01811_弁護士としての価値

弁護士は、紛争の専門家として、クライアントのおかれた状況を俯瞰し、
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」
において、常に悲観想定をします。

「弁護士の悲観想定」とは、
言葉を換えれば、
「想像力ある知性」
ということです。

ようするに、弁護士は、火傷を負わなくても、ストーブの熱さが理解でき、そこに弁護士としての価値があるのです。

紛争を前に、クライアントには楽観想定をする自由と権利があります。

ただし、紛争は、
「本気で争わなければ」などという精神論
では勝てません。

弁護士は、どんなに不利でもクライアントへ力添えをする役割を全うしますが、状況の冷徹な認識をする際、精神論で状況を認識するような愚劣さを持ち合わせてはおりません。

結局、楽観想定を推し進めようとするクライアントは、自業自得、自己責任、因果応報、という帰結を受け入れることを求められます。

他方で、クライアントが、相手との紛争の状況と展開予測を現実的にみて、形勢不利とみて、
「やっぱり辞める」
ということは十分あり得えます。

たとえ正当性ではこちらに分があったとしても、戦局と資源動員と動員体制のレベルで劣悪な状況である場合、作戦原理で負ける可能性があるからです。

悪あがきであろうと、戦理に基づく可能性ある作戦展開であろうと、弁護士は、戦の専門家として、与えられた前提で、クライアントの指示に従い、その範囲と限度において最善を尽くすだけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01810_弁護士との関係構築のあり方を考える(弁護士をサプライヤーとして処遇するか、パートナーとして処遇するか)

法務・安全保障課題を評価・解釈・展開予測するプロセスにおいて、クライアントは、委任する弁護士の取扱いについて、決めておかなければなりません。

すなわち、弁護士を、

1)パートナーではなく、サプライヤーとして、
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」について
共有しない状態で、展開作戦にふさわしい予算環境を提供しないまま、機械的・事務的に対処させるのか、

2)サプライヤーではなく、報酬リスクを負担するパートナーとして、
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」について
共有する状態で、展開作戦にふさわしい予算環境を提供し、正常な環境と士気を以て戦略的に対処させるのか、

ということです。

弁護士としては、(1)なのか(2)なのか確認できるまでは受任を差し控えることとなるでしょう。

弁護士の取扱いを決めることに慎重になるあまり、時間を費消しては、貴重な機会を逃しかねませんので、注意が必要です。

さて、受任した弁護士は、与えられた前提で、クライアントの指示に従い、その範囲と限度において最善を尽くします。

ところで、

弁護士として、(A)という悲観想定での展開予測を行ったものの、クライアントが、(B)という楽観想定を選択し弁護士に(B)を前提とした課題対処を求めた場合です。
そして、弁護士の想定(A)が現実化し、(B)が悪手となって、損害が重篤化した場合、たとえ弁護士として課題対処に関わったとはいえ、もともと、間違った想定が原因で発生した災いであり、責任は、楽観想定を選択したクライアントに帰すことになります。
したがって、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担しかねることとなります。この点は理の当然であることを、クライアントは了承ておかなければなりません。

というように、見ている風景が違うと、作戦計画も、作戦士気も、動員予算も、まったく違ってきます。

もちろん、(1)は(1)として構いません。

弁護士を(1)のサプライヤーとして委任するのか、(2)のパートナーとして委任するのかは、クライアントが決めることですし、弁護士は与えられた前提で最善を尽くすだけです。

ただ、弁護士として困るのは、展開予測において、(A)という弁護士の悲観想定と(B)というクライアントの楽観想定、予測がズレる場合です。

同床異夢だと、不幸な事故が起きます。

クライアントは、弁護士からの報連相(報告、連絡ないし相談)をしっかり、きっちり読んで理解しなければなりませんし、わからなければ、わからないと言う勇気も必要です。

特に有事の際は、事件や事案のフェーズは刻一刻と変化し、気づけば、
「こんなはずではなかったのに」
と後悔するクライアントも少なくありません。

満足する結果を享受するクライアントの多くは、弁護士を(2)のパートナーとして処遇し、弁護士としっかり連絡を取り合い、すべてにおいて、時間を費消させすぎずに(A)という悲観想定をしつつ決断し、合理的試行錯誤(PDCA)を遂行しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01809_弁護士への外注_法務安全保証課題

