01532_意味もなく流通経路に居すわっていると「中抜き」される

流通業も再編合理化の大きな嵐が今後吹き荒れることが予想される業界です。

「きちんとした役割や付加価値を提供するわけでもなく、意味もなく流通経路に居座り口銭をはじいているだけの問屋業態」
などは、突然淘汰される危険性が高いと思われます。

「そうは問屋が卸さない」
という諺があります。

江戸時代の服飾流通業界においては、呉服問屋がメーカー(呉服職人)から商品を一手に集め、委託販売形式で小売業者に卸しており、卸売価格の決定権を握ることを通じて、流通支配を行っていました。

したがって、新規参入を考える者が問屋に断りなく店舗を構えようとしても、商品を卸してくれません(現在では「ボイコット行為」として独禁法違反に問われますが)。

このことから、
「相手のある話に関しては、相手がどう考えるかによって変わるので、全てあなたの思うとおりには行かない」
ということを表すものとして、
「そうは問屋が卸さない」
という諺が出来上がったのです。

しかしながら、現在では、小売業者、さらに進んで、消費者に価格決定力がシフトしております。

流通業においては、
「消費者に安くて品質の良いものを、合理的経路で、迅速に届ける」
ということが唯一かつ絶対の正義となっております。

具体的には、小売業者をネットワーク化しこれをコントロールするバイヤーと呼ばれる者が、
「消費者に安くて品質の良いものを迅速に届ける」
という正義を旗印に、卸業者(問屋)さらにはメーカーにまで流通の合理化を要求するようになってきています。

その結果、
「意味もなく流通経路に居座り口銭をはじいているだけの問屋」
はことごとく排除されるようになってきているのです。

今後は、ネット取引の拡大とともに、流通業がますますシビアに整理合理化されていくことになります。

したがって、
「何の特徴もなく、単に特定のメーカーと取引がある、あるいは特定の小売業者の口座を有しているだけで、商品ないし伝票を右から左に流しているだけ」
という類の流通業はある日突然姿を消す可能性が高いといえます。

運営管理コード:YVKSF172TO175

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01531_ 「○○御用達」が安泰を意味しない、役所も外注を合理化する時代

「○○御用達」
というものが商人のブランドの一つを形成してきたことからも判るように、
「役所から仕事をもらえる」
ということは商売人にとって一種のステータスとなっていました。

発注者の予算が無制限であることもあり、どことなく
「役所と取引があるということは企業の安定の証」
という考え方があったように思われます。

しかしながら、
「取引先が特定の企業に依存していることは危険である」
という話は、仕入れ先や取引相手が
「官公署」
という場合も同様にあてはまります。

赤字国債が連発され、財政破綻の危険が具体化する中で、かつての民主党政権下になって、事業仕分けというものが大々的に行われるようになりました。

現在の財政上、もっとも重荷になっているのは間違いなく公務員の人件費です。

その意味では、財政健全化において、公務員、特に地方公務員の削減こそがもっとも急務の課題と言えます。

民主党が政権を担っていた時代において、民主党も、公約として、財政健全化を掲げていたところから、民主党なりに正しいと考えた財政健全化策に着手しました。

前述のとおり、財政健全化において、公務員、特に地方公務員の削減こそがもっとも急務の課題であることは、知性を働かせれば、だれでも理解できる事柄でした。

同時に、
「自治労が支持母体である民主党に、財政健全化策として、地方公務員の数や人件費に手を付けるような改革を期待しても無理であること」
もまた、誰の目にも明らかでした。

結局、民主党は、
「パフォーマンス」
としての
「事業仕分け」
なる財政健全化策もどきの茶番
を行うことでお茶を濁すこととし、その矛先は、
「切り捨てても文句を言わないところ」、
すなわち、官公署や独立行政法人との取引を行っている業者に向かうことになりました。

その結果、民主党が行った
「財政再建パフォーマンス」
としての
「事業仕分け」
は、官公署や独立行政法人と民間企業の取引を止めたり合理化したり、という方向に行き着くことになります。

このように、官公署との取引に依存している企業は、取引相手方たる役所の都合によって、突然、取引自体が消失したり、消失しないまでも相当程度、規模を縮小することになったりして、不幸に見舞われることがありうるのです。

