01922_取引DDに基づいた取引先との関係を再構築する際の弁護士の構築する課題

DDとは、M&Aを行うにあたってのプロセスの1つであり、契約前に、買収する企業が対象企業について徹底的に調査を行うことをいいますが、単に、
「適当かつ相当な調査」
という言葉としてつかわれることもあります。

さて、取引先との関係についてのDDをもとに、取引先との関係を再構築する際の、その課題を列挙します。

1 取引DDに基づき、契約解除、契約清算、再契約、契約更改、契約文書化等を通じて、契約を可視化するとともに経済合理的・法律合理的なものに変換していく

2 具体的には、解除、不更新で期間終了・再契約提案、契約解除等の意思表示を行う

3 関係再構築に向けた意思表示の実施 (あるいはその前提としての環境整備・構築におけるアクション) による影響
(1)相手方との認識や見解の隔たりが契機となって、取引の消滅、損害賠償の請求、訴訟提起による、売上減、損失計上(状況を奇貨として弁済拒否や訴訟費用等)
※(内部外部問わず)関係者も積極的に加担するが証拠は得られない可能性あり
(2)上記による経営責任の追及
(3)相手先からの懐柔とプロジェクト中断
※影響2と同時に搦手から責められる
(4)敵対勢力からの想定困難な嫌がらせ(反社会的暴力や、関係者・担当者への個人攻撃)とそれに対する社長の断固たる防衛意思と防衛行動が期待できない

以上を不退転の決意で乗り越える意思を経営者(プロジェクトオーナー)が持つ、という前提の下、DD実施の稼働体制・責任体制・予算体制が合理的に構築できるか

経営者(プロジェクトオーナー)が楽観的であると、取引先との関係再構築自体が完了するどころか、暗礁に乗り上げかねません。

結局のところ、その可否は、以下の4点に集約されるといっても過言ではありません。

・社長(プロジェクトオーナー)は、DDの重大性を新指揮しているか?
・社長(プロジェクトオーナー)は、取引先との関係再構築を切望しているのか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、覚悟あるのか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、腰折れしないか?

弁護士と経営者(プロジェクトオーナー)の視点が合致してはじめて、ようやく、スタートに立てる、というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01921_デューデリジェンス(DD)をする際の弁護士の構築する課題_内部DD編

DDとは、M&Aを行うにあたってのプロセスの1つであり、契約前に、買収する企業が対象企業について徹底的に調査を行うことをいいますが、単に、
「適当かつ相当な調査」
という言葉としてつかわれることもあります。

さて、社内で何か問題が起こったとき、相談を受けた弁護士は、内部DDにあたり、その課題を列挙します。

1 DDをやって、現状を明らかにすること自体に、大きな障害が想定される=一大事件である

2 関係者が、DD実施に対して拒絶あるいはサボタージュで対抗してきた場合のカウンターアクションの想定(懲戒処分や配置転換)と権限移譲と責任負担

3 DD実施(あるいはその前提としての環境整備・構築におけるアクション)による影響
(1)労働紛争
(2)(担当者が引き継ぎを拒否した状態で不在となったことを契機とし、これを口実とした)取引の消滅、損害賠償の請求による、売上減、損失計上(状況を奇貨として弁済拒否等)
※証拠が得られない可能性あり
(3)上記による経営責任の追及
(4)プロジェクト中断
※影響3と同時に搦手から責められる
(5)敵対勢力からの想定困難な嫌がらせ(反社会的暴力や、関係者・担当者への個人攻撃)とそれに対する経営者(プロジェクトオーナー)の断固たる防衛意思と防衛行動が期待できない

以上を不退転の決意で乗り越える意思を経営者(プロジェクトオーナー)が持つ、という前提の下、内部DD実施の稼働体制・責任体制・予算体制が合理的に構築できるか

経営者(プロジェクトオーナー)によっては、弁護士の想定する1~3の課題を、 次のように受け止める方も少なくありません。

1 内部DDなんて、関係者から聞けばいいだけ。簡単に遂行できる

2 関係者はDD実施には協力してくれるし、サボタージュもないし、カウンターアクションなどそんな大事(おおごと)にするまでもない

このように、経営者(プロジェクトオーナー)が楽観的であると、そのDD自体が完了するどころか、暗礁に乗り上げ、不十分な結果に終わりかねません。

結局のところ、内部DDの可否は、以下の3点に集約されるといっても過言ではありません。

・社長(プロジェクトオーナー)は、DDの重大性の認識をしているか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、覚悟あるのか? 
・社長(プロジェクトオーナー)は、腰折れしないか?