1 法務・安全保障課題の発見・認知

法務・安全保障課題を対処する上では、契機となるインシデントが認知されなければ、課題認識を持てません。

この点、弁護士は社外の存在ゆえ、クライアントから持ち込まれることが前提となって、課題の発見・認知が可能となりますので、クライアントの協力が必須となります。

課題を発見・認知したところで、弁護士は都度
「これは法務課題(リーガルマター)です」
という形で指摘することとなります。

2 法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測

法務・安全保障課題が発見・認知された場合には、前提リテラシーを実装し、当該リテラシーを基礎に、評価・解釈・展開予測のプロセスが必要となります。

この点について弁護士はもちろん助言しますが、ただ、弁護士として披瀝した評価・解釈・展開予測の採否は、クライアントがジャッジするべき事柄です。

ここで、問題が生じる可能性があります。

たとえば、弁護士として、(A)という悲観想定での展開予測を行ったものの、クライアントが、(B)という楽観想定を選択し弁護士に(B)を前提とした課題対処を求めた場合です。

そして、弁護士の想定(A)が現実化し、(B)が悪手となって、損害が重篤化した場合、たとえ弁護士として課題対処に関わったとはいえ、もともと、間違った想定が原因で発生した災いであり、責任は、楽観想定を選択したクライアントに帰すことになります。

したがって、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担しかねることとなります。この点は理の当然であることを、クライアントは了承しておかなければなりません。

3 課題対処の計画立案

クライアントとしては、楽観想定(B)の方向では対処する意向ではあっても、悲観想定(A)の場合の計画もみてみたいので、動員計画(予算見積もり)を弁護士に求めることもあり得ましょう。

クライアントが楽観想定(B)を堅持し、楽観想定(B)に基づく具体的行動を計画・準備・着手し、また、この点について弁護士が支援をしている最中であったとしても、クライアントが所望すれば、弁護士は悲観想定(A)に基づく動員計画(予算見積もり)を予備的に提出することとなります。

4 課題対処の着手・遂行

課題対処の着手・遂行については、弁護士が同意する想定に基づく妙手・最善手のものであれ、弁護士としては同意いたしかねる想定に基づく悪手であれ、弁護士はできる限りの対処をします。

「弁護士としては同意いたしかねる想定に基づく悪手」
であったとしても、弁護士はクライアントの指示に従い、その範囲と限度において最善を尽くします。

ただ、弁護士の想定どおり芳しからざる結果となった場合、課題対処に関わったとはいえ、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担しかねることになります。

そのうえ、弁護士業務に関する一般的知見に属することでもありますが、弁護士は、与えられた前提で最善を尽くすものの、取引の性質が請負ではなく委任である関係上、その結果を保証するものではありません。

いわば、すべての事件や事案は、蓋然性に依拠するゲームであり、一定の前提や環境を所与として、合理的試行錯誤(PDCA)を遂行する営みですので、認識や評価が一致し、想定が共有された場合でも、結果については保証できない、ということなのです。

5 報連相(報告、連絡ないし相談)

課題対処を行う場合、報連相(報告、連絡ないし相談)という事務課題が発生します。

日常ビジネス活動とは違い、弁護士が関わる事案・事件は、いずれも、会社にとって大きな事柄です。

その意味で、クライアントは、弁護士からの報連相(報告、連絡ないし相談)を、しっかり、きっちり読み、理解しなければなりません。

他方で、機能的識字の限界等の問題もあり、弁護士からの報連相(報告、連絡ないし相談)を、理解できない方もいます。

そこで、弁護士としては、事案進捗毎に、トップだけでなく関係者一同に、説明をすることとなります。

クライアントによっては、
「会社の大きなビジネスの中で、法務は小さなもの」
「時間がもったいない」等、
安全保障を軽視する傾向にある方もいます。

しかし、安全保障については、軽視すれば軽視するほど、有事の際、時間を費消することになることも、頭に入れておかなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01808_プロジェクトを進めるには

プロジェクトを進めるには、

正しく状況を認知し、
正しく状況を解釈・評価し、
正しく改善相場観を理解し(そのためには会社法の知見が必須になります)、
正しく展開予測を行い、
正しくかつ現実的で合理的で達成可能で明快な目標を設定し、
正しく課題を抽出し、
正しく課題対処上の選択肢を創出し、
正しく選択肢のプロコン評価(メリット・デメリット評価)を加え、
最善の選択肢を選び、
正しいチーム体制や正しい受命者を選び、
正しくPDCA(合理的試行錯誤)を行う、
ということが必須になります。

これは、高度な知的な営みであり、相応の知的支援が必要であろう、と推測します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01807_法務部を持たない零細企業が、法務部機能を顧問弁護士にアウトソースするケースについて考える

顧問契約は、顧問先企業に
「事務機能と法務上の執務に責任をもてる人間」
が存在することを前提に、
「助言を与える」
ことを本旨とするサービスです。

「事務機能と法務上の執務に責任をもてる人間」とは、
・企業内活動の言語化・記録化・文書化・文書データの整理・保存
・取引活動(ヒト・モノ・カネ・情報といった各資産の調達・運用や、商品・役務を顧客に提供する営業取引)の言語化・記録化・文書化・文書データの整理・保存
・平時の治安維持や危機予防・危機管理としての処置(発見・特定されたリスクについての予防措置の構築と文
といった組織の機能を担う人間です。

