02016_リリース予定の新商品についてネットで誹謗中傷が蔓延し、裁判しようにも追いつかない(教えて!鐵丸先生Vol. 24)

<事例/質問> 

当社がリリース予定の新しい商品について、ネットで、全くの事実無根の誹謗中傷が蔓延しています。

ひょっとしたら、ライバルの会社が、工作員を使って書き込んでいるのかもしれません。

裁判をしようにも、次から次に書き込みが出てくるので、イタチごっこになり、間に合いません。

このまま放置するしかないのでしょうか。

裁判が無理であれば、対抗措置としてカウンターリリースすることも考えていますが、却って炎上するような意見もあり、ほとほと困っています。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

これはよくある話です。

新しい商品のスペックが嘘だとか、既存商品とほとんど変わらないとか、ネガティブな噂が広まり、予約注文が入らなかったり、発売後に在庫が積み上がることもあります。

裁判で対応しようとしても、相手が特定できなければ始まりません。

有害情報の発信者を特定しようとしても、掲示板やSNS事業者、通信業者が通信の秘密を盾に抵抗するので、裁判は難航します。

そこで、対抗言論を使って反撃することが考えられます。

やられたらやり返す、言われたら言い返すということです。

しかし、これを実行する際には慎重に行う必要があります。

同じ掲示板やSNSで直接反論するのは逆効果になることがあります。

私がお勧めするのは、立場や力の差を利用して反撃する方法です。

誹謗中傷に対して、きちんとしたソースやデータ、エビデンスを示して反論することです。

戦う場所は自社の公式サイトのニュースリリースで行い、表現もフォーマルにし、徹底した証拠と論理を用います。

相手の発言と逐一同じレベルで対抗するのではなく、
「一部ネットで当社の新商品について誤解があるようです」
といった形で、高みから諭すように間違いを正します。

「便所の落書きのような根拠のない、無責任なコメント」
と、
「公式の場で根拠と論理に基づいたフォーマルで責任ある発言」
が併存すると、自然と
「地上で騒いでいるところに、戦闘機が高高度から爆弾を降り注ぐ」
ような状況が伝わります。逆SEO(検索順位操作)も、こうした前提を整えた上で戦略的に組み合わせると有効です。

特に、企業として無責任な誹謗中傷に対抗するには、このような方法を押さえておくことが重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02015_ネットでの誹謗中傷に対する法的対処(教えて!鐵丸先生Vol. 23)

<事例/質問> 

ネットで誹謗中傷されました。

全くの事実無根で、何から何まで間違いのことが書かれています。

これはスルーするしかないのでしょうか?

法的に対処出来る場合はどのようにすれば良いか教えて頂きたいです。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

事実無根の誹謗中傷をされた場合、まず考えるべきは、書き込みを削除させること、そして損害賠償を請求することです。

ただし、これを実行するには誹謗中傷を行った相手を特定する必要があります。

相手の住所や氏名がわからなければ、裁判を起こすこともできません。

誹謗中傷をしている相手がはっきりわかっている場合は、内容証明を送りつけるなり、裁判を起こせば良いでしょう。

しかし、匿名掲示板やSNSで書き込まれている場合は、掲示板運営者やSNS事業者、インターネット接続業者に発信者の情報開示を請求することになります。

しかし、これらの事業者は通信の秘密を守るため、簡単には情報を提供してくれません。

通信の秘密は憲法でも保障されており、法的に情報を開示させるには裁判所の命令が必要です。

発信者の特定には時間とコストがかかり、損害賠償請求までたどり着いても、得られる賠償金額は僅かです。

その間にも、誹謗中傷の書き込みが増える可能性があります。

また、明らかな違法行為でない場合は、裁判で敗訴するリスクもあります。

そのため、法的手段に頼るのはハードルが高く、コストパフォーマンスが悪いです。

別のアプローチとして、
「言い返す」
という方法もあります。

完全に事実無根の誹謗中傷であれば、証拠を示して反論するのです。

例えば、
「あなたは大学を出ていないし、弁護士でもない」
と言われたら、東大の卒業証明書や弁護士登録の証明書をネットにアップすれば良いのです。

法律や裁判に頼るのは弁護士の営業手法としては正しいかもしれませんが、普通に言論市場でやり返すことも有効な方法です。

まずは事実を証明する証拠を提示し、誹謗中傷がデタラメであることを公に示すことで、迅速かつ効果的に対応できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02014_友人から保証人を依頼されたときの対応(教えて!鐵丸先生Vol. 22)

