01054_名誉毀損はどういう場合になる?(教えて!鐵丸先生Vol.009)

名誉毀損というと、ウソを言って相手の評判を下げる、というイメージがあるかもしれません。

法律的には、本当のことを指摘すると名誉毀損成立です。

本当のことであっても、他人のイメージダウンになるようなことは言いふらしてはいけない、というのが正しい法律理解です。

ただし、例外はあります。

公益を図る目的があれば、デマでなく、本当のことであるという証明材料を整えた上で、他人の醜聞を言いふらすのは、名誉毀損にはならない、というものです。

政治家のプライベートが、週刊誌で暴かれても、それ自体は罪にならず、本当かどうか、証拠があるのかどうかということに限定して争われるのは、そのような法的理解が前提となっています。

尚、名誉棄損で訴えた場合の慰謝料は、とても安いです。

「慰謝料はほとんど見込めない」
と、わかっていても、争われることがあります。

たとえば、醜聞を拡散された有名人が、
「黙っていると認めたことと同じことになってしまう」
からと週刊誌等を訴えざるを得ない場合もあるのです。

最近は、誰もがSNSで簡単かつ気軽に、世界に向けて言いふらしができますが、
「本当のことだからつぶやいていいだろ」
「世間で話題になっている社会的テーマだから、いちいち裏付けとか取らなくても、噂ベースでも発言しといてもいいだろ」
という感覚だと、大きなトラブルになる可能性があります。

ここで、名誉毀損という愚かな行為を避けるための訓戒をご紹介しましょう。

「褒める言葉が無ければ何も言うな」
ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01053_海外の取引先とモメそうなんですが(教えて!鐵丸先生Vol.008)

取引する前には契約があるはずです。

契約書を読んだうえで取引をはじめているはずです。

それなのに、契約書を読まない人がけっこういます。

どういう状況、どういう環境で、取引をしているのか、わかっていない人が多いのです。

モメる流れとしては、

1 品質が違う・スペックが違う・納期が守られていない・話が違う等、クレーム的なビジネスレターが届き、
2 弁護士が出てきて、険悪なやり取りが始まり、
3 解決できなければ裁判(あるいは仲裁)、国際的なケンカに突入します。

海外の取引先と、国際的なケンカをする場合、一番大きなファクターは、莫大な時間と費用と手間がかかることです。

弁護士費用だけでも、甚大です。

そして、アウェイ戦(相手国の法律に拠る裁判)となると、負ける確率はすごく高くなります。

サッカーや野球でも、ホームとアウェーでは戦績が異なる、といわれますが、勝てる場合もありますね。

しかし、裁判においては、アウェー戦は圧倒的に不利です。

戦いが始まった瞬間、ギブアップ、泣き寝入りとなる日本の会社が圧倒的に多いです。

「モメる」前
に、決めておきましょう。

契約の際、契約書に、
「紛争が起こったら、日本の法律に基づき、日本の裁判所で決着をつける」
という一文を入れましょう(準拠法条項とか管轄条項とかいったりします)。

「モメそう」
になってしまったら、時間と費用と手間をどこまで拡大するのか、きちんとみきわめましょう。

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01052_海外との取引をする際の国際法ってどんなもの?(教えて!鐵丸先生Vol.007)

ビジネスや会計の世界では、ヒト・モノ・カネ・情報は国境をまたぎ、国際的なプラットフォーム(たとえば、IFRS:国際会計基準)が形成されています。

このような状況をふまえると、
「法律という分野においても、国境がなくなり、自由に取引できる環境ができるようになったのではないか」
という錯覚が生じましょうが、
「国際法」
「国際登記」
「国際特許権」
という法律はありません。

すなわち、法律に限っていえば、国際化、共通の統一ルールはなく、主権国家ごとに独自性を貫く状態が続いているのです。

海外の会社と取引すると、
・モノが違う
・価格が違う
・納期が遅れている
・品質がおかしい
・つかえない
・想定外
・話があわない
と、トラブルは山のようにあり、頻発します。

だからこそ、契約段階で、
「いざ、モメた場合に、どちらの国の法律をつかって解決するのか」
ということを、あらかじめ決めておくのです。

たいていは、売り手・買い手の力関係で、
「どちらの法律をつかうか」
が決まります。

ケンカは最初にやっておきましょう。

最初に波風をたてることをいやがると、あとから、津波がきますよ。

契約段階でケンカを避けていると、モメてから、
「どちらの国の法律をつかうか」
を決めるためだけに延々と争うこととなり、時間と費用と手間の損失は甚大なものとなります。

モメることを前提に、関係構築をしておきましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01051_企業間紛争におけるゲームメニュー、プレースタイル(話し合いか、脅し合いか、殴り合いか、殺し合いか)

企業間の取引関係において、認識の相違、解釈・評価の相違、意見の相違が生じ、これが論争、紛争に発展する場合があります。

企業間紛争や企業間争訟と呼ばれる状態、すなわち企業間有事状況の出来です。

企業間紛争に至った場合、どのようなゲームメニュー、プレースタイルが想定できるのでしょうか?

