01495_破産とは

自己破産を、民事再生との違いをいいますと、破産のメリットは、何といっても一切返済する必要がなくなるチャンスが生まれることです。

法人の破産の場合、そもそも法人格が消滅しますので、返済もヘッタクレもありませんが、個人の場合は、その後の人生の再生には非常に大きな意味と価値があります。

個人に関していいますと、民事再生の場合は
「再生計画」
というのがあり、終わったあともしばらくは払い続けなければなりませんが、自己破産で、免責決定を受けられると、キレイサッパリ債務がなくなり債権者と縁が切れます。

一般的なイメージでいいますと、
「破産宣告」
というセレモニーとは、誰かから怒られたり、非難されたり、罵倒されたり、文句をいわれたり、犯罪者の如く扱われる、というネガティブなイメージが持たれるかもしれません。

しかし、
「破産宣告」
の本来的な意味のは、
「目の前の破産申立人の方が現状の資産、収入、債務、支出を考えると、債務が到底払えない状態にありますね」
ということを、公的な第三者が確認して、この確認した内容を表明する。

それだけです。

単なる
「事実の確認と表明」
であり、何か非難されたり、叱られたり、文句や非難をされたり、という懲罰的要素は皆無です。

そもそも、なぜ、こんな
「ある経済主体の経済状況に関する事実の確認と表明」
という手続きが存在するのかというと、ある経済主体(人間であったり、企業であったり)の
「経済的な状態」
というのは、第三者には全くわからないからです(本人すらよくわかっていないケースもあります)。

すなわち、ある人が借金を負っていたり、ある会社が多額の負債を抱えていても、十分な収入があったり、資産があれば、問題なく、やっていけます。

他方で、一見すると豪邸に住んでいて、いい車に乗っていても、支出と収入のバランスが悪く、また現金資産がないので支払いができずに、来月の支払いがパンクして破綻する、という人もいたりします。

このように、ある人が経済的に健全な状態か、それとも破綻状態なのか、というのは一見して判別できるものではなく、また、本人が
「厳しい、厳しい!」「苦しい、苦しい!」
あるいは、
「好調、好調、絶好調!」
とアピールしても、実は逆の状況であったりする場合もあるのです。

ですから経済状態を確実に把握して明確化するには、公的機関の確認プロセスを経由しないと判断できない、ということがあるのです。

そこで
「『この申立人は、第三者による確認調査をしたところ、たしかに経済的に立ち行かなくなったので債権を弁済できない状態にある』
ということを、公的に確認して宣言するという、非難や懲罰の要素もない単純な事務手続きが、今後の処遇を検討する上で必要になるので、
『破産宣告』
という手続きを国家として整備した」
本当にこれだけの意味として、この一見しておどろおどろしい名称の手続きが存在するだけです。

ですから、破産宣告自体、非常に事務的な手続きとして行われますので、緊張する必要もビビる必要もありません。

破産というと、様々なネガティブで印象がつきまといがちですが、焼きゴテも、足につける鎖も、収容所での強制労働も、一切ありませんので、ご安心して差し支えありません。

このように、破産宣告自体は、事務的でドライな手続きであり、あまり意味がないのですが、個人の民事再生の場合、その後の
「免責」
には非常に大きな意義と価値があります。

破産宣告の後、次に破産申立人の負っている債務をチャラにするか、チャラにしないか、という
「徳政令発布」
の手続きが行われますが、これが
「免責」ないし「免責審尋」
といわれるものです。

債権者平等原則に違反して身内への依怙贔屓弁済をしていないか、
ギャンブルで作った借金はないか、
財産を隠すなどの不正行為していないか、
などのチェックをして、やましいことがなければ
「免責決定」
すなわち徳政令が出され、晴れて債権が全チャラとなって経済的再スタートが切れる、という仕組みです。

破産手続きが開始されると、基本的には残っているすべての財産は、裁判所が指定した第三者の管理下に置かれた上で、これらはすべて破産手続費用に使われ、さらに残りがあれば債権者に平等に配当されることになります。

この破産申立人の財産を管理する
「裁判所が指定した第三者」
を、
「財」産を「管」理する人、
すなわち破産管財人と呼ばれます。

これは、ほぼ例外なく弁護士(破産申立をする弁護士とは「別」の弁護士。 すなわち、管財手続きが発生する事件の場合、弁護士が最低2名関わることになる )が就任します。

