が負担する」
というような特約を結ぶことが推奨されます。
また、特約があっても海外製造者にすぐに100%責任を負わせるのは実際上困難ですから、被害者に対する損害賠償への早期解決策としてPL保険を付けることも検討すべきでしょう。
助言のポイント
1.製造物責任法上の「製造業者」には、輸入業者も含まれる。
2.設計や製造工程上だけでなく、指示・警告文での事故発生回避措置を取らなければ責任を問われることがある。
3.PL適用外だといっても安心するな。PLは立証責任を緩和しているだけで「無罪放免」というわけではない。PL適用外でも一般不法行為責任を負う場合がある。
4.リスクを想定し、契約上の予防措置やPL保険等で対策を怠らないようにすること。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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