私なりの整理ですが、企業間紛争におけるゲームメニュー、プレースタイルとしては、 アナロジーを交えて整理しますと、

1 話し合い
2 脅し合い
3 殴り合い
4 殺し合い

の4種に大別されます。

すなわち、敷衍しますと、

1 話し合い(ビジネスマターとしてのネゴ):
お互いビジネスマンとして、単純な利害得失を考えて、互譲し、妥協できるか腹の探り合いをする。


2 脅し合い(リーガルマターとしてのネゴ、裁判外交渉):
単純な利害得失に加え、法的観点を加え、いざとなれば、訴訟における紛争を予知し、あるいは相手に理解認識させつつ、主張の優劣、証拠の整備状況あるいは同種事例の裁判例の傾向等を踏まえた、訴訟における帰趨を視野に入れつつ、
「訴訟となればこのような結論が期待できるが、訴訟を行って結論を実現するための時間とコストと労力を勘案して、期待値からディスカウントし、妥協する」
という形での腹の探り合いを行う。

3 殴り合い(訴訟を提起するが、訴訟上の和解をゴールとする):
訴訟を提起し、主張や立証の応酬はするが、証人尋問前、あるいは証人尋問後において、裁判所から和解の勧告(和解勧試)があれば、これにしたがい、最終的に訴訟上の和解という形で事件を解決する、あるいはそのような帰結を指向した紛争を展開する。
なお、第一審段階で訴訟上の和解に至る場合もあれば、第一審段階では判決を得るまで訴訟手続を完遂し、第二審(現在の民事訴訟法制度においては事実上、実質上の最終審)においては訴訟上の和解を受諾する場合もある。

4 殺し合い(訴訟を提起するが、訴訟上の和解は行わず、裁判所が判決を下してシロクロ決着がつくまで紛争を継続する):
訴訟を提起し、主張や立証の応酬はし、証人尋問前、あるいは証人尋問後において、裁判所から和解の勧告(和解勧試)があっても、これを峻拒し、確定判決を得るまで訴訟手続を完遂するタイプのプレースタイル。

一般の方の感覚だと、
「訴訟というものは判決をもらうために行うものであり、一旦訴訟となれば、原被告も裁判所も、 後先ひけず、判決に向かって、まっしぐらに走り続けるものだろう」
という印象があるかもしれませんが、実際のデータが示すところは、概ね6,7割の訴訟事件が和解で終結している、というものです。

古いものですが(平成17年とりまとめ)、司法当局(最高裁判所)が
裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第1回)
としてまとめた地方裁判所の民事訴訟事件(第一審)の審理の状況をみてみますと、地方裁判所で取り扱う民事訴訟第一審事件(簡易裁判所は含まないので、相応の訴額で、それなりに重篤な事件を有するもの)において、5万522件の判決が下されている、とあります。
そして、判決に至る事件のうち約1万9千件は欠席判決(銀行等が原告となって、私文書に過ぎない貸金契約書を、強制執行可能な公的な判決正本に転化させるためだけの純手続的な事件で、被告も何ら争う意義も必要性もないので出席すらしないような裁判)であり、被告が出席して何らかの形で争って判決を下される場合が3万1,373件とあります。
とはいえ、判決が下されるといっても、やはり
「貸金契約があって支払義務は明らかだが手元不如で支払ができない」
といった
「主張(話の筋)や証拠(記録、痕跡)からして、権利や義務が明々白々な事件で、被告も一応、裁判に出席することはするが、1、2回程度期日を重ねても、非法律的な弁解をしたり、『ちょっと待ってくれ』『支払う額を負けてくれ』『勘弁してくれ』といった、法的には意味不明な浪花節を叫ぶ等をするも、相手にされず、やむなく判決に至る、というタイプの事件(紛争の体をなしておらず、勝敗が予定調和とされる、事務ルーティンとしての訴訟事件)」
も相当数含まれています。
こう考えると、
「対審構造が成立し、当事者が真摯に争い、裁判所の和解勧試も奏効せず、判決まで至った事件」
というタイプの判決事案は、2万件以下と推測されます。

他方で、訴訟上の和解は約3万8千件(37,787件)もあり、欠席判決ではなく、現実に争われて判決まで至った事件の数をはるかに上回っているものと推測されます。

このような観察(高度の蓋然性を伴う推測を含む)を前提としますと、企業間紛争が訴訟にまでもつれ込んだからといって、すべて
4 殺し合い
が必定となった、と考えるのは早計です。

むしろ、実情としては、
3 殴り合い
こそがデフォルトのゲームスタイルなのであり、
「レフリー(裁判所)が殴り合いを止めさせようととしてTKOを宣言してもなお、対戦相手の一方が、レフリーを殴りつけてTKOや制止を振り切り(訴訟上の和解を拒絶)、なおも殴り合いを続ける」
という異常事態があった場合に限定して、裁判所が、いやいや、しぶしぶ、仕方なく(判決書を起案、作成するという手間を投入して)判決を下して事件を終わらせる、というのが現実の裁判手続きにおいて行われていることです。

