01932_ビジネス課題を分類し、状況評価・状況解釈について齟齬をなくす重要性

経営者のビジネス課題は多岐にわたります。

ビジネス課題にはそれぞれプロジェクトがあり、各プロジェクトにはそれぞれ打ち合わせやメール・メッセージ等やり取りがあります。

経営者は、ややもすれば、日々の打ち合わせやメール・メッセージ等に埋もれかねません。

だからこそ、経営者は、ビジネス課題をビジネス課題としてしっかり分類することが重要です。

筆者は、ビジネス課題を次のように分類します。

1 経営課題1:お金を増やす(お金を増やす仕組みを創る)

2 経営課題2:支出を減らす(収益に貢献しない支出箇所を発見・特定して極小化・解消する)

3 経営課題3:時間を節約する(スピード制約要因〔ボトルネック〕を発見・特定して極小化・解消する)

4 経営課題4:手間を節約する(無駄な手間をなくす)

5 会計管理課題1:正常な経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・数字化・フォーマル化

6 法務課題1・文書管理及び予防法務課題:「正常な(有事至る以前の、未然の)」経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化

7 法務課題2・紛争法務課題:すでに有事に移行した事案について、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技を用いて、事態対処を行う

8 外注管理課題:5、6、7のいずれかまたは全てを外注する場合における外注管理及び外注が効果的に機能するような事務的支援

5、6、7については、企業によっては、内製の課題とするのではなく、外注課題・外注管理課題とするのが、合理的でしょう。

6については、
「内製化する」
という選択肢をとる企業もありますが、上場企業ではない、あるいは上場を目指さないのであれば、特に強制の契機が働くわけでもないため、内製化にこだわらなくてもよいでしょう。

7については、(紛争法務経験がある、年収2000万クラスの)社内弁護士でもいない限り、外注一択であり、素人が、弁護士の真似事をすると、たいてい大やけどを負うことになる、と考えます。

「分類するだけで終わり」
ではありません。

「日々の事象をどの課題として認識するか」
は、課題を分類する以上に重要です。

例えば、
・従業員が、働き方や残業代等に不満を持ち、労基に駆け込む
・従業員から内容証明郵便の通知が来る
というような事象は、弁護士の感覚からすると、すでに
「大きな有事」
であり、一刻も早く、
「7 法務課題2・紛争法務課題:すでに有事に移行した事案について、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技を用いて、事態対処を行う」
と決断し、専門家介入すべき重大かつ重篤な病理インシデントです。

ところが、経営者によっては、
「6 法務課題1・文書管理及び予防法務課題:「正常な(有事至る以前の、未然の)」経営状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
と判断し、その結果、事態がこじれ、対処が遅れ、対処に失敗し、結果、大きな火傷を負う方がいらっしゃるのも現実です。

経営がうまくいっている企業の経営者は、専門家(弁護士)を上手につかって
「日々の事象をどの課題として認識するか」
状況評価、状況解釈について、弁護士との齟齬をなくすことに注力しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01931_弁護士との対話を通じて、状況評価・状況解釈について齟齬をなくす重要性

弁護士との議論や意見交換は、
「(弁護士に)言い負かされた」
「(弁護士を)論破した」
などという営みではありません。

いわば、
「対話」
とも呼べるものです。

ところで、人には、認識や解釈、評価、保有情報や展開予測などに、それぞれ顕著な個体差があります。

個体差があるゆえに、人の認識や解釈、評価、保有情報や展開予測などに隔たりがあるのは、当然のことです。

さて、弁護士の視点からいえば、経営者と弁護士において、それら隔たりを隔たりのままにしておくと、やがて大きな事故や事件に至ります。

・保有情報の隔たり
・情報認識・解釈・評価資源(知性、教養、経験、リテラシー等)の隔たり
・認識の隔たり
・評価の隔たり
・解釈の隔たり
・展開予測の隔たり
・ゴールデザインの隔たり
・課題認識の隔たり
・課題の重篤性評価の隔たり
・課題対処のための方法論の隔たり

これら隔たりは、
「弁護士との対話」
を通じて、極力少なくしておくことに越したことはない、といえましょう。

経営がうまくいっている企業の経営者は、
「談論風発、大いに好むべし」
と、
「“顧問”弁護士との対話」
を増やすことで、無駄な重複を避け、事故や事件を軽減し、ビジネスに注力しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01930_開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)における経営問題についての法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装