<事例/質問> 

友人から、絶対迷惑かけないから、保証人になってくれと言われましたが、どう対応すべきでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

ビジネスでは
「感情」

「勘定」
を分けて考えるべきです。

「助けたい」
「困っているから」
と連帯保証を引き受けると、一緒に地獄に落ちることになります。

連帯保証をするというのは、借金をしていないのに同じ責任を負うことです。

実際にハンコを押したことで人生が狂った人は多いのです。

連帯保証を頼まれるのは、そもそも相手に信用がないからです。

信用がないということは、無理をしている、背伸びをしているということです。

例えば、年収500万円のサラリーマンが2億円の家を買うために連帯保証を頼まれるのは無謀です。

2500万円の中古にしておけば、自分でローンを組むことができます。

また、事業をしていて自分の信用だけでお金を借りられないのは、信用がないからです。

お金があり、実績があり、商売が順調なら、銀行が貸してくれるはずです。

急成長するポテンシャルがあるなら、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルが資金を提供してくれるでしょう。

特に
「根保証」
は危険です。

普通の保証なら、借りた人が返済すれば終わりですが、根保証は一度返済してもまた借りることができ、保証関係が延々と続きます。

これでは無間地獄です。

根保証を引き受けるなら、極度額に対して十分な報酬をもらうべきです。

知らない間に連帯保証人にされるケースもあります。

手形を使っていつの間にか連帯保証人にされることがあるのです。

貸し手と債務者の間に第三者が挟まれて裏書きをすると、その第三者が連帯保証人になるというトリックです。

無担保裏書きをしないと、責任を背負い込まされます。

迷ったときは、手を出さず、ハンコを押さないことが最善です。

ハンコを押さないことで助かった人はたくさんいますが、ハンコを押して地獄を見た人は数え切れないほどいます。

迷ったら、プロに相談するか、ハンコを押さないことです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02013_経営者から借金を申し込まれたときの対応(教えて!鐵丸先生Vol. 21)

<事例/質問> 

事業をやっている友人から借金を申し込まれたのですが、どう対応すべきでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

企業を経営していると、知人や友人から
「金を貸してくれ」
「保証人になってくれ」
といった依頼が舞い込むことがよくあります。

最近ではコロナの影響で苦しいという理由が多いです。

依頼には
「来月には返せる」
「一時的な資金ショートだから」
「絶対迷惑はかけない」
といった言葉がついてきます。

しかし、事業をしている会社が友人に金を借りに来るというのは、銀行が既に見放した証拠です。

銀行が見放すのは、既に相当迷惑をかけているからです。

こういう話にまともに取り合うと、身を滅ぼします。

助けを求めてきた知人や友人を見放すのは心苦しいかもしれませんが、適度な見舞金を渡して追い返すのが得策です。

例えば、ある経営者は
「大変だな。同情するが、これしか持っていない。見舞金として取っておいてくれ」
と言って10万円以内の額を渡して帰ってもらうそうです。

こうしたシビアな対応が、現代の経営者には必要です。

事業をしている会社が友人や知人に金を借りに来るのは、一時的な資金不足ではなく、構造的な資金難が多いです。

これは
「お前はもう死んでいる(=会社がゾンビ状態)」
ということなのです。

キャッシュフローネガティブや債務超過の状況では、弁護士の介入が必要です。

したがって、借金を申し込まれたら、カネを貸すよりも弁護士を紹介する方が良いでしょう。

また、売掛金の未精算がある場合、それ以上の取引は控えるべきです。

信用のない相手に掛売りを続けるのは無担保融資と同じリスクがあります。

銀行が返済できない相手に追加融資をしないのと同様に、事業者もリスクを増やさないことが大切です。

銀行の慎重な姿勢を見習いましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02012_公正証書とは(教えて!鐵丸先生Vol. 20)