すなわち、訴訟事件の終結のデフォルトイメージや、そこで基本的・原則的に想定される裁判所の機能や役割としては、
「コンピューターやAIのように、迅速かつ効率的に、かつ正確無比に、一定の問題について結論を提示する高性能の判定マシーン」
などではなく、
「古代ギリシア演劇におけるデウス・エクス・マキナ(劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在〔神、時の氏神〕が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法)」
のようなものとして想定されています。

なお、上記分類にかかるゲーム類型が成立するには、当事者・関係者全員(当事者双方のほか、
「3 殴り合い」

「4 殺し合い」
については、最重要ステークホルダーたる裁判所も含む)がどのゲーム類型を選択するのかという意思ないし認識が合致している必要があります。

例えば、一方当事者が、
「1 話し合い」
を指向しても、相手方(他方当事者)が弁護士を動員し、あるいは訴訟を提起して、
「2 脅し合い」
「3 殴り合い」
「4 殺し合い」
を指向すれば、
「1 話し合い」
というゲームは成立せず、より強硬でシビアなゲームに移行していきます。

この文脈で言えば、事態を楽観的に考える当事者に対向する側としては、より、強硬でシビアなゲームを想定し、準備し、先回りすることで、アドバンテージを確保できます。すなわち、相手方が
「1 話し合い」
ないし
「2 脅し合い」程度
で事件が解決するであろう、と軽く、甘く考えている状況において、完全な準備と想定をして、社内においては資源動員の意思決定を終え、同動員体制を整えて、準備や心構えの整っていない相手方を、いきなり負荷のかかる
「3 殴り合い」
「4 殺し合い」
ゲームに引きずり込むことによって、相対的にゲーム制御可能性を高め、有利にゲームを進めることができる、ということになります。

また、訴訟を担当する裁判所が攻撃防御の応酬は
「3 殴り合い」
にとどめ、判決を書くことなく、最終的に、訴訟上の和解による決着を指向しても、当事者の一方あるいは双方が
「4 殺し合い」
を望むなら、訴訟を提起されて判決による解決を求められた裁判所としても解決を拒否することはできず、判決を下して、最終的にどちらが勝者であるか、
「判決書起案・作成にかかる負担」

「上訴されて自らの判決が覆滅させられるリスク」
を受容して、
「4 殺し合い」
の決着を宣言する役割を担うほかありません。

なお、企業間紛争におけるゲームメニュー、プレースタイル(話し合いか、脅し合いか、殴り合いか、殺し合いか)と、ゲームやプレーに関わる担当者やプロフェッショナルとは相応に相関性が看取されます。

すなわち、

1 話し合い(ビジネスマターとしてのネゴ):
このゲームメニュー、プレースタイルが選択された場合、ビジネスの担当者は外され、双方、ビジネスの責任者(予算と決定権を有する者。代表取締役の場合もある)が登場して、一定の妥結を行い、最終的に妥結内容を文書化する場面で、法務担当者や顧問弁護士が登場します。

2 脅し合い(リーガルマターとしてのネゴ、裁判外交渉):
このゲームメニュー、プレースタイルが選択された場合、 ビジネスの担当者は言うに及ばず、ビジネスの責任者もプレイングフィールドから退席し、法務担当者や顧問弁護士が登場し、彼が主導して、プレーを展開します。
実際は、内容証明郵便による通知書、という形で、法的な観点を加え、紛争帰結を匂わせた法的にフォーマルな宣戦布告文書が飛び交い、もっぱら代理人弁護士間(弁護士が参加しない場合、ビジネス責任者名義で、法務担当者が起案し、背後で支援する形で)で交渉が繰り広げられます。

3 殴り合い(訴訟を提起するが、訴訟上の和解をゴールとする)

4 殺し合い(訴訟を提起するが、訴訟上の和解は行わず、裁判所が判決を下してシロクロ決着がつくまで紛争を継続する):
このゲームメニュー、プレースタイルが選択された場合、 ほぼ100%、弁護士が訴訟代理人として起用されます。
体制としては、ビジネス担当者(部署で蓄積された事実や事情の記憶と記録を管理して、これらを取り出す)、法務担当者(社内で蓄積された事実や事情のミエル化、カタチ化、言語化、文書化)、ビジネス責任者(紛争遂行の予算と状況を把握・管理し、重要な戦略上の意思決定を担う)及び訴訟代理人弁護士(法務部等から提出された紛争に関する事実や事情を言語化、文書化、最適化、フォーマル化する)という役割分担が構築され、和解にせよ、判決取得にせよ、あるいは相手方や裁判所の出方によって可変的なゴールを求めるにせよ、ベストなゴールを目指してゲームを展開していくことになります。