「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)」 となって、事業が軌道に乗ったとしましょう。

人によっては、支店(分院)を増やし、人員を増やす経営戦略をとる方もいます。

そんなのあたりまえと、思うかもしれませんが、
「支店(分院)経営の事業主体(オーナーシップ)はどちらにあるか」
「誰が支店(分院)経営を仕切るか」
という点は、とても重要です。

一例を申し上げますと、 優秀なアルバイトドクターを招聘し、分院経営を任せる方がいます。

分院の経営について、アルバイトドクターが優秀だからと安心し、放任していると、いつの間にか主従が逆転し、年月を経て、分院がアルバイトドクターのものになる(乗っ取り)というような事態に陥りかねません。

本来、経営というものは(本院であろうが分院であろうが医院経営についても同様で)、

ヒト:人的資源動員(労務マネジメントやシフト管理)に関する指導序列や優劣関係性
モノ:物的資源動員(設備や各種医薬品や医療用品の調達運用管理)に関する指導序列や優劣関係性
カネ:資金調達運用管理に関する指導序列や優劣関係性

という3つにおいて、
「主体的に仕切っているのは誰か」
ということで整理できます。

そして、
「主体的に仕切っているのは誰か」
については、コミュニケーションに現れる関係において、見て取れます。

「コミュニケーションに現れる関係」
というものにも様々なものがあり、いくつかの分野に分析的に整理されます。

すなわち、一見すると、
「本院経営者=明らかに上位序列」
と概観されますが、議論やコミュニケーションのテーマをつぶさにみていくと、

1 人生の先輩・後輩といった人間一般の指導序列や優劣関係性
2 経営者としての先輩・後輩といった経営経験や経営実務知見の指導序列や優劣関係性 
3 医院経営における指導序列や優劣関係性
(1)ヒト:人的資源動員(労務マネジメントやシフト管理)に関する指導序列や優劣関係性
(2)モノ:物的資源動員(設備や各種医薬品や医療用品の調達運用管理)に関する指導序列や優劣関係性
(3)カネ:資金調達運用管理に関する指導序列や優劣関係性
(4)チエその1(正常な医療活動を行う上での技術や知見):医療技術の向上改善に関する議論の指導序列や優劣関係性
(5)チエその2(医療過誤や医療事故対処を行う上での技術や知見):医療に失敗した場合の事態対処に関する議論の指導序列や優劣関係性

といった形で分類整理ができるのです。

たとえば、アルバイトドクターが本院経営者より年配であったり、姻戚関係や知古の関係であったりする場合、会話やメール・書簡などのやりとりにおいて、本院経営者とアルバイトドクターとの間に主従逆転の序列が形成されます。

要するに、本院経営者が、アルバイトドクターから医療について指導を仰いだり、人生の先輩として教訓を得たり、さらには、医療技術や事故対応について助言や指導を受ける立場にある場合、
「関係がフラットなものか」
「上下関係ないし指揮命令関係ないしボス・部下関係等の優劣を含む関係なのか」
という点において序列が形成されるのです。

この解釈を、このさきどのように展開予測するかは、人それぞれ違い、弁護士による助言もそれぞれカスタマイズされることになります。

経営に長けた個人開業医の傍には、必ずといっていいほど経営に長けた弁護士がいるのはこのような所以です。

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01929_従業員に社内調査をさせるとは_その2プロジェクトの基本

プロジェクトの基本は、
・誰を相手に、
・何を課題・障害事項として、
・どういうゴール(改善の姿)を目指して、
・資源を動員するか、
ということです。

会社側が、従業員に対して、
「社内調査」
というミッションを遂行させる場合であっても、プロジェクトとしての基本は変わりません。

「調査」
という ミッションにおいて、もっとも端的でスマートでロジカルでソフィスティケートされた遂行方法は、
「当人から直接聴取する」
というものです。

プロジェクトの発注者が誤った目的を有す、あるいは目的を明確にしていないと、プロジェクトの受託者(この場合、「社内調査」というミッションを遂行することになった従業員)は、より一層ひどいレベルで、目的を誤認し、迷走しかねません。