弁護士と経営者(プロジェクトオーナー)の視点が合致してはじめて、ようやく、内部DDができる、というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01920_従業員を採用するとき、経営者として検証する視点

従業員を採用するとき、経営者として検証する視点は、
「この人の価値は何か」
の一言につきます。

1 金を増やすのか?
2 支出を減らすのか?
3 時間を節約する方法を考え、構築するのか?
4 手間を節約する方法を考え、構築するのか?
5 上記のいずれでもない

Q1 1~4の場合、どのようなメカニズムにおいて、どのような役割を果たすのか?

Q2 その役割は、高度で、ユニークで、個性的で、高度に創造性があり、余人をもって代替できないものなのか?

Q3 「高度で、ユニークで、個性的で、高度に創造性があり、余人をもって代替できない」役割でなければ、「高度でもなく、特異でもなく、没個性的で、創造性が皆無で、簡単に覚えることができ、覚えさえすれば誰でもできる」役割、ということになるのではないか?
それは、要するに、コモデイテイテイ的なルーティンであり、アルバイトでも派遣でも対処できる、という意味を示し、正社員を雇う必要がないのではないか?

Q4 5の場合、それは収益に全く貢献しない、道楽か、ブルシットジョブであって、仕事そのものが不要なのであり、社内から放逐すべき性質のものではないのか?

Q5 採用しようとする従業員は、「高度で、ユニークで、個性的で、高度に創造性があり、余人をもって代替できない」のか?

Q6 本当に、その従業員が必要なのか?
必要としても、正社員である必要はあるのか?アルバイトや派遣や外部委託ではダメなのか?

Q7 その仕事にその給料を払って、ペイするのか?

という視点で、検証する、ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01919_ビジネス契約についての評価を弁護士に依頼するとは

ビジネスにおける契約書は、すでに経済的意図として構築された
「事業モデルや取引モデル」
を、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化したもの(これを通じて将来の紛争予防や意思合致の齟齬をなくす)、という側面もあります。

よって、この点においては、
「事業モデルや取引モデル」
の実体・機序作用の詳細・背景等といった情報を、評価する弁護士と共有することが必要となります(でないと、疎漏が生じ得ます)。

加えて、そもそも、 経済的意図として構築された
「事業モデルや取引モデル」
そのものが不合理なものやリスキーなものの場合もありますので、
「事業モデルや取引モデル」
の合理性検証というプロセスを弁護士に求めるケースが生じ得ます。

以上を総括しますと、段取りとしては、

1 経済的意図として構築された「事業モデルや取引モデル」の把握
2 「事業モデルや取引モデル」のストレステスト、所要のチューンナップ
3 言葉の壁という対処課題の克服
4 意味の壁という対処課題の克服
5 演繹的推論の壁という対処課題の克服
6 帰納的把握の壁という対処課題の克服
7 最終的評価(「企図する事業モデルや取引モデル」と、「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化したものとして提案された契約書ドラフト」の齟齬や整合性)

という1~6の各タスクを経由して、初めて、弁護士は、ビジネスにおける契約書(ドラフト)の評価である7が可能となります。

著者の経験上、1~6まで自身(あるいは自社)において整えてから、7の評価を弁護士に依頼したい、という経営者がほとんどです(1~7までを最初から弁護士に依頼する経営者は、費用よりも時間に価値をおくタイプです)。

そして、現実は、契約言語という特殊言語の壁に阻まれ、3の段階で呻吟する経営者が少なくありません。

ところが、結局のところ、呻吟した時間があだとなって、3以降を弁護士に依頼するときには、ラッシュタスクとなってしまう方が少なくありません。

もちろん、ラッシュであっても、弁護士に依頼すれば、7に至るプロセスにまでたどり着くことは可能でしょう。

そこで、問題となるのは、納期と予算です(納期と予算とは、相関性があり、納期に冗長性がないラッシュタスクは、相応に費用がかかるものです)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01918_もめごとが起きたとき、相手とケンカをするには、「感情か、勘定か」の根源的二元対立構図からは逃れられないという現実_その1

もめごとが起きたとき、相手とケンカをするために、弁護士に相談するとしましょう。

相談を受けた弁護士(軍事と有事外交の専門家)としては、
「では、ケンカをしましょう」
とは言わず、まず、その目的を当事者(以後、相談者)に聞くことになります。

大抵の相談者は、
「目的といわれても・・・」
と、目的を明確に説明できないのが現実です。

そこで、弁護士は、このような仮説を披瀝することとなります。

目的仮説1
とにかく腹が立って疳の虫が収まらないので、一発、カマしておきたい。特に、目的があっての話ではなく、脊髄反射的に、対抗しておく(強いて目的をこじつければ、自分の感情の平静を回復し、カタルシスを得るため)