最後に、各ゲームメニュー、プレースタイルとコストとの関係についてです。

当然ながら、

「1 話し合い」<「2 脅し合い」<「3 殴り合い」<「4 殺し合い」

の順で動員資源(コストと労力と時間)は増加していきます。

また、
「3 殴り合い」
ないし
「4 殺し合い」
の場面では、一般論として、

被告<原告

という形性で、動員資源(コストと労力と時間)は増加します。

この点は、私が日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!において

このように、裁判システムは、ボクシングやプロレスの試合に例えると、原告が、ひとりぼっちで、延々とリングというか試合会場を苦労して設営し、ヘトヘトになって試合会場設営を完了させてから、レフリー(裁判官)と対戦相手(被告・相手方)をお招きし、戦いを始めなければならないし、さらに言うと、少しでも設営された試合会場ないしリングに不備があると、対戦相手(被告・相手方)もレフリー(裁判官)も、ケチや因縁や難癖をつけ、隙きあらば無効試合・ノーゲームにして、とっとと帰ろう、という態度で試合進行に非協力的な態度をとりつづける、というイメージのゲームイベントである、と言えます。
こう考えると、裁判制度は、原告に対して、腹の立つくらい面倒で、しびれるくらい過酷で、ムカつくくらい負担の重い偏頗的なシステムであり、「日本の民事紛争に関する法制度や裁判制度は、加害者・被告が感涙にむせぶほど優しく、被害者・原告には身も凍るくらい冷徹で過酷である」と総括できてしまうほどの現状が存在します。

(中略)
いずれにせよ、真剣かつ誠実に裁判を遂行しようとすると、「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」以外に、気の遠くなるような資源を動員して、クライアントサイドにおいて、「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」という作業を貫徹することが要求されます。

と述べているとおりです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01050_従業員が退職するに際して徴求すべき守秘義務誓約書(差し入れ念書型)サンプル

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(退職日)      年  月  日

株式会社             御中

守秘義務誓約書

私は、貴社を退職するに当たり、下記の各事項のすべてを厳格に遵守することを約束し、その証としてこの「守秘義務誓約書」(以下、「誓約書」といいます)を差し入れます。

  1. 私は、貴社に対して、「貴社に関する次の各情報(以下、「本件機密」といいます)は、私が作成したものや私の記憶に内在するものも含めて、全て貴社に固有のものであり、私は何らの使用しあるいは利用・譲渡等する権利を持たないこと」を厳に確認します。
    • 事業資料及び財務資料:事業計画書、事業提案書、営業計画書、営業企画書、財務諸表及び経理資料、人事等に関する情報(従業員の地位、職責、住所、電話番号等の個人情報を当然に含むがこれに限らない)
    • 価格情報:製品の原価情報、原価計算情報、販売価格・卸価格情報、リベート(値引き)に関する情報その他価格情報並びに価格決定に関する情報一切
    • コンピュータソフト及びデジタルデータ:各種コンピュータソフトウェア(カスタマイズあるいは開発されたものやこれらの途上のものも含む)及びこれらの運用によって作成ないし整理されたデータ
    • 顧客情報:現顧客・潜在顧客を問わず、顧客情報、顧客リスト及び顧客に関連する情報一切
    • 協力会社情報:貴社あるいは弁護士法人の取引先ないし提携先の、存在、呼称・連絡先あるいはこれらの会社との契約内容・取引内容、技術援助、外部委託関係及びこれらに関連する一切の情報
    • 製法等:事業モデルに関する情報、製品設計に関する情報、製品の原材料、製品製造手法、製品製造工程、製品コンセプト、製品企画、製法マニュアル・使用マニュアル類、その他製品ないし販売方法に関する全てのノウハウ及び情報一切
    • 実験結果:貴社在職中に行った実験、分析により得たデータや、他製品(試作品や部品を含む)開発過程で得たデータ
    • 以上の他、私が、貴社在職中に、知り得た貴社に関する情報一切
  2. 私は、「在職中及び雇用関係終了後、本件機密が機密としての価値を法律上のみならず事実上・経済上も完全に喪失するまで」あるいは「在職中及び雇用関係終了後20年間」のいずれか長い期間、貴社の書面による了解なく、第三者に対して開示、漏洩または直接・間接問わず、第三者の使用に供しないことをお約束します。
  3. 私は、貴社の書面による了解なく、本件機密ないしこれらを格納あるいは表章した媒体(書類、カセットテープ、ビデオテープ、フィルム、フロッピーディスク、CD、DVD、USBメモリ、ポータブルハードディスク等一切。)を貴社オフィスや事業所から移動せず、また、本件機密のデータを格納したクラウドからデータの全部または一部を移動し、複製しあるいは編集等しないことをお約束いたします。なお、当然のことながら、私は、本件機密を私用メールアカウントに添付送信する形にてもしくは私的クラウドに移動ないし複製を移動する形にて、当該メールアカウントのメールサーバ内や私的クラウド内、あるいは当該メールを受信した端末内の記憶装置に留め置くこと等も一切いたしません(以下、前記各媒体や私用メールアカウント添付送信の方法等にて本件機密が格納された場合における当該メールサーバや私的クラウドやメール受信端末の記憶装置を「本件機密格納媒体」といいます)。
  4. 私は、本件機密格納媒体のうち、貴社在職中に私が保有を命じられあるいは保有を容認されたものは、全て私が責任をもって保管し、私と貴社との雇用関係終了時にはこれらの全ての機密情報ないし媒体を貴社に対して返還ないし消去すること(本件機密格納媒体のうち、後任者に引継を要するものは、貴社の指定する引継方法を了した上で返還すること)をお約束いたします。
  5. 私は、貴社在職中において私が主体となりあるいは私が創作ないし発明等に関わった一切の知的財産権等については、職務発明ないし職務著作等として、貴社にのみ排他的に帰属することに異議なく同意します。なお、職務発明に関しては、貴社の職務発明に関する譲渡及び対価算定に関する規定を合理的なものとして受け入れ、これを事後争いません。また、私が、創作ないし発明等にかかわった著作について、私に著作者人格権が生じたとしても、これを一切行使しないことを厳にお約束申し上げます。
  6. 職務発明に関してあらかじめ貴社に譲渡することに合意する関係上、私は、本件機密に関して生じあるいは生じるべき一切の知的財産権は貴社にのみ排他的に帰属することを認め、これを事後一切争いません。
  7. この誓約書からまたは誓約書に関連して、私と貴社の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って同協会の選定にかかる弁護士資格ある仲裁人を双方合意選定にかかる仲裁人として、東京都内において、非公開仲裁手続により最終的に解決することに合意します。私は、かかる仲裁人によりなされた判断は最終的であり、私と貴社を拘束するものとすることを理解し、かかる判断にしたがい、争いません。私は、仲裁人の行った判断に従い、異議を述べないものとし、また、仲裁人が仲裁判断をなすに当たり、私あるいは貴社を審尋せず、また理由の付記を省略しても異議を述べないものとすることに合意します。なお、本仲裁合意に基づく当然の法的効果として、私は貴社に訴訟提起をしないことを約するとともに、仮に私が訴訟を提起したとしても本仲裁合意が防訴抗弁となり、訴訟が当然に却下されるべきことを異議なく確認します。