目的不明、筋書きやシナリオが欠如あるいはいい加減なプロジェクトは、時間と資源の無駄、という点において、発注側(この場合、経営者)において、厳に戒めるべきものと考えます。

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01928_社内不正調査で、従業員に関する調査を行う場合の留意点

社内調査を行う過程で、特定の従業員に関する調査が課題として浮上した場合、いきなり、探偵ごっこのような形で、多大な資源を投入して、身辺や周辺を洗い始める場合があります。

関係情報を収集し、「ひょっとしたらこういうことかも」「これが真相じゃないか」と、経験則を用いた推認を披瀝する「迷」探偵が多数登場し、あーでもない、こーでもない、と本人不在のところで議論がはじまる。

しかし、このような「探偵ごっこ」的調査は、たいてい、無駄で無益に終わります。

「調査」
という ミッションにおいて、もっとも端的でスマートでロジカルでソフィスティケートされた遂行方法は、
「当人から直接聴取する」
というものです。

調査課題が明確になった場合、普通に考えられる方法は、関係当人から直接聴取することです。

そして、そのために、必要なオーソライゼーションを取得することが、
「調査」
の早道です。

当人が聴取を拒否し、必要なオーソライゼーションを取得できない場合に、はじめて、関係情報を収集し、経験則を用いた推認の出番となります。

たとえば、税務調査では、(犯則調査のような特殊な場合を除き)通常、(内偵や密行性の高いバックグラウンド調査をするのではなく)普通に、アポをとって、対象となる会社あるいは個人を訪問し、概要を聴取し、資料を出してもらい、資料を確認し、わからなければ質問し、調査を遂げます。

犯則調査の場合であっても、周辺を調べ上げることはしますが、やはり最後は、ヒヤリングを実施し、特定の主観要素立証(仮装隠蔽の意図)の認識を確認して、調査を完遂します。

いずれの調査も、
「当人に対する聴取を遂行する」
というプロセスが予定されており、これが調査の中核となるように設計されています。

訴訟でも同様です。

痕跡や文書だけでは最終判断がなされることはなく、ヒヤリング、すなわち証人尋問を、判断・評価の最終的かつ最重要なイベントとして予定され、想定されて、手続き設計がなされています。

税務調査型(ヒヤリング先行)であろうが、犯則調査型・訴訟型(ヒヤリングを最終的・補完的プロセスとして位置づける)であろうが、
「『対象者へのヒヤリング』をしない、できない、オーソライズされていない、まったく予定されていない」
ということは、あり得ないのです。

本人を呼び出して、疑問と思った内容を糺す。

これが調査の基本です。

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01927_裁判沙汰になるような戦術における考え方

「戦術は戦略にしたがう」
などと言われますが、戦術課題や作戦の方向性は、そもそも、
1 状況をどう認知し、どう解釈・評価し、
2 どのようなゴールを設定し、
3 当該ゴールからバックキャスティングした際に、どういうタスクをデザインするか、
という思想に帰着します。

すなわち、戦術課題とは、作戦立案上の、思想・哲学・根源的デザイン(構想)に依拠し、論理的に決定・選択されるべきです。

1  状況をどう認知し、どう解釈・評価するか
(1)○○が奏功する
(2)そもそも○○など奏功しない

2 どのようなゴールを設定するか
(1)○○をする
(2)○○は現実的には不可能だから、現実解として、二次的目標として、「△△をする」

3 当該ゴールからバックキャスティングした際に、どういうタスクをデザインするか
(1)少しでも奏功させるために、意を尽くし、どこまでも執念深く、時間をかけて、巧緻に、入念に、調査をして、○○を実践する
(2)「1秒でも早く」スピーディに、二次目標である「△△」の具備と要件実証の「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」を 実施する。

ところで、弁護士が関わるような案件には、多大な資源(ヒト・カネ・時間)を費消することになります。

よって、現実解・最善解を求めるべく、スピーディーかつ合理的範囲における、マルチタスクでの執行を展開することを推奨することになり、それは、いずれも(2)を選択することを推奨することを意味します。

たとえば、裁判沙汰になるような案件の場合、現実解・最善解である(2)を選択するには、
「○○を実践する」
というメインシナリオを、早急に、序列劣位として(もちろん、できればできたで、それは望外の慶賀とすべきですが)、その前置手続きとして、
「○○を実践することが不可能である」
ことを構築しなければなりません。