目的仮説2
何か深淵にして遠大な目的があり、その手段として、相手方への事実確認を行う。ただ、その目的は、誰にもわからない。

目的仮説1を前提に話を進めますと、相談者の本音としては、
「金はケチりたい、でも、感情の不安定は解消したい」
という愚劣な折衷案を希求したものでしょうが、これは最悪の選択であることは否定できません。

現実的な展開予測をしてみますと、

(1)どれほど覚悟しても、当初から明確な軍事目的をもって目的から逆算して戦略設計・作戦展開した場合に比べて、圧倒的に勝率は下がる。
要するに、
「金はかかるわ、勝率は下がるわ、で、最終的に、カネを失い、メンツまでも失うこと」
も想定しなければならないような不利な戦いとなる。
また、泥沼に陥ると、さらに資源消耗が要求される。

(2)戦う覚悟も、戦理に基づく戦略も作戦もなく、単なる、メンツの回復のため、展開予測もあいまいなまま、虎の尾を踏んづけたら、トラが怒って本気を出して、想定外(といっても、単に愚かにも想定をしなかっただけ)に威嚇される可能性がある。
だからといって、(1)のように
「 当初から明確な軍事目的をもって目的から逆算して戦略設計・作戦展開した場合に比べて、圧倒的に勝率は下がる。要するに、『金はかかるわ、勝率は下がるわ、で、最終的に、事業を失い、カネを失い、メンツまでも失うこと』も想定しなければならないような不利な戦い 」
を遂行する意思も覚悟も資源消耗するつもりもない。
結果、下手にトラの尾を踏んで、睨まれて、また、土下座して、誤って、おしまい。結局、メンツを回復するつもりが、さらなるメンツを怪我して、おしまい。

これを聞いたとたん、席を立つ相談者も少なくありません。

ジレンマに苛まれることになるからでしょう。

相談者のジレンマは、ケンカをしたいという本音が、勘定(エコノミクス)ではなく感情(センチメント)であり、思う結果に結びつかないことが直感的にわかってしまうことに起因する、と分析できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01917_相手が合意ないし確認事項に関して文書を交わそうといってきたときにすべきこと

相手が、合意ないし確認事項に関して文書を交わそうと言ってきたとき、まず、すべきことは、
「相手が言わんとすることは何であるか」
を吟味することです。

それには、その文書を交わすことについて、当方・相手、それぞれのメリット・デメリットを分析します。

そして、当方・相手方、それぞれの利益・損失の金額、将来に生じるであろう利益・損失の金額を算出してみることです。

1 文書を作成することにより、当方は、どんなメリットが生じ、また、どんなデメリットが生じるか?
2 文書を作成することにより、相手方は、どんなメリットが生じ、また、どんなデメリットが生じるか?
3 文書を作成しても、双方ともに、何のメリットもデメリットも生じず、中立であるのか?

1’ もし、当方にメリットがあるなら、作成に協力する(ハンコを押す)のもいいでしょう。
2’ もし、当方にデメリットが生じるなら、死んでもハンコを押さない、が正解です。
3’ もし、中立なら、まずは、作成拒否で、逆に、「ハンコを押したら、いくらくれる?」という問いかけをするのが正しいです。ハンコを押しても、相手が1円もくれないなら、あっかんべーで、作成は一切拒否すべきでしょう。

ここは、あえて、淡々と、
「文書を交わさない」
と返してみたら、相手はどのように反応するでしょうか?

それでも、なお、相手が、
「どうしても文書がほしい、ハンコがほしい」
というのであれば、それは、何を意味すると思いますか?