以上

以上の誓約の証として、本日、本書一通を貴社に差し入れます。

                          住所

                          氏名                                    ㊞
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01049_弁護士が「ゴールデザイン」を呈示しただけで、「このゴールなら、弁護士の力を借りずとも、相手を説得して、自力で到達できる」と浅はかにも考えてしまうクライアントへの“説教”メール_助言メールサンプル

===========================
XX様

(前略)

小職がXX様が抱えておられる課題を正しく捉え、
「この課題を改善・克服するためにあるべき規律の姿」

「創出」
した上、
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
する営みを経て、貴我間における目標としての約定(戦争を行う上でゴールとすべき、国境線の策定や領土の返還を含む和平条約ないし安全保障条約)を呈示して差し上げました。
そして、この「正解」が非常にロジカルで、法的合理性を含むことも理解いただきました。


このとき、
「なるほど! 正解はこれか。ゴールはこれだ。わかった!あとは、俺ができる!」
とXX様は思われました(この点が、愚かというか早とちりなのですが)。


XX様の脳内に立ち入ると、
「自分はチョメチョメ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
という自負がみなぎっていました。


ところが、現実に向き合うと、うまくいきそうな気配がしない(当たり前です。素人風情にかんたんにできればプロの弁護士など要りません)。


(※)
正解やゴールはわかったが、方策と道筋がわからない(世の中、こんな課題山程あります。北方領土やパレスチナ紛争など。
「俯瞰的かつ冷静かつ客観的に観察すればこのあたりであろう」
というゴールや落とし所はわかっていても、そこに至るために、100年、1000年単位の時間と労力と殺戮の応酬が必要になります)


「ロジカルには正しいことなのに、相手が理解し、説得され、納得してくれる状況が実感できない(これが一番むずかしい)」
「なぜなんだ? どうしてなんだ?」
あれこれ疑問がわいてきます

「手とり足取り教えてもらわなければならない?そんなバカな。俺はそんな間抜けではない。」

なんとなれば、
「自分はチョメチョメ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
はずなんだから


でも、 正解はわかったが、方策と道筋がわからない


ここで、(※)に戻り、 ループモードが始まる

私がみるところ、XX様は、こんな混乱類型の病理的思考に罹患されているのではないかと推察します。

この病理現象の根源的原因ですが、
「自分はチョメチョメ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
という前提が根底から間違えているのだと考えられます。

誤解を恐れずに言いますと、おそらく、XX様は、
・インテリではない
・何もわかっていない
・N年生きてきたといっても屁の突っ張りにもならない。単に、思考や知性の本質についてストレステストを受けずに来れただけ。喧嘩したことない人間が、「俺は喧嘩に負けたことがない。俺は無敵だ」と夜郎自大になり悦に入っているのと変わりない
・世間のことも、世事にも疎く、ビジネスや法律については、まるで無知
・自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識自体、偏見であり、狂っている
というのが実体ではないかと思われます。

だから、一度、
「自分はチョメチョメ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
という前提から脱却して、最初から、
・リテラシーと状況観察と実体認識、
・立場交換シミュレーション(観察基準点を変えたメタ認知〔俯瞰的認知〕)、
・学校で学んだことがないし、親から聞いたこともない(というか、教師も親も知らない)ゲームロジック、ゲームルール及びプレースタイル
をすべて一から学んでいただく必要があるかと思います。

