01975_クライアントと弁護士の関係

弁護士と、クライアントとの関係は、民主的な文民統制における、ミリタリー(軍人)と、シヴィリアン(政治家)の関係と同じです。

・ミリタリー(軍人。弁護士の暗喩)は、奉仕すべきシヴィリアン(政治家。クライアントの暗喩)に対して、判断の前提たる選択肢を抽出整理し、上程します。

・その際、各選択肢には、客観性を貫いた、怜悧なプロコン情報(長所短所情報)も付加します。

・最後に、選択するのは、シヴィリアン(政治家、クライアント)です。

・どんなに馬鹿げた、どんなに悲惨な結果が予知される、どんなに経済合理性なき選択であっても、ミリタリー(軍人、弁護士)は、選択には介入しません。

・なぜなら、結果を負担し、責任を負うのは、シヴィリアン(政治家、クライアント)だからです。

・選択ができるのは、失敗した場合に、誰にも八つ当たりできず、ただただ、その選択帰結を負担する、シヴィリアン(政治家、クライアント)だけだからです。

・ミリタリー(軍人、弁護士)は、シヴィリアン(政治家、クライアント)が決断した選択肢は、どんなに愚劣で不合理で不経済なものであっても、稼働環境(兵糧や資源)が続く限り、当該選択肢が、正解になるよう、努力をします。

・ただ、努力は、あくまで、ミリタリー(軍人、弁護士)が自己制御課題として、自らの営為でなしうる範囲に限定されます。

・他方で、作戦行動を行う上では、外部環境や、他者動向(相手方や裁判所)に依存する割合が大きく、神ならざるミリタリー(軍人、弁護士)では、他者の制御は、不可能です。

・ミリタリー(軍人、弁護士)は、稼働環境や外部環境の制約下で、倫理にしたがい、誠実に行動する限り、結果については一切無答責の立場です。

たとえば、09174のような労働事件の場合、弁護士が、クライアントに対し、
「経験則上の期待値をふまえた経済的合理性に基づく判断」
を助言はできても、クライアントから了承をもらわないことには、相手方に対し、勝手に、条件提示等は一切できません(クライアントとの関係では越権行為になりますし、相手方代理人との関係でも、不誠実な交渉したことで責任が発生しかねません)。

選択するのは、クライアントです。

なぜなら、結果を負担し、責任を負うのは、クライアントだからです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01974_労働事件における交渉条件提示を会社側が躊躇あるいは放置していることのリスク

労働事件において、交渉のテーブルに双方がついた状況で、
「交渉を進めるための(会社側からの)妥協的条件提示がなかなかできない」
ことに相手方がしびれを切らした場合、訴訟(ないし労働審判)に移行、という最後通告を受けかねません。

弁護士としては、クライアントである会社側から、方針について
「了承」
をもらわないことには、相手方に対し、勝手に条件提示等は一切できません(クライアントとの関係では越権行為になりますし、相手方代理人との関係でも、不誠実な交渉したことで責任が発生しかねません)。

無論、会社として、
・「法廷闘争も辞さない」
かつ
・「そのための弁護士費用追加分や内部人員の動員を含めた費用増加も辞さない」
加えて
・「上記のような時間とコストとエネルギーを費消したにもかかわらず、示談段階より不利な高額支払いを命じられるリスク(というか高度の蓋然性)も覚悟の上である」
という理解認識である、ということであれば、それはそれで1つの判断です。

可能性の問題はさておき、弁護士としては、クライアントの判断を尊重し、(無論、費用はかかりますが)出来る限りの支援をします。

ただ、価値観やアイデンティティの問題として、
「経験則上の期待値をふまえた経済的合理性に基づく判断」
を捨象して、情緒的な決断をした場合、その結果は、
「(会社にとっては)より腹立たしい、経済的不利を招来する」
という高度の蓋然性は、プロの立場として指摘せざるを得ないことも、クライアントは了承しなければならない、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01973_任意整理と民事再生は別物その6_絶対的正解ともいうべき提案モデル

任意整理について、
「債権者宛への提案においては絶対的正解ともいうべき提案モデルがある」
という前提をもつ債務者は、少なくありません。

しかし、相手側(債権者)の
「同意する」
「同意しない」
という態度に依存する課題である以上、この前提自体には異論を唱えざるを得ません。

もし、”絶対的正解”が存在する前提で弁護士に相談するならば、弁護士は能力以上のことを求められることとなり、相談者にとっても、弁護士にとっても、不幸な帰結となります。