<事例/質問> 

公正証書とはなんですか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

公正証書とは、一般の人々の要請(嘱託)に基づいて作成される私的な権利義務に関する文書です。

法律の専門家である公証人が内容を確認し、公証人法に基づいて作成する公文書です。

公証人は、裁判官や検察官のOBが務め、公証役場という独立採算制の施設で活動しています。

日本全国に多くの公証役場があります。

公正証書は、私人の権利関係を扱いながらも公文書としての性格を持つため、高い証明力を持っています。

特に金銭債務の支払いを内容とする契約では、公正証書を作成することで、債務者が支払いを怠った場合、裁判を経ずに直ちに強制執行手続きに移ることができます。

通常の借用書や銀行との契約書では、たとえ弁護士が作成したものであっても、債務者が支払いをしない場合には裁判所に訴えを起こし、判決を得る必要があります。

この手続きには時間や費用、エネルギーがかかります。

しかし、公正証書で金銭消費貸借契約書を作成しておけば、判決と同じ効力を持つため、即座に強制執行にかかることができます。

公正証書は非常に強い効力を持つため、重要な契約に関しては多少のコストがかかっても公正証書化を検討する価値があります。

特に、金銭消費貸借契約(貸金契約)で抵当権などを設定しない場合には、公正証書が非常に有効です。

支払い懈怠があった際、公正証書が強力な力を発揮するため、債務者への融資条件として公正証書化を求めるべきです。

公正証書は契約内容を明確にし、法的トラブルを防ぐための強力なツールです。

大事な契約を結ぶ際には、ぜひ公正証書の作成を検討してみてください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02011_M&Aで売り手側の契約書は分厚いほうがいいのか(教えて!鐵丸先生Vol. 19)

<事例/質問> 

代々続いた家業を売却するのですが、税理士さんに任せていろいろやってもらっています。

M&Aという割に、ペラペラの契約書で心配です。

もっと分厚い契約書にしておくべきではないでしょうか。

その方が、安心できますので。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

日本の産業界では、長い間、
「信頼関係」
に基づく簡素な契約書が尊ばれてきました。

しかし、市場が縮小し、競争が激化する中で、外資や新興企業の参入も増え、欧米流の詳細な契約書が主流になっています。

これにより、
「ペラペラの契約書では不安」
という声も増えてきました。

とはいえ、分厚い契約書が常に有利とは限りません。

特に
「M&Aの売り手側」
にとって、分厚い契約書は逆効果です。

売り手側にとって最も有利な立場は、
「現状有姿で売り逃げる」
ことです。

詳細な契約書を作成すればするほど、売却後も様々な責任を負うことになります。

したがって、契約書はシンプルであることが理想です。

例えば、会社の実情が思ったより悪くても、見えない債務やリスクがあっても、保証を一切せずに売却することが望ましいです。

契約書には全株式譲渡とその対価のみを記載し、その他の詳細な取り決めは避けるべきです。

法的に問題がある表現が含まれていても、それは買い手側が裁判で不利になる可能性を秘めているため、あえてそのままにしておくのも1つの戦略です。

相手方(買い手側)が簡素な契約書を提案してきた場合、それは歓迎すべきことです。

細々とした契約内容を定めることは、売り手側が自分の首を絞めることになります。

買い手側の提案を無条件に受け入れることで、売り手側の義務を軽減することができます。

「売り切り御免。保証なし」
を明確にする条項を盛り込むことが重要です。

M&A後に買い手から
「欠陥がある」
「話が違う」
などのクレームを防ぐためには、
「アンチ・サンドバッギング条項」(欠陥があるとわかっている場合、後から文句を言えない)