前記のような前提認識をもつ中途半端なインテリが、
「エセ知性」
が原因で、混乱し、何をやってもうまくいかない、という現象ですが、小職も、弁護士稼業を営む中で、しばしば遭遇します。

ですので、
「また、この症状のクライアントがやってきたか」
という程度に、既視感のある、陳腐でおなじみの状況でしかありません。

ただ、XX様が特異なのは、思い込みが激しいというか、天動説的・唯我独尊的単一思考軸が強烈に過ぎ、経験の開放性が絶無で、啓蒙を拒絶する点です。

老害を通り越して、あるいみ、精神的な欠陥を含む、
「病害」
ともいえる状況かと推察されます。

「『ウォールストリートで働く成功したユダヤ人の金融マン』が、資本主義的競争システムと自由でオープンな金融システムの素晴らしさを、どんなに、わかりやすく、明確に説明しても、聞く耳を持たず、一切の理解を拒絶する、『(中略)』」
といった印象を受けます。

ちなみに、私としては、
  「(中略)」
という人物を、あまり評価できません。

なぜなら、私の理解(といっても、一応東大卒の理解ですので、それなりに普遍性がある見解だと勝手に思っています)では、
「知性とは、外向性、情緒の安定性、思考の柔軟性、経験の開放性ないし新規探索性、自己評価の下方柔軟性あるいは外罰傾向の欠如(=伸びしろそのもの)」
だからです。

同様の理由で、
「自分はチョメチョメ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」  
というXX様をあまり評価できません。

「知性とは、外向性、情緒の安定性、思考の柔軟性、経験の開放性ないし新規探索性、自己評価の下方柔軟性あるいは外罰傾向の欠如(=伸びしろそのもの)」
という意味での知性を感じない、というか、致命的に欠落している印象しか持たないからです。

以上につきましては、
「短時間で、劇的かつ効率的に、啓蒙や矯正を成し遂げる」
を目的を所与として、
「この目的との関係上、『思ったこと』や『本当のこと』はストレートに伝えることが、課題ないし事態の認識共有(ないし相手方の認識到達)に至る近道である」、
という前提で、お話しています。

もちろん、もう少し、奥歯の間に大量の物を挟み、オブラートに包んだ表現に徹する配慮を行ったり、ジェントルでエレガントな言い方もできますが、その際は、
「短時間で、効率的な、啓蒙や矯正」
を致命的なレベルで犠牲にする必要があります。

このようなトレードオフ関係に立ちますことをご理解いただいた上で、どちらかをお好みかを選んでいただければ、現在採用している
「短時間で、劇的かつ効率的に、啓蒙や矯正を成し遂げる」
スタイルを、より穏やかなものに変更することは可能です。

畑中鐵丸拝
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01048_弁護士の見立てや助言を受け容れないクライアントへの“説教”メール_助言メールサンプル

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XX様の現在の感覚・認識ですが、

1 自分はホニャララ大学チョメチョメ部卒のインテリだ
2 しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた
3 だから、世間のことを知っているし、世事に長けている
4 だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できるし、そうしてきてなんの問題もなかった
5 自分の観察や俯瞰は公正で公平だ
6 世の中、特定の課題について唯一無二の絶対的な解答があり、それにしたがって世間は動いていくはずだ(し、そのように動くべきだ)
7 見解や対立や意見の相違は、すぐに裁判になる。相手を怒らせてもすぐに裁判に持ち込まれる
8 裁判がはじまると、自分自身が呼び出され、傍聴人が押しかけ、「陪審員」が並ぶ法廷に出て、多大な時間とエネルギーが吸い取られる
9 膨大な訴訟記録を読んだり、証人尋問で吊るし上げられ、不愉快な思いをする
10 数週間で白黒はっきりつけられてしまうし、証言に失敗したりあせったら、「陪審員」次第で、相手のウソがまかり通ってしまう
11 敗訴したら、周りで石を投げられ、世間に顔向けできなくなり、地域で生きていけなくなる
12 相手を怒らせたら、そんな目に遭うので、怒らせたり、決定的な対立状況に陥ることは避けなければならない
13 だからこんなひどい裁判は避けるべきだし、リスクは一切負えないので、相手のいいなりになるべきだ

こんな脳内バイアスが巣食ってるようです。

そして、小職は、この状況を所与として、次回打ち合わせを予定しております。

ただ、これらはすべて放置すべき状況ではなく、啓蒙を要する喫緊の矯正課題だと認識しています。

ここまで酷い状況を放置しますと、課題や方法論を議論する以前の状況であり、ゴールの共有はおろか、状況認識の共有、情勢解釈・評価の共有すら困難な事態に陥り、膨大な時間とエネルギーの無駄を招きかねません。

他に、矯正課題があれば、事前に知っておきたいので、この際、
「N年以上も矯正されないまま、脳内に巣食ってきた「感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)」
なるものがあれば、次回打ち合わせまでにすべて小職にご教示ください。