個人で経営する場合、経営者が
「事務機能と法務上の執務に責任をもてる人間」
を兼ねる方がいらっしゃいますが、平時ならいざしらず、有事の際は貴重な時間を喪失しかねません。

そこで、弁護士にアウトソースする、ということも考えられます。

弁護士が、
「事務機能と法務上の執務に責任をもてる人間」
に相当する機能をカバーする、ということです。

その場合、顧問料とは別に、費用がかかります。

費用についての考え方は人それぞれですが、一般的な法務・文書管理の専門スタッフを雇用するための人件費(経験者の中途採用となるので、年収450万円~)を考えると、格安ともとらえられましょうし、今後、信頼できる法務スタッフ雇用に成功した場合、そのまま引き継いで、弁護士のアウトソースコストを消失させることも可能です(弁護士は、一般の労働者のように解雇を巡って争うことはしませんし、手間がかかる割に利益が出ない、いわば、困っているクライアントを助ける暫定的サービスは、喜んで事務承継をするでしょう)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01806_「弁護士との意見の違い」について

訴訟を提起するとなると、相手もあれやこれやと何かしら嫌がらせをしかけてくるでしょうし、それらに対処するための損害が想定される場合もあります。

弁護士は、論理と経験上の蓋然性にしたがって状況に対処する選択肢を創出しますが、法務相談者(大将)において、訴訟に不可避の損害を嫌悪するなら、訴訟などやめてしまったほうがいいでしょう。

「ジャングルで存分に戦ってほしいが、支給した新品のブーツには泥一つつけるな」
などという命令をする大将は、戦場には不要ですし、有害だということです。

あるいは、法務相談者(大将)が、弁護士の披瀝する選択肢をことごとく却下し、楽観的な自説を滔々と演説するのであれば、そもそも訴訟を起こすことなど不要でしょう。

また、大将のまわりに、楽観的な平和主義者(で、そのため、今日の惨状の出現に寄与した)がいるのであれば、その方はいわば、戦犯であり、完全に排除しなければなりません(この方が、弁護士と同程度の知性と感受性と洞察力と展開予測力をもって、楽観論に傾きがちな大将に注意喚起と警告を与えたものの、大将がその言を受け入れなかった、諫言の士であれば、チームに加えるべきでしょう)。

訴訟は、いわば軍事です。

そして、上記のことは、軍事の常識です。

「弁護士との意見の違い」
だったと、流すようなことではありません。

「弁護士との意見の違い」は、
リテラシーや認知や状況評価や状況解釈や展開予測や課題対処、要するに、頭の程度の問題です。

例えば、
「未来予測」や「展開予測」
というのは、すなわち、頭脳の質の問題です。

「未来予測能力が低い」
というのは、要するに、
「あたまが悪い」
ということです。

「危機状況を観察し、そこから経験上の蓋然性として想定される未来」
については、常に、一定の幅のある解釈が成り立ち得ます。

「それを甘く、軽くみて、何も備えない人」
と、
「保守的に想定して、(無駄になっても、保険と考えて)備える人」
との思考の差は、
「意見の違い」
ではなく、頭の程度の差なのであり、前者が、
「単にあたまが悪い」
というだけです。

「有事を想定して安全保障を備える人間の脳」
と、
「平和主義を唱えて安全保障をせず逆に安全保障を放棄して国家を危機に晒す人間の脳」
の違いは
「右か左か」の問題ではなく、
「上か下か」の問題なのです。

訴訟を起こさざるを得ないような現下の惨状がある、というのは、
「相手の頭が上で、当方の頭が下」
であった当然の帰結なのです。

厳しいようですが、これが現実です。

「弁護士とは意見が合わない。だから、もう、訴訟は起こさない」
というのであれば、最初から、相手に際限なき譲歩を行えばいいだけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01805_「弁護士との電子メールによる報・連・相体制の構築」の際に留意すべきアカウント名設定

メールアドレスを作成する際、ビジネス常識でいいますと、姓名が推測されるようなものを選択されることをおすすめします。

メールを送信する際、とくに、機微情報を含む連絡をする際、姓名とかけ離れたアカウントの場合、送信者に、アイデンティティ確認の負荷が生じますし、重要で緊急な作戦行動の障害になります。

また、個性豊かで、保有者推測不明なメアドを、
「重要で緊急な作戦行動のための機微情報」
を連絡する際のものとして使う場合であっても、最低限、アカウントの名称に、例えば、「○○○_プライベイトアカウント」
「○○○_緊急連絡アカウント」
等とすることが推奨されます。