また、コンプライアンスという観点からも、役所は些細な不祥事であれ、少しでも問題があれば、問答無用で取引を停止します。

すなわち、談合その他の法令違反があれば、軽重を問わず、指名停止扱いとなり、以後、役所との取引から徹底して排除されることになります。

役所からの仕事に依存しているような企業がこのような事態に直面した場合、その企業の命脈は直ちに尽きてしまいます。

実際、筆者が仕事として経験した事案ですが、ある会社において、地方の一営業所の営業マンが自治体職員を接待する、ということが明るみになり、これが贈賄事件に発展して、新聞に報道されてしまいました。

それからまもなく、当該自治体のみならず、ほかの自治体の取引も一切できなくなり、役所からの発注に依存していた主要営業部門が機能停止に陥りました。

その会社は、役所依存から脱却しようと、民間からの受注も開拓していた矢先であったのですが、結局、主要営業部門の取引停止をカバーするだけに成長しておらず、たちまち破綻状態に陥りました。

結果、会社は、再生を断念し、破産に至ったのです。

役所と取引するのは大いに結構です。

しかし、役所との取引の依存割合が極度に高いと、役所の予算の都合で突然取引そのものが廃止されたり、些細な事件や事故がきっかけで事業が全て停止に追い込まれる危険があるのです。

したがって、漫然と役所からの受注に
「全て」あるいは殆どの部分
を依存するというスタンスの企業は、企業の行く末に大きな危険をはらんでいるものといえます。

運営管理コード:YVKSF167TO172

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01530_一社依存取引の危険性

中小企業などで、
「ウチは一部上場企業の□□社が上得意だ」
「当社は世界展開している○○社の取引口座を持っている」
「わが社は、△△社の系列だ」
などと自慢するところがあります。

いずれも、大きな会社が主要取引先であり、
「よらば大樹の蔭」
という諺のとおり、
「そこに依存している限り、我々も倒れないから安心できる、ということを自慢したい」
ということだと思います。

しかしながら、これまで
「世界の工場」
として世界中の製造加工を一手に担い我が世の春を謳歌してきた日本は、冷戦の終結とともに、中国や旧東欧といった、考えられないような低コストで製造加工を請け負う新興勢力との競争にさらされるようになりました。

後発組は、新しい技術を既存のものとして取り入れ、設備も全面的に更新できますし、かつて日本で行ってきた
「傾斜生産方式」
などのように国を挙げての保護支援を受けています。

このような環境の変化を受けて、日本の多くの企業は、部品や関連製品の調達コストの合理化を常に検討しています。

取引先に対してコストを下げる圧力を強めるほか、調達先自体を多様化し、互いに競争させるような施策を取り始めています。

このような状況下においては、
「取引先が大手一社」
ということは、将来の安全を保障するものではなく、逆に、
「その大手に切られた場合、たちまち経営不安に陥る」
という意味で、きわめて危険な状況と評価できるのです。

下請けや系列の立場でありながら、生き残りを真剣に考えている企業は、このような変化を敏感に感じ取り、新たな仕入れ先を開拓したり、培った技術でまったく新しい製品を作る可能性を検討し始めています。

逆に、こういう状況下で
「取引先が大手だから安泰」
などと考える企業は、認識不足が甚だしいというほかなく、こういうおめでたい企業の将来は芳しいとはいえません。

運営管理コード:YVKSF164TO166

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01529_中小企業における情実の危険性

「古くからの取引先を大事にする」
のは結構ですが、この種の情実が保証や信用供与に及ぶと大変危険な徴候となって現れます。

中小企業の倒産原因で多いのは、連帯保証や過剰な信用供与によるものです。

一般に
「困ったときはお互いさま」
といわれます。

しかし、ビジネスでは、
「感情」

「勘定」
は峻別すべきであり、特に、
「かわいそうだから」
という理由で連帯保証をしたり、手形を使って連帯保証類似の行為をするのは絶対やってはいけないことです。

企業を経営していると、知人や友人から
「金を貸してくれ」
とか
「保証人になってくれ」
という依頼が舞い込むことがよくあります。

そして、そのような依頼に必ずついてくるのは、
「絶対迷惑をかけないから」
という言葉です。

しかし、冷静に考えると、事業をやっている会社に金を借りに来たり、保証人を依頼しに来たりする、というのは、銀行が見放したからであり、銀行が見放すのは、すでに相当程度銀行に迷惑をかけているからです。