「売り切り御免条項」
を契約書に入れておくことが有効です。

また、株券の引き渡しと代金の支払いは完全な同時履行にすることで、買い手側がリスクに気づいて支払いを渋る事態を避けることができます。

分厚い契約書があるから安心できるという考えは必ずしも正しくありません。

取引の内容や相手の信頼性をしっかり確認し、売り手側にとって有利な契約条件を確保することが最も重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02010_分厚い契約書は安心できるか(教えて!鐵丸先生Vol. 18)

<事例/質問> 

分厚い契約書だから安心できると考えていいのでしょうか

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

契約書は約束の記録に過ぎません。

そのため、記録が分厚いからといって、約束が確実であるとは限りません。

内容が狂っていたり、実現不可能だったり、詐欺師や信用できない相手との契約であれば、どれだけ分厚くても必ずトラブルになります。

特に最先端技術や金融、投資、海外取引などの分野では、分厚い契約書に安心していたら騙された、失敗したという話が多くあります。

例えば、AIやRPA、仮想通貨のマイニング、太陽光発電、デリバティブ取引など、複雑な取引では、契約書の分厚さではなく、その内容の合理性が重要です。

内容を確認せずに取引を進めると、大きな問題に発展する可能性があります。

あるお客様の事例では、英語の契約書で独占販売権を設定した販売代理店契約を結びましたが、他にも代理店契約が結ばれており、自社の権利が無視されていました。英語で
「non-exclusive representative」
と書かれていたにも関わらず、誰もそれをしっかりと読んでいなかったため、分厚い契約書に安心していたのです。

契約書は、契約当事者が約束した内容を正確に記述するものです。

しかし、約束の内容が狂っていたり、不利だったり、目的が不明確であったりすると、その契約書も狂った内容や不明瞭な内容となってしまいます。

時間がないからといって契約書をしっかり読まずにサインするのは避けるべきです。

ラッシュディールはバッドディールという言葉がありますが、急いで結んだ契約は良い結果を生まないことが多いのです。

分厚い契約書があるから安心できると考えるのではなく、その内容をしっかり確認し、理解することが重要です。

契約書の外見やボリュームではなく、内容が肝心です。

契約書をしっかり読まずに安心するのは危険です。

契約相手の信用性や履行能力、そして取引内容の合理性や明確さが揃って初めて安心できる取引となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02009_契約書さえ作っておけば安心できるか(教えて!鐵丸先生Vol. 17)

<事例/質問> 

契約書さえ作っておけば、後は安心できますでしょうか

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

契約書は約束の記録や証拠に過ぎません。

契約書がしっかりしていても、約束を果たせるかどうかは他の要因にも大きく依存します。

まず重要なのは、契約相手が信用できるかどうかです。

例えば、契約書は完璧でも、相手が前科のある詐欺師なら事件になる可能性があります。

また、事業が危機的状況にある相手にお金を貸す場合も、契約書がどれほどしっかりしていても返済は期待できません。

契約相手が約束を果たせる状況にないからです。

さらに、契約相手が誠実であっても、能力不足の場合も問題です。

例えば、経験や知識のない人に大きな投資や専門的な業務を任せるのは、契約書が完璧でも実現不可能です。

実現可能性や前提条件に誤りがある契約も問題です。

経験や知識がないまま大規模なプロジェクトを引き受け、結果的に納期遅れや予算オーバーとなることがあります。

システム開発やAI、省力化プロジェクトなどでは、追加開発費用が膨らみ、最終的に契約破棄に至ることもあります。

東京地裁にある建築紛争やIT紛争専門部のように、契約書がしっかりしていても相手のスキルや能力を誤解したために起こる紛争が多いです。

取引条件が不明確であったり、表現が曖昧であったりするとトラブルの原因となります。

例えば、期限やスペック、ペナルティが明確でない契約は、実行が遅れたり、言い訳がましくなったりします。

要するに、契約書があるだけでは不十分であり、取引相手の信頼性や履行能力、取引内容の合理性や実現可能性、そして契約内容の明確さがすべて揃って初めて、安心できる取引となります。

契約書がいくらしっかりしていても、それを実行できる相手でなければ意味がありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02008_弁護士の契約書作成費用、作成費用を安くする方法(教えて!鐵丸先生Vol. 16)

<事例/質問> 

弁護士さんに契約書作成を頼むと、どのくらいかかりそうですか?

