01289_知的財産法務>知的財産及び情報マネジメント法務。経営資源「チエ」の調達・活用に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>2011年特許法改正その3_審決取消訴訟等の手続の合理化

01287】の4(3ではなく、先に4)について概説します。

これまで、無効審判の確定審決に対して審決取消訴訟が提起されるような場合には、裁判の途中で訂正審判が申立てられることが度々ありました。

具体的には、特許庁から無効審判を受けた特許権者が、当該無効審判を争って知財高裁に提訴しておきながら、他方で、特許庁に対して
「(審判により無効と判断された特許を)法的に瑕疵のない請求項(クレーム)」
に訂正する申立てを同時並行的に行うという事例となって現れます。

これは、
「ダブルトラック問題(行政と司法の双方が共同で所管する、という特許権制度に由来する混乱要因)を巧みに利用して、特許無効化という事態を実質的に回避する戦略」
によるものです。

そして、前記のように、知財高裁継続中に訂正審判申立を並行して行って訂正審判が出された場合、
「訂正審判に基づき、知財高裁によって無効審判が取り消される(審決取消判決)」
という事態が生じ、この審決取消判決を前提として、また特許庁において無効審判が再開される、といった形で手続が大混乱に陥ることになります。

この問題の元凶が
「訂正審判の申立てが自由にできる」
という取扱いによるものであったことから、本改正において
「裁判所に審決取消訴訟が係属している間は、特許庁に対して、訂正審判の申立てを行うことができない」
という形で訂正審判申立に合理的制限が加えられることにより、問題の解決が図られることとになりました。

その他、本改正では、審決取消訴訟等の手続の合理化による迅速な紛争処理の実現のため、再審の訴え等における主張制限の規定も設けられました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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