「聞くは一時の恥、聞かぬ(知らぬ)は末代までの恥」
とも言います。

「60の手習い」
などと申しますが、何事も始めるのに遅い、ということはありませんし、老人になっても、脳内のバイアスを除去しておくことは必要です。

どんなに、XX様の
「感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)」
なるものが、どれほど愚劣で失笑に値するような誤ったものものであれ、矯正の労は厭いませんので、この際、すべて、吐き出していただければ、と思います。

なお、小職が、XX様を啓蒙ないし矯正する資格と能力があるか、という点について確信を持てませんが、小職も
「平均以上にアタマがいい方かな」
くらいには思っております(私の奥ゆかしい性格もあり、もちろん、かなり謙虚に申しております)ので、相対的にその任にあたる資格があると思います。

すなわち、小職としては、基本スペックにおいて、演繹能力や展開予測能力やロジック把握能力も、日本人の平均を上回っていますが、加えて、帰納的考察で自律的に知識と体系を吸収する力も持っています。

無論、日本人の平均以上、という程度において、相対的なものですが。

私が後者(帰納的考察で自律的に知識と体系を吸収する力)を獲得できた経緯については、
「天動説」的頭脳(唯我独尊的メンタリティ)
ではなく、
「地動説」的な頭脳
の働きがあるから、と思っています。

ポリシーと現実的課題が対立したらどうするか?

「天動説」的頭脳
をもつアホは、ポリシーにしたがって、現実的課題を克服しようとします。

これは、アホの中のアホです。

東大卒であれ、京大卒であれ、この種のアホが結構な割合います。

この種のアホに限って、
「自分はホニャララ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
などとほざいてくれます。

しかしながら、このような自己評価にもかかわらず、
「平時課題(ビジネスマナー)ではない、常識(という陳腐な偏見なコレクション)が通用しない有事課題(リーガルマター)」
に遭遇すると、天動説的な頭脳の歪みが災いして、 混乱の中、致命的な失敗を犯し続け、最悪の結果を招きます。

では、
「地動説的な、自律的な帰納型思考ができる、柔軟性と冗長性に満ちた知性」
の持ち主は、 ポリシーと現実的課題が対立したらどうするか?

「ポリシーを以て現実を変える」
などという愚劣極まりないことはしません。

ポリシーと現実的課題が対立したら、
「ポリシーを以て現実を変える」
のではなく
「現実にあわせて、ポリシーを変える」
のが賢い人間のやることです。

現実に適合するように、自分の中の思考軸や体系を変化させ、あるいは新たな思考軸や体系を創出するのです。

新たな状況に対しては、
「自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)によって、脳内で妄想として構築した仮説で一発勝負をする」
のではなく、
「試行錯誤を繰り返しつつ、最善解・現実解を得られるまで、柔軟に対応をする」
ことでしか対応できません。

この種のことがやってのけられるのは、
・ほどほどに地頭がよく(東大や京大に現役合格する程度の頭脳の基本スペックを指します)があり、
・想像力が傑出して、立場の交換シミュレーションが容易に出来
・思考軸や思考体系(試行錯誤のプラン)のモデルを豊富に有していて
・試行錯誤を厭わない程度に柔軟性がある
というタイプです。

もちろん、小職もまだまだです。

50を超えても、なお、勉強中・修行中です。

「50の手習い」真っ最中
です。

とはいえ、嘆くことではありませんし、小職も自らの非才を嘆いていません。

前記のようなスペックをもつ社会的天才(ないし政治的天才)は、ほんの一握りです。

ちなみに、凡才の私は
「一握り」
に入っておりません。

読書等を通じた出会いを含めて、この種の天才に出会った数としては、古今東西で1000人未満ですから。

ただ、
「この種の知性をもつ天才の存在を認め、かつ自己の足らざるを(悔しく不愉快ながら)認め、当該知性に対して謙虚に対処して、謦咳に接し、自分もこれに近づくよう、努力する」
という姿勢をもつことは、どんなバカでもできますし、小職もこのような
「努力する姿勢をもつ、謙虚なバカ」
に入っているものと自負しております。

小職が、
「知性とは、外向性、情緒の安定性、思考の柔軟性、経験の開放性ないし新規探索性、自己評価の下方柔軟性あるいは外罰傾向の欠如(=伸びしろそのもの)」
と定義する所以は、こういうことです。

「自分はホニャララ大卒のインテリだ」
「しかもN年以上もきちんと人生を生きてきた」
「だから、世間のことを知っているし、世事に長けている」
「だいたいのことは、自分の感覚や哲学や価値観や正義感や常識(という偏見のコレクション)で処理できる」
という前提認識は、XX様の知的成長にとって有害でしかありませんし、蒙を啓く障害となり、現下の状況ないし課題に
「知的」
に対応する営みを妨害します。

加えて、この啓蒙課題や矯正課題を放置したまま、
「言葉は通じるが、話はまったく通じない」
という協議を重ねたところで、小職の貴重な時間を奪い、タイムチャージという貴我間の取引基盤を通じて、XX様の財布を痛めつける結果になるだけで、利敵の最たる結果を招来します。

