02195_方便は戦術その2_「怒りの演技」に騙されるな _弁護士の交渉を見抜く技術
法務の現場では、弁護士が“怒る”場面に遭遇することがあります。 しかも、唐突に、極端に、激しく。 「この条件はふざけている。話にならん」「訴訟を辞さない」 声を荒らげ、机を叩き、身を乗り出して迫ってくる弁護士を前にして、「相当、怒らせてしまった」「これはもう引かざるを得ない」「本気で限界なのだろう」と受け取ってしまうこ...
法務の現場では、弁護士が“怒る”場面に遭遇することがあります。 しかも、唐突に、極端に、激しく。 「この条件はふざけている。話にならん」「訴訟を辞さない」 声を荒らげ、机を叩き、身を乗り出して迫ってくる弁護士を前にして、「相当、怒らせてしまった」「これはもう引かざるを得ない」「本気で限界なのだろう」と受け取ってしまうこ...
「法的整理は最後の手段だから、できれば避けたい」。 多くの経営者がこう考えます。 しかし、この理解は誤りです。 法的整理の本質は清算ではなく再生です。 裁判所の制度を使い、債権関係を整理し、時間を確保するための正規の手続です。 任意の交渉では行き詰まった場面で、秩序を回復するために用意された仕組みです。 禁じ手ではあり...
「逆粉飾、できますか」。 儲かっている会社を、意図的に赤字に見せかける。 通常の粉飾決算と真逆のこの発想は、裏技ではなく、ただの違法行為です。 逆粉飾を行えば、金融商品取引法・会社法・税法のいずれにも抵触します。 その瞬間に、経営者個人の責任が直撃します。 追徴課税や課徴金だけでは終わらない。 損害賠償、刑事責任、そし...
「企業法務は民事マターが中心」いまだにそんな牧歌的な幻想を信じている法務部員や経営者が、想像以上に多いようです。 契約書の条文を丁寧にチェックし、利用規約の文言に頭を悩ませ、取引先との合意形成に汗をかく。 いずれも立派なお仕事です。 しかし、その丹精込めて整えている社内業務のど真ん中に、もし“刑事事件の地雷”が埋まって...
企業法務の世界は、一般に「民事中心」と思われがちです。 実際、多くの法務担当者にとって、日々の関心は契約書のチェック、取引先との合意形成、社内規程の整備、労務管理といったところにあります。 ところが、企業法務のあらゆる場面に、“刑事事件のリスク”の芽がある、といっても過言ではありません。 しかも、そのリスクは、「悪意の...
事業承継の現場には、法務だけでは語りきれない「感情のもつれ」がつきものです。 親子間のわだかまり。 兄弟姉妹の不公平感。 義理の家族との距離感。 たとえば、長男に会社を継がせると決めていた父親が、いざ引退の時期が近づいてくると、急に決断を先送りにしはじめる。 あるいは、会社を手伝ってきた長女が、いくら貢献しても「経営は...
企業では、「理解しました」という言葉がよく交わされます。 それがそのまま「同意があった」と受け取られてしまうことも、少なくありません。 しかし、法務の立場から見ると、「理解=同意」とは限りません。 たとえば、「Aという事実があったことは理解している。でも私はそれに納得していないし、同意もしていない」。 こう言われてしま...
「そういう意味では言っていない」 「いや、間違いなくそう聞いた」 この手のすれ違いは、企業活動の至るところで発生します。 そして、厄介なことに、どちらかが意図的にウソをついているわけではないことも多いのです。 むしろ、双方が「自分の記憶こそ正しい」と、本気で思い込んでいるのです。 そこにこそ、最大の落とし穴があります。...
「研修はしました」トラブル発生後に、そう釈明されることがあります。 確かに、企業として必要な研修を実施していた。受講記録も残っているし、社内メールでも周知済み。それなのに、なぜ起きたのか── 答えは、はっきりしています。 それは「研修“だけ”で済ませてしまった」からです。 研修は、実施すること自体が目的ではありません。...
「たしかに確認はしました。でも、大丈夫そうだったので通しました」 ある中堅企業の担当者が発した言葉です 。 それは、取引先との契約書を担当者とその上長が確認し、法務部門もチェックをした上で決裁に至った案件でした。 ところが、後日、契約条項の一部について、親会社の監査役から「法令違反の懸念がある」と指摘を受けることになり...