人に迷惑を被らせている人間は、たいてい、迷惑を被らせることに鈍感になっています。

そして、そういう人間に限って、眉一つ動かさず
「絶対迷惑をかけないから」
というウソを平然といえるようになるのです。

いずれにせよ、こういう人間の話をまともに取り合うと、間違いなく身を滅ぼします。

助けを求めてきた知人や友人を見放すのはどうも気が引けるという場合には、見舞金を出して追い返すべきです。

ある経営者は、知人や友人が金の無心や保証の依頼に来た場合、
「大変だな。同情する。だが、申し訳ないが、これしかもっていない。見舞金として取っておいてくれ」
といって、状況に応じて10万円以内の適当な額を計算して、これを渡して帰ってもらうことにするそうです。

このくらいシビアでドライな考えをもてない経営者は、今のご時世、会社を経営する資格はない、といえるのではないでしょうか。

運営管理コード:YVKSF158TO161

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01528_生き残る企業は、常に変化する

環境が激変する時代においては、企業は、生き残りのための変革を行い、環境適応しなければなりません。

変革をして環境適応する際には、必ず、新しい事業を興し、新しい市場に参入し、新しい関係構築がついてまわります。

逆に考えますと、会社の取引相手が古くからの会社に固定化されており、長期間変わり映えしない、という状況は、新しい人間関係や商流が形成されていないことの裏返しといえます。

古くからの取引先と十年一日のごとき取引を繰り返しているという企業は、よほどのブランドやコアコンピタンス(絶対的差別化要因)でももっていない限り、生き残りが厳しいといえます。

運営管理コード:YVKSF157TO158

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01527_業界「協調」時代から、業界「競争」時代へ

国際政治における冷戦の終結と日本国内の社会の成熟化の動きを受けて、経済がインフレ・高度成長時代からデフレ・低成長時代へシフトするようになり、これまでの常識は通用しなくなりました。

すなわち、企業は、小さくなっていくパイの奪い合いをしなければ生き残れなくなりました。

護送船団行政や業界癒着構造の終焉の動きに併せて、低成長時代の到来、これによるパイの奪い合い、さらには構造的不況による業界間(内)競争や業界再編の動きが加わりました。

このようにして、日本の産業界は
業界「協調」時代
から、
業界「競争」時代
にシフトしていくことになったのです。

かつては
「健全な経済発展のためには必要なもの」
という論調まであった談合(談合の当事者は、「談合」という言葉を忌避し、「業界協調」という言葉を使いますが、言葉を変えたからといって違法性が払拭されるわけではありません)ですが、リーニエンシーという密告奨励制度まで整備され、カルテルや談合は、法的に徹底的に排除される時代になりました。

このような時代の変化により、企業は
「仁義や友情を欠いても、非情なまでに能率競争(品質と価格の競争)を徹底しないと生き残れない」
という状況に直面するようになりました。

このことは、
「古くからの友人関係をビジネスに優先させる会社は生き残れない」
ということを意味します。

運営管理コード:YVKSF154TO156

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01526_護送船団方式から規制緩和時代へ

昭和時代・平成時代初期においては、護送船団方式、すなわち
「行政機関は、許認可権限やこれに基づく行政指導などの権限(行政裁量権)を駆使して、業界全体をコントロールしていく」
という産業秩序が構築されていましたが、バブル経済崩壊後の1990年代後半ころから、状況が一変しはじめます。

1998年に、中央省庁等改革基本法が成立し、2001年を以てそれまでの1府22省庁は、1府12省庁に再編されることになりました。

加えて、このあたりから、規制緩和が推進され、
「護送船団行政」
やこれを支えてきた裁量行政は影をひそめ、行政機関の役割は厳格・適正な法の運用と執行に限定されるようになりました。

そして、規制緩和の流れと並行して、
「規制対応は企業の自己責任で行うべきもの」
とされ、かつ、
「規制違反行為に対しては厳しい事後制裁で臨む」
という運用が定着していくことになります。

さらに、これまでは日本の産業界において暗黙の了解事項として是認されてきたカルテルや談合についても、容赦ない摘発と、排除措置・課徴金・刑事罰・指名停止といった厳格な制裁が実施されるようになりました。

これにより、業界間の癒着自体が困難な状況となっていき、護送船団は完全に解体されたのです。

運営管理コード:YVKSF153TO154

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01525_昭和時代の企業経営陣のビジネスジャッジメントのあり方~上を見て、横を見て、後ろを振りかえる