拙速に判断すべき事柄が出来するようなメールが飛び交う、という状況もあるからです。

メールの誤送信があってはならないのは当然のこと、他のメールに埋もれる、あるいは受信しておきながら精読が遅れるようなことは忌避すべきです。

訴訟提起を前に、今後、密行性が要求され、露見によって重大な資産が喪失するリスクのある、緊張度の高い軍事作戦を立案・遂行していくには、気を引き締めなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01804_訴訟提起の前に、クライアントにおいて行うべき「体験事実の想起・状況や事実経緯のミエル化・具体化・言語化・文書化」作業の進め方(弁護士への支援や外注の求めるべきかの見極め)

ステップ1:関係資料を収集し、
ステップ2:その他重要記録を収集し、
ステップ3:関係記録を時系列整理し、
ステップ4:ヒヤリング(当然嘘や妄想がたくさん入るのである意味尋問のような形でストレステストを加えながら経緯確認する)
ステップ5:状況や経緯をミエル化・カタチ化・言語化・文書化する、

という作業がないと、一歩たりとも、先に進めません。

弁護士が上記を行うとなると、費用がかかる話です。

ただ、上記プロセスは、
「まったく法的専門性が皆無」
であり、単なる国語の問題や事務課題であり、時間単価の高い弁護士を使うのは、
「お金がもったいない」
という感覚を抱かれる方が多いのは事実です。

もちろん、価値の感じ方は人それぞれであり、
「単なる国語の問題や事務課題」
ですら満足にこなせない方もたくさんいらっしゃいますので、上記が高いか安いか、必要か必要でないかの判断は当事者本人がなさねばなりません。

弁護士は、法律の専門家として、まず、過去に発生した事実を、当事者であるクライアントの責任において、明らかにして、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化してもらい、当該事実に法を適用して、状況を改善します。

前提たる事実が曖昧であり、さらには、嘘や妄想が混じっていますと、法的専門性を発揮する余地がありません。

ステップ1~5について、時間がかかっても結構ですが、あまり時間がかかりすぎると、事件がどんどん風化しますし、民事時効が到来して、すべてなかったことになります。

以上の環境をふまえて、一体、何をどうしたいのか、懐具合も含めて、よく考えることが肝要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01803_弁護士への外注_ 戦略骨子の決定

弁護士に外注するとき、弁護士との対話がうまく進まない方が少なくありません。

原因として考えられるのは、
「何を」
の部分に齟齬がある場合です。

選択肢1 単なる事務文書作成
なのか、あるいは、
選択肢2 
(1)戦時あるいは準戦時を意識した状況構築
(2)当該状況構築を所与とした外交文書作成
なのか、という点です。

選択肢2の場合、
「状況構築」
には、根拠の調査・発見・評価・具体化という前提調査が必要となり、作業が生じます。

各種課題の整理や行動計画への落とし込みを含めて、弁護士は提案しますが、
「何を」
「どのように」
という戦略の骨子については選択の幅があり、これを決めないと、受任する側は動けない、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01802_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その10_完_予算と尊厳のトレードオフ課題

弁護士に、状況そのものが事件であると言われ、自身も
「この状況は事件だ」
と、受け入れ、認識したのであれば、
「通常、事件被害に遭った合理的人間」として対処すべき一連の行動
をしておくべきことになります。

もちろん、対処行動をせずに放置することも可能ですが、その場合、
放置=黙認=追認
ということを自認したものと扱われます。

腹立たしいことこの上ないと推測されますが、
「『通常、事件被害に遭った合理的人間』として対処すべき一連の行動」
をプロジェクトとして遂行する上では、対処行動のための動員資源(知的資源・事務資源)が必要になります。

無論、弁護士は、専門家として動員資源(知的資源・事務資源)を提供し支援することが可能ですが、カウンターパート(対処行動上の相手方。敵)によっては、非常に、難事となる(=予算が必要であり、かつ、予算がかかっても満足な成果が得られない危険もある)ことを想定しておかなければなりません。

対処方針と行動計画を策定し、着手・遂行する一連の手続きには、相当の時間がかかります。

1)立件するか(事件認識するか=対処行動を取る覚悟を決めるか=予算動員の覚悟を決めるか)、放置容認するか(予算を懸念して捨て置くか)
2)立件するとして、どのような体制(予算規律)で対処するか=弁護士に丸投げするか、一部外注に留めるか、助言のみで自力対処するか、すべて内製化するか

という論点に対処することが必要となります。

予算を忌避して
「放置容認する(予算を懸念して捨て置く)」
という決意をする場合もあるでしょうが、その場合は、不利な状態で、負け戦ないし不利な外交交渉を行う形で対処することになります。

要するに、すべてにおいて、
「予算と尊厳のトレードオフ課題」
であることを頭に入れておかなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所