(1)経営資源「モノ」に関する企業活動の質的な変化
経営資源である
「モノ」
に関する企業活動は、質的な変化が急激に進んできています。
「モノづくりは日本産業のお家芸」
との言葉に代表されるように、これまでの日本企業は、使い勝手がよく、安全・高品質で、値頃感のある
「モノ」
を作り出すことを得意としていました。
そして、日本企業は、
「高度な製造活動のためのインフラである、高い技術力と生産設備操業能力、さらにはこれを担う優秀な人材」
を自ら保持し、育成してきました。
ところが、
「モノづくり」
を得意とした日本企業も、ビジネスの進化に伴い、下請やOEM生産等によるファブレス(工場設備を持たない製造業)化や生産拠点の海外移転等を積極的に行うようになりました。
このようにして、近年、日本企業において
「モノづくり」
の意味が加速度的に希薄化するようになってきました。
「モノ」
との関わりの希薄化は、品質面、安全面、規格ないし法令遵守面における企業の管理が行き届かなくなる危険が増幅してきたことも意味します。
例えば、日本国内での工場操業においてはコンプライアンスや製品の品質や安全性に対するこだわりが浸透していても、日本企業が生産を海外に委託する場合における現地委託先企業が当該観念を欠落している場合、日本企業は大きなリスクを抱えることになります。
少し前に発生した中国産食品における毒物混入事件は、
「モノ」
との関わりが希薄化した企業において、委託先のモラルハザードがリスクとして現実化した現象といえます。
(3)「モノ」に関する法務対策が失敗した場合における影響
輸送機器、建物、食品、薬品、電気製品等、企業から製造される
「モノ」
は何らかの形で消費者や社会に関わり、また、消費者や社会は企業が製造する
「モノ」
の品質や安全性に大きな興味と関心を抱きます。
「モノ」
に関する法務対策の失敗は、即大きな社会問題に発展し、企業に対して回復不可能な損害をもたらします。
この意味において、
「モノ」
に関する企業活動の法務は非常に重要です。
前述のとおり、
「モノ」
と企業との関わりは歴史的に古く、調達・製造関連法務は成熟した法分野といえますが、企業にとっての重要性や海外生産委託の動き等の急激な変化もふまえ、今一度、調達・製造法務を入念に見直す必要があります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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