だからといって、
「任意整理の提案で相手側(債権者)の同意を得ることができないのであれば、民事再生の移行を検討する」
として、債務者が、
「民事再生の手続き帰結においても、(トレンドや一般傾向ではなく)絶対認可されるような正解となるべき計画立案モデルがある」
という前提で相談をしてきたとしても、弁護士としては、その前提に同意はできません。

たしかに、民事再生の1つである小規模個人再生では
「8割カット、分割弁済」
という
「トレンド」
が、あるにはありますが、絶対というわけではないからです。

教条主義的な立場(信用保証協会や政策金融公庫)や、弁済率向上を狙う一部信販会社が、不同意で、計画を潰す、という例も少なくないのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01972_任意整理と民事再生は別物その5_再生計画の前提

任意整理を希望する債務者が、民事再生を前提とするような再生計画(債権大幅カットと分割弁済)に、
「債権者の多数の同意と認可を見込めるであろう」
と企図しても、弁護士としては、その検討・構築には疑義を挟まざるを得ません。

弁護士に依頼さえすれば、債権者から”大幅な債権カットとカット後債権の分割弁済を受諾を得る”ことは可能であろうと、考えるのでしょうが、そもそも、契約自由の原則が働く任意整理と公権力介入型手続きである民事再生は別物です。

もちろん、任意整理は和解の一種であり、相手の同意可能性を捨象して、
「言うだけタダ」
「とりあえず言ってみる」
「やってみなはれ」
という形で、(民事再生でもないのに)民事再生を前提とした再生計画(債権大幅カットと分割弁済)を提案すること自体は、絶対ダメ、とか、許されない、とか、違法、とかいうわけではありません。

ただ、債権者に相手にされず、時間の無駄ですし、また、債権者の信頼を喪失し、今後、まともなコミュニケーションができなくなる、さらには、より強硬な対応を招きかねません。

何より、
「(民事再生でもないのに)民事再生を前提とした再生計画(債権大幅カットと分割弁済)を提案」
してくる代理人(弁護士)は、今後、相手にされない可能性があります。

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01971_任意整理と民事再生は別物その4_小規模個人再生

一般論として、
小規模個人再生は、8割カット、らくらくチャラ」(額にもよります)
というように、いわれます。

そこで、任意整理を希望する債務者が、再生計画を
「小規模個人再生」
を”参考尺度”として考えがちですが、そもそも、その前提は働きません。

債権者に対して、
「小規模個人再生だと、このくらいチャラにされるのだから、これを前提とした任意整理でいいだろ?」
という働きかけ自体が、失当と考えられます。

なぜなら、任意整理と民事再生は手続きが別物だからです。

債権者にとって、任意整理は、公権力介入型手続きである民事再生とは、格式と信頼性が違いますし、契約自由の原則が働く以上、理由なく元本を割り込むような弁済案には応じる義務もなければ応じる理由もなく、さらに言えば、応じると背任的と非難されかねません。

ですから、小規模個人再生の経過予測をどれほどしたとしても、任意整理の参考値にはならない、ということなのです。

ちなみに、
「小規模個人再生」
であっても、運用や債権者の動向に左右される要素が”絶無”とはいえません。

楽観的に手続きをすすめて、あとから厳しい状況(というか、本来の民事再生法の理念にしたがった、堅実で厳格な処理の結果)で右往左往する、という債務者が少なからずいるのは、上記のような前提の違いを誤解していることに起因しているようです。

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01970_任意整理と民事再生は別物その3_小規模個人再生と給与所得者等再生

個人再生は、民事再生の1つです(民事再生法221条以下に規定がある手続き)。

個人再生には、
「小規模個人再生手続」
「給与所得者等再生手続」
2つの種類があります。

個人商店主や小規模の事業を営んでいるオーナー経営者を対象とする
「小規模個人再生」
は、
主にサラリーマンを対象とする
「給与所得者等再生」
とは、別物です。

給与所得者等再生については、
「可処分所得を一定期間きちんと吐き出せば、債権者からイニシアチブを取り上げ、一方的に(債権者に)泣いてもらって、あとはチャラ」
という制度設計が前提となっているので、可処分所得計算は制度活用前提となり、厳密性が要求されます(加えて、いい加減なことをすると、申立代理人を含め、公平誠実義務に悖ります)。

小規模個人再生については、
「最終的に債権者のイニシアチブに委ねられる」
という制度前提なので、上記ほどの厳密性はないものの、とはいえ、再生原因や現状を記述する際、家計状況を申述する必要は出てきます。