そして、それには、時間をかけず、間をおかず、合理的な調査範囲において○○をトライして、疎明資料の基礎となるべき疎明事実の構築をする(=一定範囲での「○○不能」の調書徴求を行う)ことが、現実解・最善解といえるのです。

「時間をかけず」
ということは、執行対象について、
「すべてを対象とする」
あるいは、
「あたりをつける」
というような感受性ではなく、
「ここまで執行をやって空振りだったら、裁判所も、○○の疎明として十分と考えるであろう」
との感受性を基礎にする、ということです。

このような構想に基づき、タスクデザインや選択肢におけるジャッジを行っていくことが、
「戦理に適う」
と言えるのです。

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01926_弁護士に相談するような事案を対処するには

弁護士に相談するような事案の場合、対処選択肢として、次の3つがあげられます。

選択肢1 お金はかかるが専門家(弁護士)に委託し、専門家(弁護士)にゲーム(=案件)を任せる
選択肢2 お金をケチって自身でゲーム(=案件)を遂行し、専門家(弁護士)に助言を仰ぐ
選択肢3 お金も手間もケチり、アクションを取らずしばらく静観する

選択肢1は、カネがかかります 。

選択肢2だと、素人の愚劣な方法が災いして、悲惨な結果になるでしょうが、カネをケチることはできます。

さて、選択肢1を選ぼうとするも(=弁護士の理性的な整理による大まかな方向性と荒い見積もりを得てもなお)、選択できない相談者がいます。

ゲームの状況、ロジック、ルール、プレースタイルは、平時とはまったく違うからです。

ですから、パニクって、自分で何を考え、何を言い出して、何を相談しているのかすら見失うほど混乱する相談者がいるのも事実です。

特に相談者が経営者ではない場合(例えば、取締役であったとしても)、
「従業員特有の財産防衛本能」
が働き、混乱に拍車をかけることもあります。

その場合、必要なのは弁護士ではなく、寄り添う友人であったり、気持ちを落ち着かせる精神科医であったり、財産防衛本能を吹き飛ばすような大金なのでしょう。

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01925_揉めごとが起こったとき、経営者が最もしてはいけないこと

揉めごとが起こったとき、
「戦う」経営者もいれば、
「コスパ考えて泣き寝入り」
と決断する経営者もいます。

さて、問題なのは、決断を変える経営者です。

たとえば、経営者が
「コスパ考えて泣き寝入り」
と決断すれば、顧問弁護士としては、その前提で
「緊急性なし」
と判断し、何もしません。

ところが、時間がたってから、
「やはり、泣き寝入りはできない」
と、決断を変えるようなこととなれば、前提が変わってます。

顧問弁護士としては、
「戦うのは、結構ですが・・・」
と前置きしたうえで、次の選択肢をお伝えするしかありません。

1 (会社として、あるいは経営者として)自身で戦う
=ロジックやルールも不明で理にかなったプレースタイルもわからないまま、素人の無手勝流でやる
=戦ってボロ負けする、あるいは戦いにすらならずに一方的にやられる

2 プロをつけて戦う
=戦況不利ながら、戦いになる程度までは戦況回復できるかもしれない
=ただ、それでも、当初の致命的戦局不利のため、やはり、思い通りならず、一矢報いる、爪痕残す、ビビらせる、ひやっとさせる、程度の期待値

要するに、揉めごとが起こったとき、経営者として最もしてはいけないことは、
「泣き寝入り」から「戦う」に決断を変える
ということです。

そのなかでも、最も不利なことは、
「時間がたってから」
であることは、言うまでもありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01924_もめごとが起きたとき、相手とケンカをするには、「感情か、勘定か」の根源的二元対立構図からは逃れられないという現実_その2

戦争をするには(物理的有形力を行使した殴り合い、という意味ではなく、言い分をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化して、証拠をくっつけて、事実の真否や、主張の当否を争う、文明的な戦争、という意味です。戦争をおっぱじめる場合もそうですが、「売られたケンカを買う形」で戦争をする場合も含みます)
感情VS勘定
の根源的二元対立構図からは逃れられません。

弁護士(軍事と有事外交の専門家)としては、
「カネをけちりたい、でも、メンツを回復したい」
という気持ちはわからないではありませんが、
「戦争する覚悟も資金もないのに、相手に妙なちょっかいをかけるのは、やめたほうがいい」
という助言することとなります。

