不正競争防止法上の要件を充足した企業内機密情報は
「営業秘密」
として法的に保護されます。
ところで、この
「法的な保護」
の態様については、やや複雑な規定ぶりとなっています。
これは、
「営業秘密」
を取得した従業員が第三者たる他企業に開示する状況としては様々なケースが想定されることから、多数の
「営業秘密」
開示状況における各禁止行為を個別的に列挙していることによるものです。
以下、不正競争防止法における規定に従い、従業員が
「営業秘密」
を不正に取得した場合と、正当に取得した場合とに分けて、営業秘密取得行為が
「不正競争」
となる場合を整理します。
1 従業員が「営業秘密」を不正に取得した場合
この場合において、当該従業員から
「営業秘密」
を取得したり使用・開示を受けた第三者がどのような形で
「不正競争」者
とされるのかについては、図のとおり整理されます。
2 従業員が「営業秘密」を正当に取得した場合
この場合においても、図のとおり、一定の場合、当該従業員から
「営業秘密」
を取得したり使用・開示を受けた第三者が
「不正競争」者
とされる場合もあります。
ライバル会社から転職してきた他社の
「営業秘密」
に接するような場合、当該
「営業秘密」
を取得等する前後の状況によっては、不正競争防止法違反上のトラブルに巻き込まれる危険が生じます。
特に、
「営業秘密」
の二次取得者に刑事罰(10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金又はこれらの併科。法人にも刑事罰として罰金)が科される場合もありますので、ライバル企業から
「営業秘密」
と思われる情報を持参して転職してくる従業員を受け入れる企業は、不正競争防止法の
「営業秘密」
保護の仕組みを十分理解した上で、慎重な対応を行うことが求められます。
なお、営業秘密を持ち出された側の企業(被害企業)は、
「当該営業秘密を漏洩した従業員等を経由して、当該営業秘密を取得し、あるいは使用・開示を受ける企業を、悪意あるいは重過失に陥らせる」
ことを企図して、報道を通じて被害を公表し、あるいは警告を発したりすることがありますので、こうした動きにも十分な注意を払う必要があるでしょう。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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