このようなことですので、(家計状況を)出す・出さないレベルの話でいえば、小規模個人再生だからブラックボックスでいい、ということにはならないものの、意味や役割が異なります。

極論を言えば、
「年収1000万円超で、余裕のある生活をしながら、負債総額の10%を3年で返し、あとはチャラでいいだろ」
という再生計画を作成することもなくはありませんが、
・債権者の同意を得る手前で、再生委員や裁判所が嫌悪して認可を渋る(あるいは計画の練り直しを要求する)
・債権者が、債権者作成の再生計画をぶつけてくる(普通はそんな暇な債権者はいないと思いますが、教条主義的な債権者もいるので)
・債権者が同意しない(これも稀とは思いますが、論理的可能性として、「年収1000万円超で、余裕のある生活をしながら、負債総額の10%を3年で返し、あとはチャラでいいだろ」という再生計画を前にして、「忌避感を示し、これが行動としてあらわす債権者が絶無」とは断言しきれない、というところです)
という理論的リスクが残る、という筋の話です。

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01969_任意整理と民事再生は別物その2_任意整理の課題

任意整理において、額と期間の問題はトレードオフ課題で、
・長期になると、債務者が楽だが、債権者は応じない
・短期になると、債権者は落ち着く可能性があるが、債務者は辛い
という状況です。

(債務者にとって)イージーなプランは、結果、債権者の大半が、そっぽを向く、という帰結を生みます。

一例を紹介しますと・・・

債務者側は、絞りに絞っても、どうにも返済原資が出せず、かつ、民事再生も絶対嫌、というケースがありました。

当方(債務者側)から、超長期の返済計画を提案せざるを得ず、債権者の拒否を承知で提案しました。

債権者側である相手方のいくつかは同意しましたが、相当数取り残しが出ました。

最終的に、
・強硬な政府系債権者は、時効停止を延々と迫ってきて、
・その他の債権者は、サービサーに売却後、債権者側が時効管理をミスって、
時効完成という帰結です。

結果としては、当方(債務者側)の意図通りに近い帰結となりましたが、何とも不安定な状況で、また、強硬な政府系債権者のウンザリするような不幸の通知(時効停止通知)に辟易する、ということになりました。

債務者側は、このような状況にも全く動じず、腹がすわっており、この帰結に感謝していましたが、切れ味の悪い、スッキリしない状況を受け入れることとなりました。

上記は、
「”長期”で、結果的に債権者は応じた」
一例ですが、稀です。

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01968_任意整理と民事再生は別物その1

任意整理は、債権者の個別同意の集積体です。

和解契約の塊と考えてもいいでしょう。

契約自由の原則からすれば、どのような和解をしても自由、ということなのですが、
「債権者平等の原則」
から、返済原資を債権額に比例配分して、同じ期間で完済する、という制約が生じます。

また、契約相手が金融機関の場合、そのロジックに整合させないと、相手が拒否する、ということもあります。

そして、元本全額が、返済総額になります。

債権額をカットすることは、事実上無理です。

金融機関の立場では、 債権を放棄することは理由のない財産廃棄であり、背任と批判されかねないからです。

このような制約さえ守れば、設計の自由度はあり、イニシアチブを債務者が取れる、という利点があります。

他方で、民事再生は、裁判所が介入して、債権カットをしてくれる、という前提ロジックになります。

債権額はカットされるし、返済は短くなるし、債務者にとっては、いいことづくめです。

裁判所のお墨付きがあれば、債権者が無駄に抵抗することは少なく、同意採取も、楽です。

ただし、
「裁判所の介入」
というところに不確実性があるのは事実です。

ケースバイケースで一律解答はありません。

もっとも端的な方法は、カンニング、すなわち、(東京であれば)東京地裁20部への事前相談です。

詳細なシミュレーションの前提情報が必要であれば、(絶対性、確実性は保証できないものの)弁護士が、
「前提事実を整理したうえで」
事前相談を行うことは不可能ではありません。