それは、現時点では、
「『ハンコをついてあげる』当方が優位である」
ということが判明した、ということなのです。

交渉をすすめるには、このように、彼我について分析することが肝要です。

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01916_主張立証における留意点

1 事実に関するファクトレポート

留意点1 5W2H形式で書き記す
留意点2 修飾語や副詞などの形容表現は一切厳禁(*)

(*)
「たくさん」「いっぱい」「非常に」「一生懸命」「がんばった」等、形容詞等を使うと、簡単でラクですが、裁判所では、事実を語っていない、ウソ、虚偽と同等に扱われます。
業務日報のように、客観的で端的で定量的な表現でレポートする必要があります。

2 上記を基礎づける痕跡

情報やデータを発掘・収集・想起し、これを時系列で整理

1、2は、裁判所において受容される程度の水準です。

これら2つについて、あますことなく準備できるかどうかが勝敗の分かれ目、といっても過言ではありません。

訴訟や仲裁で勝つ(思うような結果を得る)ようなタイプは、このレポートや証拠の準備に、相応の資源(時間・カネ・人員)を投入します。

わかりやすい言葉で言い換えると、
「負けたくなければ、死ぬ気で準備すること」
といえるでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01915_もめごとが起きたときの当事者の内面状況その2

もめごとが起こったとき、一番大きな問題となるのは
「当事者に強固なバイアスが働く」
ということです。

当事者の内面としては、
「◯◯の専門家」
に頼めば、何とかなるんじゃないか(と思いたい)、と考えがちです。

これが
「強固なバイアス」
というものです。

他方で、相談を受けた弁護士は、
「任せろ」
「何とかしてやる」
「正解を知っている」
「こうすれば大丈夫」
など無責任なことは、決して言いませんし、倫理上、言えません。

このようなことから、当事者の反発や心理的抵抗もあって、当事者と弁護士のチームエンゲージがなかなか進まないことが少なくありません。

弁護士として、経験論でいいますと、
「賢くて、成熟していて、誠実で、内罰的傾向があり(=外罰性が皆無で=人のせいにしない)、謙虚であって、(カネ・時間・人という)資源を動員する気概があるクライアント・当事者」
とチームエンゲージができるのであれば、当事者のいう
「思い通りの解決」
にいたらないまでも、
「大事を小事に、小事を無事に近いものにできる」
ことは可能です。

とはいえ、
「大事を小事に、小事を無事に近いものにできる」
ことに、 (それがいかに、大量の資源を動員させるほど難易度が高いことであるかを)理解し、 納得ができる当事者は、ほんのひとにぎりです。

なにしろ、
「(専門家に頼みさえすれば)思い通りの解決ができる」
というのも、当事者の内面にある、まったく都合のよい、身勝手なまでの
「強固なバイアス」
なのですから。

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01914_法律相談に出向く前にプロジェクトオーナーとなる相談者が理解しておくべきこと

法律相談に来られると、
「大事と認識していますか?」
と、問われると、
「当然です」
「大ごとだと思っているから、ここに相談に来たのです」
と、大抵の方は答えます。

ところで、多くの相談者は、左脳では、

・大事である=簡単にはいかない=専門家の動員も含めた相応の時間とコストとエネルギーがかかる

・正解や効果的な対処法がない=ありとあらゆる試行錯誤をやってみるほかなく、「専門家」に頼んだら、一瞬で解決するような安直な方法がない

ということは、理解しています。

他方で、右脳では、

・大事ではない(と思いたい)=簡単なこと=自分で何とかできるし、それほど、時間もコストもエネルギーもかからない

・探せば、どこかに、正解や安直な方法や、一瞬で都合よく解決できる専門家がいるはずと思いたい

というバイアスが働きます。

プロジェクトオーナーとなる相談者は、
「バイアスが働いている」
ことを踏まえたうえで、法律相談に出向くことが、解決への第一歩となります。

有事において、作戦行動に必要なのは、ファンタジーではなく、リアリティです。

プロジェクトオーナーの脳内がファンタジーであれば、作戦はまともに構築できませんし、機能もしないのです。

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01913_もめごとが起きたときの当事者の内面状況

かなりパニックになり、冷静な判断ができない状況に陥ります。

また、
「急がば近道」
の思考回路となっており、
「『急がば近道』が正常である」
という状況になります。

そして、
「特効薬」
「速攻で解決する方法」
を模索するあまり、冷静な状況認知・状況解釈・状況評価・課題整理・秩序だった選択肢抽出・合理的試行錯誤、というこの種の正解も定石もない事案対処において取るべきステップが、頭に入ってこない状況となります。

