代表的な有事シナリオとして、三菱自動車の欠陥隠蔽問題の事件経緯を見ていきます。
有事の際には、猛スピードで事態が企業にとってマイナスの方向で進むことを正しく予測し、最悪のシナリオが現実にならないよう、積極的・能動的な取組みが必要となってきます。
特に、調達・製造関連の不祥事は、消費者への影響が大きく、売上に直接的な影響をもたらします。
能動的に企業価値低下を防御しないと、一気に企業崩壊を招く危険があります。
また、日の前のトラブルだけをみていてこれだけを近視眼的に処理しようとして、1つのウソをつくと、どんどん退路を絶たれ、より大きな不祥事に発展していくことになります。
事実調査を正確に実施しようとしても、現場は完全に保身に回り、正しい事実を報告せず、その場限りの適当な報告しか提出しなくなり、 トップは正しい情報から遠ざけられます。
全ての有事対応の出発点は、客観的で正確な情報を把握することです。
そのためには、ウソを見抜く知性と能力を有する外部の専門家の力を総動員し、まず、客観的な事実に対して正しい評価を迅速にすべきです。
有事対応方針を策定する際にも、外部の客観的視点が必要になる場合があります。
経営幹部は、日常の業界のビジネス慣行には多くの知識と経験があるため、正常な環境で企業運営を行うことのできる
「平時」
においては、会社運営に大きな力を発揮します。
ところが、
「社会や消費者に対して脅威を与えたと疑義を持たれ、厳しい非難を浴び、企業の存亡に関わる有事状況」
においては、社会的・巨視的視点を持ち、これまでの慣行ややり方に根本から疑間を抱き、批判的観点から事実を検証し、社会や消費者が受け入れられる改善を行うことが求められます。
この点において、日常のビジネス・マネジメントの経験がかえって仇になる場合があります。
すなわち、有事状況においては、従来の企業慣行・業界慣行において
「正常」
と考えてきた事業プロセスが、法的視点・社会的視点から想像外の批判を加えられてきているわけですから、マインド・イノベーション(思考改革)ともいうべき姿勢で事態に臨む必要があります。
そして、マインド・イノベーションにおいて、最も有害になるものは、過去のやり方への固執です。
このような失言が登場し、有事に直面して困難な状況にある企業を最悪な状況に陥らせるトップの行動の背景には、日常のビジネスジャッジメントの世界から抜け出し、危機管理思考への転換が図れなかったことによるものと思われます。
調達・製造法務における有事においては、ステークホルダーごとの対応が同時進行で求められます。
ステークホルダーズの様々な動きや刻一刻と変化し増幅する危機状況を正しく認識しながら、本書企業法務総論で述べた想定外リスク発生型有事状況における不祥事等対応法務(企業の法令違反行為に起因する有事対応法務)をスピーディーに実践していくことが求められるのです。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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