なお、
「民事再生の際の再生計画がこうだから、任意整理の整理案もこうしろ、これで認めてくれ」
というロジックフローにはなりません。

任意整理と民事再生は別物だからです。

金融機関が再生計画を受け入れるのは、裁判所が関与し、
「公権力が債務者がズルや身勝手なことを言ってないかをチェックする」
という前提があるからです。

だから、
「債権額はカットされるし、返済は短くなるし、債務者にとっては、 いいことづくめ」
でありながら、金融機関も抵抗しないのです。

他方で、任意整理は、融資地獄に書いたとおり、債務者がゲームの主導権を握る、というゲーム環境は!その通りですが、金融機関としても立場があるので、裁判所という公権力が関わるわけではなく、在野の弁護士が平等性を担保してるだけの、言ってみれば、身勝手な与太話ですから、よほど合理性がなければ、応じ難い、という状況になりがちです。

すなわち、
・債務額のカットはしない
・返済期間も相当期間
というまとめ方でなければ、債権者にそっぽを向かれます。

ただ、そっぽを向かれても、それ以上債権者が現実的で効果的な対抗措置を取りにくい、というのは、やはり融資地獄に書いたとおりです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01967_未払残業代事件における裁判所の対処哲学その3_裁判所からしょっぱい対応を受けた「未払残業代事件」

保守的・体制寄りとかどうとかいう前に、未払残業代事件については、裁判所全体として、企業側にそうとう厳しい対応をしてくる、という認識を明確にもつべきです。

すなわち、
・労働時間はきっちり管理させ記録させる、
そして
・記録された時間どおり、単価を乗じた労賃はすべてきっちり払わせる。
・払わなければ、耳を揃え、利息をつけて強制的に払わせる。
・その紛議のプロセスで無駄な抵抗をしたり、事件の妨害をしたり、と悪質な態度で望めば、付加金(労働基準法第114条「裁判所は、第20条、第26条もしくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。」)を食らわせ、
「倍付けペナルティー」
も払わせ、焼きを入れる。

昨今は、企業にとってそんな厳しい対応が標準化しています。

エリート街道まっしぐらの優秀な裁判官は、判決を書くことなど朝飯前のバナナスムージーですから、なめた対応をしていると、本当に判決をくだされ、付加金を食らうことにもなりかねません。

以上のことから、企業は、トレンドをしっかりと捉え、自分の置かれた状況を正しく認知・解釈し、裁判官が開示した心証を深刻に受け止め、楽観バイアスに冒されず、大事になる前に、和解での着地を目指して交渉にシフトすべきでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01966_未払残業代事件における裁判所の対処哲学その2_「未払残業代事件での企業受難時代」の背景

裁判所が人権擁護に目覚めた、という側面がないとは言い切れませんが、むしろ、昨今の
「未払残業代問題についての、徹底した労働者寄りの裁判所の対処哲学」
は、日本の産業界の未来を憂いた、エスタブリッシュメントとしての確固たる信念に支えられているものと思われます。

すなわち、無料でいくらでも働かせる人的資源があり、企業がこれに依拠して経営ができるとしましょう。

そうすると、企業は、経済合理性を追求することから、無限で無償の労働力に安易に依拠するようになります。

その結果、生産効率は改善されず、設備更新もされず、進化に取り残されてしまいます(ガラパゴス化)。

そりゃそうです。

タダでいくらでも動かせる資源があるのに、わざわざカネをかけて、別の稼働方法を考えたり、実行したりするなんて馬鹿なことをする企業はいないはずです。

しかし、そうすると、人的資源の高コストに悩まされた国において、生産効率が改善され、設備更新が進み、やがれ、技術格差が広がっていき、進化から取り残され(ガラパゴス化)、最後に、圧倒的な新技術、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション。ホワイトカラーのデスクワークを、パソコン等に格納された自律型ソフトウェア・ロボットが代行・自動化するシステム)等が到来して、駆逐されてしまいます。

これは、鎖国によって進化から取り残された江戸幕府が、黒船によって一気に駆逐されたと同様の事態が生じる危険が生じる、ということを意味します。

人的資源は有限で有償の資源であり、しかも、今後枯渇し、ますます依存不能となります。

これを、経済的に認識させ、正しい環境認識・正しい負荷認識の下、改善・発展のための真っ当な努力をさせ、日本の産業社会を継続的に発展させるべきであり、これが遅れると、日本の産業社会が世界から取り残されることになりかねません。

労働者の人権が大切、という以上に、日本そのものを生き残らせるため、日本のエスタブリッシュメントは、必死の思いで、構造改革を進め、あるいは、企業に行動を変えさせるメッセージを伝えようとしているのだと思われます。

この現れとして、立法府や行政府としては
「働き方改革」
司法府としては
「違法残業の駆逐」
という体制方針として具体化されている・・・そう考えると、現在の労働課題のトレンドがよくみえてきます。

続きは、01967

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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