かつての日本企業の推奨されるべき行動原理は、
「上を見て、横を見て、後ろを振りかえる」
というものでした。

「上を見る」
とは、
「お上、すなわち何事も監督官庁にお伺いを立て、その指導のもとに全て物事を決める」
という経営スタンスです。

また、
「横を見る」
とは、
「業界同士協調しながら、事業を進めていく」
というあり方です。

最後に、
「後ろを振りかえる」
とは、
「迷ったら、今までやってきたことを振り返り、先例を踏襲したり先輩の意見を聞きながら判断を行う」
というものです。

前述のように、日本においては、それほど遠くない昔、官庁主導で産業界の育成が図られていた時代が存在していたのです。

この時代においては、各業界において競争力がもっとも欠落した企業も維持・存続できるような業界育成が行政の最大のミッションと考えられていました。

行政機関は、許認可権限やこれに基づく行政指導などの権限(行政裁量権)を駆使して、業界全体をコントロールしていました。

この方式は、最も船足の遅い船に速度を合わせて、船団が統制を保って進行する戦術になぞらえ、
「護送船団方式」
などと評されていました。

この時代の産業界のキーワードは
「秩序ある発展」
であり、当該秩序は、法律や裁判を通じて明確に確立されるものではなく、行政による裁量や業界間の話し合いなどによって何とはなしに決まっていくものでした。

このような時代において、前述の
「上を見て、横を見て、後ろを振りかえる」
という経営スタイルは、護送船団戦略の実を上げるものとして多いに推奨されたのです。

運営管理コード:YVKSF150TO152

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01524_企業が法務やコンプライアンスを無視・軽視した場合のリスク

昭和ないし平成初期の護送船団行政の時代であれば、官庁主導による保護育成と業界協調体制による救済がありました。

法務だのコンプライアンスだの細かいことに目くじら立てなくても、慣行と業界の相場感に従い、それでもわからなければお上の指導に依存していれば安泰でした。

すなわち、かつては、管理や法務は無視して、営業だけをしていればよかったのです。

ですが、現在においては、どんどん小さくなってくパイを奪い合う状況となり、しかも
業界「協調」
ではなく
業界「競争」
こそが正義とされています。

こんな世知辛い時代においては、法令違反の不祥事でも起こそうものなら、
「これ幸い」
と同業者からよってたかって市場から叩き出されます。

また、中小企業においては、常に余裕がない状態での経営を行っていますから、ちょっとした危機であっても、これを乗り越えられる体力がありません。

余裕のない中小企業が、たとえば
「ビジネスは信頼だ。契約書など必要ない!」
などという法務やコンプライアンスを無視ないし軽視する形で経営し、その結果、これが原因で回収事故でも起こしてしまったら、たちまち破綻に追い込まれます。

このように、企業全体としての管理課題や、法務に関するコントロールをサボり、営業に特化・傾斜して暴走する企業は、今後の生き残りという点で、大きなリスクを抱えているといえるのです。

運営管理コード:YVKSF146TO148

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01523_一般的な日本の企業の法務への取組姿勢は、「営業重視・管理軽視・法務無視」

法令遵守が各企業毎に自己責任で行わなければならない時代となった現在、管理、なかんずく法務管理を適正に行わないと、今後も健全に生き残ることは不可能です。

実際、金融・証券業界は、いち早くこのような時代の流れに適合して管理強化、法務強化を完了しました。

金融庁も金融検査マニュアルを作り上げました。

このマニュアルを見ると、実質的に企業内部の法令管理の点検項目が全て洗い出されており、各業者側もこれに沿って適正な内部規律を行う体制整備が行えるようになっています。

しかしながら、企業の中には、今だに昭和の時代の感覚から抜けきれないところが少なくありません。

業界的には、製造業、なかんずく食品加工業界がこのような時代の変化を意識することなく、
「営業重視・管理軽視・法務無視」
というスタンスを取り続けていたような印象を持ちます。

その結果、2000年代に入ってから、食品加工業界においては、原材料の不当表示や賞味期限の偽装など、大規模な不祥事が頻発し、そのどれもが大きな社会問題に発展しました。

中小企業においては、コストがネックになるためか、
「営業重視・管理軽視・法務無視」
という経営スタイルを採らざるを得ないようです。

実際、大阪市立大学の調査結果(2005年に行われた大阪市立大学大学院法学研究科「企業法務研究プロジェクト」実施調査)によると、大阪府下の中小企業でアンケートを行ったところ、83%の企業(1838社中1530社)が顧問弁護士はいない、と回答しています。

無論、こういう企業は、法務部を作るお金もないでしょうし、結局、
「法務無視」
でひたすら前進するほかない、ということになるのでしょう。

運営管理コード:YVKSF144TO146

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所