端的に申せば、
「口を閉ざし、耳を開け、心を広くし、素直に人の話を聞き、俯瞰的に物事をみて、たとえ心底腹が立ち、耳に逆らう事態や状況や方針であっても、虚心坦懐に捉えてください」
ということになります。

意のあるところを汲んでいただければ幸いです。

畑中鐵丸拝 
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01047_弁護士はウソをつくのが仕事?(教えて!鐵丸先生Vol.006)

弁護士は、クライアントの利益を徹底的に守らなければなりませんし、高度で厳格な守秘義務を負っていることから、クライアントにとって不利な事柄は黙っていても差し支えありません。

すなわち、職業倫理上、弁護士は、クライアントにとって有利なことを、詳細に、何度も何度も、証拠(と周辺の事情)をつけて、声高に主張しますし、クライアントにとって不利な事柄は黙る(あるいは、言い換えや抽象度の高い表現を使って、目立たなくする)べき、ということになります。

そうすると、裁判所には、
「クライアントにとって有利なこと」
だけがピックアップされ、これが増幅・誇張され、他方、
「クライアントにとって不利なこと」
はすっぽりと抜けた
「歯抜けのような話」
が提出されます。

その結果、裁判所に
「美しい誤解」
が生じます。

この
「美しい誤解」
は、クライアントにとって歓迎すべき状況ですので、弁護士としては、
「美しい誤解はそのまま」
にしておきます。

弁護士は、ウソをついているのでは、ありません。

弁護士として、真剣にかつ誠実に、かつ愚直に、職業倫理にしたがったら、結果として、
「美しい誤解」
が生じただけなのです。

弁護士が語る話は、
「職業倫理遵守」
によって、事実とズレたものとなってしまいますが、これは
「ウソ」
とはいわず、
「ストーリー」
といいます。

弁護士は、ストーリーは語りますが、ウソつきではない、のです。

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01046_ウソをつくことは犯罪か?(教えて!鐵丸先生Vol.005)

「ウソつきは、ドロボーのはじまり」
といいますが、ウソをつくことは罪なのでしょうか。

「ウソつき」行為一般
を処罰する法律はありません。

考えてみれば、当たり前の話です。

お世辞をいったり、年齢をごまかしたり、武勇伝を語ったり、ウソをついたことすべてを犯罪にしていたら、社会はギスギスしたものになりますし、癌の告知など、真実を伝えるとかえって残酷な結果をもたらすことが想定される場合にはウソをつくことが積極的に推奨されることもあります。

ただし、
「ウソをつく行為が犯罪になる場合」
というのも、あるにはあります。

偽計業務妨害罪、虚偽公文書作成罪、有価証券虚偽記入罪等です。

たとえば、裁判で証人が宣誓をしてウソをついたら偽証罪に問われます。

しかし、民事裁判が200万件/1年間あるなかで、偽証罪で立件される件数は、多くて23件/1年、少なくて4件/1年です。

この数字は、ウソをついても偽証罪でペナルティを受ける可能性はほとんどない、ということを意味します。

言い換えると、多少事実と違うことを言っても、日本では法制度として裁判所は許している、ということです。

正しい法律的理解を前提とすると、
「ウソをついても、何ら犯罪にはならない。だが、特定の身分において、あるいは特定の状況においてウソをつくと犯罪とされる場合もごく例外的にあるので、注意した方がいい」
というべきでしょう。  

「ウソをついたら、ドロボーと同じように刑務所に収監される」
これこそが、まさしくウソです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01045_契約書作成の基本(教えて!鐵丸先生Vol.004)

「口約束も契約のうち」
といい、口頭でも契約は成立します。

すべての契約に契約書が必要なわけではありません。

契約書を作らなくても契約は成立します。

コンビニでおにぎりを1つ買うのも契約ですから。

ただし、大きな取引をするときは、契約書があったほうがいい、ということです。

契約書は、
「契約が存在したことや、契約の具体的内容を示す証拠」
という意味をもちます。

契約書は、食い違い・思い違い・勘違い・認識違いが少なくなる、というメリットがあります。

売買の内容、受け渡しの方法、スペックがちがったときはどうするのか、アフターサービス、メンテナンス、いつどのように支払うのか等々、契約のかかえる大きさ・リスクによって、証拠化した方がいいと判断すれば契約書をつくればいいのです。

契約書作成に、決まり・ルールはありません。

何に、どのように書くのかは自由です。

弁護士ではなく自分で書いても、OK。

「甲」「乙」と書く必要もありません(「甲」「乙」は複写式カーボンをつかっていた時代のなごりです)。

包装紙・コースターの裏や紙ナプキンに書いても、理屈のうえでは、OK。

ただし、裁判になったら、契約の効力に影響を及ぼします。

紙ナプキン等では、証拠としての信用が落ちるのは、否めません。
・大きな金額が動く取引
・重要な意味をもつ内容
・自分にとって新しいことや不慣れなこと
このような場合には、専門家に契約書を作成・あるいはチェックしてもらいましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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