安く上げる方法とかないですか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

契約書の作成費用についてお話します。

費用は、定型契約とユニークな契約で異なります。

定型契約は既製服のようなもので、取引価額1億円までなら5万円から30万円程度、1億円を超えると別途相談となります。

一方、ユニークな契約はオーダーメイドのようなもので、取引価額3億円までなら10万円から120万円程度、3億円を超えると応相談となります。

さらに、非常に複雑な契約の場合はタイムチャージとなり、1時間あたり2万円から8万円ほどの費用がかかります。

契約書作成費用を抑える方法としては、まずネットで探した契約書の書式を使用し、自分で必要な情報を埋めた後に弁護士にチェックしてもらう方法があります。

また、弁護士と顧問契約を結ぶことで、定型契約書式を顧問料の範囲内で提供してもらい、最後にチェックしてもらうことも可能です。

さらに、難易度が高い契約の場合でも、事前に定額制や上限予算を設定することで、タイムチャージを避けることができます。

一方で、弁護士費用を節約しようとして絶対に避けるべきこともあります。

例えば、相手方の弁護士が作成した契約書をそのまま使用することは避けるべきです。

必ず自分の弁護士にレビューしてもらうことが重要です。

弁護士は依頼者に忠誠を尽くすため、相手方の利益を優先した契約書を作成することがあるからです。

また、素人に契約書作成を任せることも避けるべきです。

過去のテンプレートを見様見真似で作成すると、後々の紛争の原因となるリスクがあります。

良い経営者は弁護士費用を保険のように捉え、適切なリーガルコストを設定しています。

例えば、取引金額の1%や0.5%をリーガルコストとして見積もるなど、事前に費用を見積もる工夫をしています。

弁護士費用をケチりすぎると、後々高くつく可能性があるため、慎重に考えることが大切です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02007_契約書は作らなければならないのか?(教えて!鐵丸先生Vol. 15)

<事例/質問> 

契約書はどうしても作らなければならないのでしょうか?

弁護士に以来すると、お金もかかるし、相手も信頼できそうなので、契約書なしで先に進めたいのですが。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

契約書を作ることは法律で強制されているわけではありません。

契約とは約束であり、その約束は口頭でも成立します。

契約書は、約束の記録に過ぎません。

たとえば、ゴルフを仲間内で楽しむとき、スコアをつけるかどうかは自由です。

契約書も同様に、記録を残したいなら作ればいいし、不要なら作らなくてもよいのです。

ただし、これが大規模な取引や多額の金銭が関わる場合には、事情が異なります。

「信頼関係で取引するので契約書は不要」
と考えることもあるでしょう。

また、弁護士を通すと面倒になり、契約書を作ると手続きが遅れるといった懸念もあります。

しかし、信頼関係だけで進めることができるのは小額な取引に限られます。

数千円や数万円の話なら問題ないかもしれませんが、億単位の取引となるとそうはいきません。

契約書を作成することで、
「契約が存在したこと」

「契約の具体的内容」
を示す証拠が残ります。

これは、後々のトラブル防止に非常に重要です。

特に、大規模な取引では小さな勘違いや食い違いが大きな問題となり、億単位の損失を招くこともあります。

実際のビジネスでは、些細なことが原因で
「言った言わない」
の争いが起きることは日常茶飯事です。

これを避けるためには、多少の時間とコストをかけてでも契約書を作成し、合意内容を文書化することが大切です。

要するに、法的には契約書が必須ではありませんが、大切な取引や大金が関わる場合には、トラブルを未然に防ぐために契約書を作成することが賢明です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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