01145_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(2)事前想定リスク実現型有事への対応

企業のビジネスジャッジメントとしてリスクテイクした事業分野において、事前に予測していたリスクが具現化するケースは、報道機関対応や官庁対策をあらかじめ想定してある場合が多く、対応組織が整備され、組織の役割や責任は明確となっていることが多いと思われますから、その意味では対応はある程度容易なはずです。

このケースでは、そもそも法令違反の前提として、法令の解釈・適用の点で、企業と監督行政機関、あるいは報道機関や一般世論の考え方が乖離しているだけであり、その意味では、慌てることなく腹をくくって対応するしかありません。

金融証券取引規制の陥穿をつく形で、敵対的TOB、あるいは敵対的TOB対抗策を仕掛けた前述の戦略法務を実施した企業の例などがこれにあたります。

行政機関の法運用が公正とは言い難く、企業活動に対して必要以上の規制を及ぼす形でプレッシャーをかけてくるのであれば、企業としては行政訴訟(処分取消しや処分差止め)や国家賠償請求訴訟の提訴や行政不服審査の申立ても視野に入れ、先手先手で対応していくべきです。

01104】の表で紹介したように夢真ホールディングスが、財務局担当者に対して
「当社が提出したTOB届出に不服があるなら、きちんと不受理処分をせよ。こちらは当該処分を争い、国家賠償請求を行うだけだ」
と応じたのはまさにこのような対応であり、模範とすべき対応と評価できます。

また、報道機関が誤解を招くような報道を行うリスクも想定し、こちらから事前に、積極的なプレスリリースを行うとともに、取材対応時の姿勢ないし方針も事前に作っておくべきです。

無論、報道機関が取材も裏付けもなく、憶測で虚偽あるいは不当に歪曲した事実の報道に及んだ場合、速やかに対抗措置を採るべきです。

さらに、株式公開企業の場合、一般世論に加え、株式市場の評価も重要です。

したがって、投資家に対して事態と今後の推移の予測を適正に説明した内容の情報を適時に開示すべきことも想定し、しかるべき準備をしておかなければなりません。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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