メンツを回復できるのは、泥沼化した長期の戦争を戦い抜く覚悟と軍資金を拠出できる人間にのみ与えられた特権です。

ただ、これはあくまで挑戦する権利を意味するだけであり、結果は蓋然性に左右されますので、勝負は最後までわかりません。

以上をふまえると、
「 泥沼化した長期の戦争を戦い抜く覚悟もないし、軍資金を拠出する覚悟もない人間」
は、メンツ云々言わず、縮こまって黙って、泣き寝入りするか際限なき譲歩を受け入れなさい、ということです。

戦いに負けるのは、
「兵糧のない人間」

「陣羽織の汚れを気にする人間」
です。

兵糧のない人間は、戦いに負けます。

というか、戦いを継続出来ず、すぐ負けます。

殴り合いと戦争は、違います。

殴り合いは、腕力、瞬発力で勝負が決まります。

戦争は、戦力で決まります。

そして、戦力は、腕力(瞬発力)のみならず、持続力(戦争を継続する力)、すなわち、経済力が加わった総合力です。

戦力=腕力+経済力(持続を可能とする資源保有力)なのです。

兵糧のない人間は、殴り合いは出来ても、戦争はできません。

だから、兵糧がない人間は、一瞬噛みつくことは出来ても、長期戦になれば、すぐ白旗を上げることになります。

なお、
「兵糧があっても、兵糧をケチる場合」
も負けます。

「ジャングルでゲリラと戦え。ただ、支給したブーツは、高級品だからくれぐれも汚すな」
と言われれば、まともな戦いが出来るわけはありません。

これと似たような指揮命令を下す手合もいます。

「戦争に予算を想定し、予算管理する」
という発想です。

管理云々以前に、戦争に予算を想定した瞬間、その戦争は負けます。

「陣羽織は汚れるわ、家宝の刀や槍は折れるわ、城は燃えるわ、町はなくなるわ、身内は死ぬわ、腕はなくなり、足がなくなる。それでも、やったるわい!」
という人間のうち、さらにその一部の、運と知恵と才能に恵まれた人間だけが、戦いに挑戦する機会と権利を持てる(戦いに勝てる、とは限りませんが、少なくとも、悔いのない戦いが最後まで出来る機会を与えられる)のです。

「お互い、すべてを注ぎ込んで、なりふり構えず、使える資源はすべてを投入して、相手を滅ぼすまでぶちのめす」
という営みに、予算などとケチ臭い考えを持ち込むのは、
「陣羽織を汚さないように戦う」
「ジャングルでゲリラと戦え。ただ、支給したブーツは、高級品だからくれぐれも汚すな」
「試合後のパーティーでの余力を残すことを考えつつ、ボクシングの試合に臨む」
という話と同様、ちょっと、理解できません。

お金を持っていても、チビチビケチりながら、という感じで、中途半端にお茶を濁しつつ相手の出方をみて、資源を段階的に投入して、という戦いのあり方は、兵力の逐次投入、という愚策の見本のような禁忌中の禁忌の戦い方です。

お金をケチりたい、という下手な考えを持つなら、最初から、休んでいた方がいい、譲歩を前提に対話を続けた方がいい、相手の言いなりをある程度受け入れた方がいい、ということです。

「『じゃあ、お金を持っていない人間や、お金をケチりたい人間は、黙ってろ』ということか?」
と言われそうですが、残念ながら、
「はい、正解」
「ご明察」
というほかありません。

まあ、戦いなどという、資源消耗の極致のような営みに関わるのはおよしになれば、という意味です。

1 相手の言いなりになって、泣き寝入りする

も一つの有力な選択肢(金をケチる、金を使わない)です。

そのほかにも、

2 対話を続け、相手の言い分を受け入れる

3 後でするケンカを最初にやっておく(関係構築の前に、不快な展開予測をした上で、剣呑な雰囲気で話し合い、リスクを潰しておく)

4 そもそも、ケンカをするような、やばい相手、アカん人間とは付き合わない
という選択肢もあります。

金持ちケンカせず、といいますが、金持ちは、

1’ やばい相手とは付き合わない

2’ やばい相手と付き合うときも、関係構築の前に、不快な展開予測をした上で、剣呑な雰囲気で話し合い、リスクを潰しておく(そういう話し合いをして、付き合いなければ、そのまま分かれて、去る者を終わない。というのは、お金があれば、いくらでも相手はみつかるから)