引用開始==================>
まず、持つべきは、未知の課題や未達成の成功に対する「謙虚な姿勢」です。
正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題です。
「こうやれっばいい」
「こうすべきだ」
「正解はこれだ」
「絶対このやり方がいい」
とこの世の誰も断言できることができない課題です。
なぜなら
「正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」
だからです。
「 正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」
について、
「正解を知っている」
「定石を知っている」
と言い出す人間は、壊滅的なバカか、邪悪な詐欺師です。
未知の課題や未達成の成功に対する
「謙虚な姿勢」
というのは、正解を探す努力や、
「正解や定石を知っている」
と称する人間を探す努力を、勇気をもって放棄することも含みます。
そうしないと、この種のバカに振り回されたり、詐欺師に騙されたりして、多くのカネや時間やエネルギーを喪失することになります。
次に正しいチームビルディングです。
プロジェクト・オーナー(動員資源を拠出し、最終的に結果の成否を負担する人間である、決裁者)、
企画設計者、
プロジェクト・マネージャー(企画遂行責任者)、
企画遂行者、
バイアス補正やゲーム・チェンジのための外部知的資源
といった、明確な役割をもち、スキルと責任を有する者により組成されたチームを作り上げることです。
そして、これらチームが、前記の
「 正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」の
「謙虚な姿勢」
をもって、科学的・合理的プロセスを踏みながら、取り組むことです。
すなわち、
状況や環境や相場観を冷静かつ客観的に認識・評価し、
現実的なゴールを設定し、
ゴール(TO BE)とスタート(現状、AS IS)のギャップ(差分)を埋めるために必要な課題を抽出し、
課題を乗り越えるために必要な対策・方法論・対処行動上の選択肢のすべてを抽出し、
これにプロコン評価(長短所分析)を加え、
プロジェクトを遂行していく、という合理的な取り組み方です。
当然ながら、一発でゴールが達成されることは稀です。何度も試行錯誤をすることになります。
その際、効率的で検証可能な試行錯誤をすべきです。
すなわち、
抽出された「課題を乗り越えるために必要な対策・方法論・対処行動上の選択肢」を試行していく場合の先後を整序し、
試行の状況を記録し、
失敗した場合に正しく振り返りと柔軟なゲーム・チェンジをしていく、
という合理的試行錯誤です。
<==================引用終了

ちなみに、
「正解も定石もない事案対処」
において、もっともやってはいけないことは、
「正解」
を探したり、
「正解を知っていると称する(言葉のみならず、態度で示す者を含む)」
人間を探すような、愚考をやめ、目を覚まして、合理的な試行錯誤を構築し、実施することです

引用開始==================>
訴訟や紛争事案対処というプロジェクトの特徴は、
・正解が存在しない
・独裁的かつ絶対的権力を握る裁判官がすべてを決定しその感受性が左右する
・しかも当該裁判官の感受性自体は不透明でボラティリティーが高く、制御不可能
というものです。
「正解が存在しないプロジェクト」
で、もし、
「私は正解を知っている」
「私は正解を知っている専門家を紹介できる」
「私のやり方でやれば、絶対うまくいく」
ということを言う人間がいるとすれば、
それは、
・状況をわかっていない、経験未熟なバカか、
・うまく行かないことをわかっていながら「オレにカネを払えばうまく解決できる」などというウソを眉一つ動かすことなく平然とつくことのできる邪悪な詐欺師、
のいずれかです。
そもそも
「絶対的正解が存在しないプロジェクト」
と定義された事件や事案については、
「正解」
を探求したり、
「正解を知っている人間」
を探求したりするという営み自体、すべてムダであり無意味です。
だって、
「絶対的正解が存在しないプロジェクト」
と定義された以上、
「正解」
とか
「正解を知っている人間」
とかは、
「素数の約数」
と同様、世界中駆けずり回ったって絶対見つかりっこありませんから(定義上自明です)。
とはいえ、こういう
「正解」がない事件や事案
であっても、
「現実解」や「最善解」
なら想定・設定可能なはずです。
「正解」
がない事件や事案 に立ち向かう際にやるべきことは、正解を探すことでも、正解を知っている人間を探すことではなく、まず、
・とっとと、正解を探すことや、正解を知っている人間を探すことを諦めること
と、
・現実解や最善解(ひょっとしたら、クライアント・プロジェクトオーナーにとって腹が立つような内容かもしれませんが)を想定・設定すること
です。
次に、この現実的ゴールともいうべき、現実解や最善解を目指すための具体的なチーム・アップをすること、すなわち、
・プロセスを設計・構築・実施するための協働体制を描けるか
・それと、感受性や思考や行動が予測困難なカウンターパート(相手方)である敵と裁判所という想定外要因が不可避的に介在するため、ゲームチェンジ(試行錯誤)も含めて、柔軟な資源動員の合意を形成できるか
という点において、親和性・同調性を内包した継続的な関係構築を行い、(おそらく相当長期にわたることになる)事件や事案を協働できるチーム・ビルディングを行うべきです。
<==================引用終了

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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