労働者が裁判所に訴え出て、司法権の行使、すなわち、
「解雇に理由があるのかないのか」
「労働者に非違行為があるとして、解雇という処分が相当か否か」
という点についてシロクロつけてもらいましょう、という争いが展開されることになります。
とはいえ、裁判所での解決を求めるといっても、通常の訴訟手続以外に、いろいろとメニューがあります。
解雇を争うのは労働者側ですので、
「裁判所での解決におけるどのメニューを選択するか」
は労働者側にイニシアチブがあり、企業側としては、各手続の性質にあわせて適切に応訴対応していくことになります。
1 簡易裁判所での調停
まず、簡便な話し合いの方法として、労働者側が簡易裁判所における調停を申立てる場合があります。
調停というのは、裁判所のテーブルで行われるものの、
「話し合い」
には変わりなく、内容に不服であれば無理に和解に応じる必要はありません。
すなわち、調停は、簡易裁判所の調停室で行われ、調停委員という斡旋者(弁護士であったり、半ばボランティアのおじさん、おばさんであったりします。
言うなれば、落語に出てくる「ご隠居さん」のような存在です)を通じて、話し合いが可能かどうかについて検討が行われます。
ちょっとしたボタンの掛け違い程度の紛争であれば、調停で解決をみることもありますが、
「クビを切って路頭に迷わせやがって、このボンクラ社長!」
「そっちこそなんだ、デキねえくせに、この不良社員」
という趣の熾烈な紛争になってしまっている事件の場合、裁判所の調停室で調停委員がいろいろお節介を焼いてくれようが、全く埒があかず、無駄に時間だけが流れる、という展開もありえます。
調停委員は、金色のバッジをつけて裁判所の中で訳知り顔をして悠然としていらっしゃるものの、紛争となっている事項についてシロクロつける権限があるわけではなく、やっていることは
「ただのお節介」
と変わりありません。
不合理なことをいわれたら、直ちに席を蹴って帰ってきても全く問題はありません。
このように応じる必要がないにもかかわらず、その場の雰囲気にのまれてしまい、調停委員の剣幕に押されて不服な和解を受諾してしまったら、後から和解内容を争うことはできなくなります。
したがって、雰囲気や調停委員の剣幕に押されることなく、
「不服があれば、調停委員だろうが、誰だろうが、一切話に応じない」
というスタンスを堅持することが重要です。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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