3’ ケンカになりそうな、剣呑な雰囲気の対話が始まっても、感情ではなく、勘定で対処し、カネで済ませる

から、そもそもケンカにならないのです。

また、ケンカになってからでも、
「本当の金持ち」
は、陣羽織の汚れを気にすることなく、

4’ ケンカが始まったら始まったで、カネの糸目をつけずに、徹底的に相手を潰すまでカネを投入し続ける

から、ケンカにも圧勝するのです。

残酷ですが、以上が、ケンカや戦争の真実です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01923_企業経営者が意識すべき「情報・管理専門家(法務、財務等)」の価値と意味と使い方

「(個人の生業としての)金儲け」
は、スタンドプレイでも、できます。

「企業活動、すなわち組織的なビジネス活動」
は、チームプレイでないと、できません。

企業活動をするのであれば、
「『情報共有・運用プラットフォーム』を前提とした有機的組織活動(=ほっといても自律的・自己増殖的に成長する営み)」
が必須です。

そして、この、
「有機的組織活動(=ほっといても自律的・自己増殖的に成長する営み)」の前提となる「情報共有・運用プラットフォーム」
には、
・ミエル化
・カタチ化
・言語化(定性化)/数字化(定量化)
・文書化/データ化
・フォーマル化
・明確化
・明白化
・単純化
・標準化
・平準化
といった営みが観念されます。

結局、
「(個人の生業としての)金儲け」
を脱皮して、
「企業活動、すなわち組織的なビジネス活動」
を展開できるかどうかは、企業が、
「このような営みを遂行できるスキルと、これらを行う専門家(情報・管理専門家)」
の価値と意味と使い方、その存在や概念が理解できるかどうかにかかっています。

さて、成長する企業とそうでない企業の違いは何か、と問われれば、
・「(個人の生業としての)金儲け」の域を出ない中小零細のオーナー系企業は、情報・管理専門家を、野球のスコア係(女子マネージャー)くらいにしか考えていません(著者の四半世紀の経験上、そういう方が多く見受けられます)
・他方、成長する企業は、情報・管理専門家を、スタープレーヤーとして扱います
といえるでしょう。

情報・管理専門家をスタープレーヤーとして扱う企業は、自律的・自己増殖的に成長します。

だからこそ、大企業になるのです。

アメリカ合衆国・カリフォルニア州サンバーナーディノである兄弟が1940年に始めたハンバーガーショップがありました。

このハンバーガーショップが、
「ハンバーガーを美味しく焼ける料理人」
をスタープレーヤーとし、
「情報共有・運用プラットフォーム」
やそのプラットフォームを構築したり運用したりする地味な人間を粗略に扱ったとしたら、どうなっていたでしょうか?

おそらく、そのハンバーガーショップは、いまだに、サンバーナーディノのローカルショップを出ることなく、朽ち果てていたでしょう。

ところが、このハンバーガーショップは、
「有機的組織活動(=ほっといても自律的・自己増殖的に成長する営み)」の前提となる「情報共有・運用プラットフォーム」
すなわち、
・ミエル化
・カタチ化
・言語化(定性化)/数字化(定量化)
・文書化/データ化
・フォーマル化
・明確化
・明白化
・単純化
・標準化
・平準化
を徹底的に重視しました。

その結果、マクドナルド兄弟が始めたハンバーガーショップは、世界的な企業に成長・発展しました。

もう一つの例としては、軍事組織で、インテリジェンス部門(諜報というより、もっと高度な情報の解析を行う部門)や参謀部門を、
「殺し合いに参加しない、単なる穀潰し」
として粗略に扱うか、
「戦争遂行にとって必須の、価値ある組織」
として重用するか、を考えてみれば、情報・管理専門家がいかに重要かが理解できるでしょう。

要するに、
情報や管理に関する専門家の存在や概念を認知できかどうか、
同専門家の価値と意味と使い方を理解できるかどうか、
同専門家をその価値と意味にふさわしい起用ができるかどうか、
が、
「中小零細企業にとどまるか、世界的企業に勇躍するか」
の分岐点になる、という言い方ができそうです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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