弁護士は、クライアントの利益を徹底的に守らなければなりませんし、高度で厳格な守秘義務を負っていることから、クライアントにとって不利な事柄は黙っていても差し支えありません。
すなわち、職業倫理上、弁護士は、クライアントにとって有利なことを、詳細に、何度も何度も、証拠(と周辺の事情)をつけて、声高に主張しますし、クライアントにとって不利な事柄は黙る(あるいは、言い換えや抽象度の高い表現を使って、目立たなくする)べき、ということになります。
そうすると、裁判所には、
「クライアントにとって有利なこと」
だけがピックアップされ、これが増幅・誇張され、他方、
「クライアントにとって不利なこと」
はすっぽりと抜けた
「歯抜けのような話」
が提出されます。
その結果、裁判所に
「美しい誤解」
が生じます。
この
「美しい誤解」
は、クライアントにとって歓迎すべき状況ですので、弁護士としては、
「美しい誤解はそのまま」
にしておきます。
弁護士は、ウソをついているのでは、ありません。
弁護士として、真剣にかつ誠実に、かつ愚直に、職業倫理にしたがったら、結果として、
「美しい誤解」
が生じただけなのです。
弁護士が語る話は、
「職業倫理遵守」
によって、事実とズレたものとなってしまいますが、これは
「ウソ」
とはいわず、
「ストーリー」
といいます。
弁護士は、ストーリーは語りますが、ウソつきではない、のです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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