企業組織運営に関する予防法務上の課題で忘れられがちなのが、取締役会運営の機能化・実質化という点です。
特に、会社法違反を理由として経営幹部が代表訴訟において被告とされた場合、適切に経営裁量を行使した事実を明らかにして、身の潔白を証明する重要な立証手段が、取締役会での決議です。
ところが、相当規模の大きな会社であっても、取締役会が形骸化し、あるいは取締役会議事録が整備されていないところが多く、このため代表訴訟において、特定の取締役の暴走を推認され、訴訟上厳しい立場に置かれる場合も少なくありません。
なお、会社法において、典型的株式会社(取締役会設置型株式会社)において、取締役会の決議により定めることが求められている事項は、次のとおりです。
よく忘れられがちな法定の取締役会承認事項として、競業取引と利益相反取引を、整理しておきます。
競業取引や利益相反取引は、個人(オーナーやトップ)と法人の役割や立場が明確に分離していない中小企業においては日常、会社と取締役との間の取引が多く行われていますが、所定の取締役会の開催と承認決議を経ておかないと、 トラブルになる可能性があります。
また、多くの子会社を含めて企業集団を形成しているような大企業であっても、役員派遣している子会社と親会社との取引を行うときは、このような取締役会による承認手続が必要となりますので、やはり注意は怠れません。
最後に、取締役会決議を行う上で、特別利害関係人を排斥しておかないと、後日、当該決議の不備を突かれる危険が生じます。
すなわち、代表取締役解職決議における当該代表取締役や、利益相反取引や競業取引の承認決議における当該利益相反取引ないし競業をなすべき法人兼務役員などは、私心を排して決議することが期待できない関係上、法律上当該取締役を排斥した上で(具体的には決議の場からの退席)決議を行い、その旨議事録にも残しておくべき必要があります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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