もちろん、この破産管財人の弁護士の先生にも活動するためのギャランティが必要です。

このギャラを事前に用意しないと、破産手続きは進められません。

この管財人のギャラ(報酬金)のバンス(前払金)が
「予納金」
と呼ばれるもので、破産手続きの規模感によって定められるお金として、破産申立に際して納付が義務付けられるものです。

言葉はややこしく、
「予納金」
というと、後から返金があるように思われるかもしれませんが、いってみれば破産管財人弁護士先生の活動資金であり、全て、管財人の先生によってお召し上げになります。

そして破産者の財産は、破産管財人によって一旦財産プール(これを破産財団といいます)に入れられ、さらにお金以外の財産は、メルカリによる断捨離をするが如く、片っ端から換金処理されていき、最終的に財産プールにはお金しかない、という状態に持っていかれることになります。

とはいえタンスや服、冷蔵庫やテレビといった生活家財等は、そのまま持っていて差し支えありません。

この種の生活家財は、管財人弁護士からみれば
「ただのゴミ」
であり、換金の手間の方がかかるからです。

10年近く乗り回した車であっても
「ゴミ」
になる可能性があるので、管財人によって財産管理されたからといって、生活にはほとんど影響ありません。

加えて、この財産プールに貯められたお金のほとんどは、債権者に分配されるはるか手前で、弁護士の追加ギャラ(管財人報酬)として召し上げられます。

こういうこともあり、破産管財人の報酬を払っても、そこから先は不足があって、到底債権者に分配できない、というときは、
「もうやっても意味がない。破産管財人の活動費用考えたら無駄。よって破産手続きを廃止します」
という宣言(破産廃止決定)が行われ、そこで強制終了です。

財産が残っていればいろいろと分配の手間暇が発生するのですが、財産が無ければ何も手続きはないので途中強制終了というわけです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01494_民事再生とは

民事再生と破産をまとめて
「法的整理」
といいます。

「『任意』整理」
と対語になる、という意味で、
「『法的』整理」
という言葉が出てきます。

法的整理は、要するに、裁判所という国家権力を使って、
「借りたものは、約束通り、きっちり返す」
という契約法理を捻じ曲げて、有無を言わせず、債権を大幅カットする、という
「鎌倉時代等の徳政令」
に似た、強権手段を意味します。

特定調停も、裁判所を舞台にし、裁判官が出てきますが、あくまで、仲介役というか、お節介役であり、
「契約に基づき発生し、法的に有効に存在している債権を、債権者に意向を無視してぶっ飛ばす」
という過激かつ強権的な手段は使えません。

特定調停が出来るのは 「債権をカットされればどうでしょうか?」
という提案であり、お節介だけです。

その意味で、特定調停は、任意整理のプレミアム版、という位置づけです。

この、法的整理ですが、大きな括りでいうと、民事再生と自己破産があります。

ざっくり申し上げると、
「民事再生は債権の一部カット(一部チャラ)」
「自己破産は全額カット(全額チャラ)」
という、
「徳政令の過激さの度合いによる区分」
といえます。

法人の場合は破産によって法人格は消滅し文字通り成仏ないしお陀仏となってしまいますが、個人の場合、自己破産でも、再生出来ないわけではありません。

すなわち、個人の場合、自己破産、すなわち、経済的なお葬式を挙げたあと、キリストの復活ではありませんが、復活の儀式がきちんと用意されているるのです。

これは、
「免責」
と言われるもので、破産によって確定した破産債権を、全額チャラにして、これから、再スタートを切ってがんばれ、という再生手続きがきちんと用意されています。

ですので、個人の場合でみれば、民事再生も、自己破産も、いずれも、
「支払いができなくなった債務者を、国家権力が介入して、借金を一部または全部チャラにして、借金の無間地獄から救済する」
という点では趣旨を同じくするものです。

個人の民事再生については、いろいろな特殊パターンが存在します。

例えば、個人の民事再生事件で、5000万円以下の担保がない債権がある場合、原則3年間で返済する
「再生計画案」
を作成して許可されたら、借金がなくなります。

「3000万円のうち2000万円をカットするので、年間330万円を3年間返済して、残りはチャラ」
というイメージです。

また個人の民事再生事件で、再生債務者が
「マイホームを残したい」
という意思が特に強い場合、
「マイホームの清算価格分だけ支払い、残りはチャラにして、助けてよ」
という柔軟な交渉も可能です。

例えば、マンションを5000万円で買ったけれども、ある程度ローンを支払い、今はローン残額が1200万円だったとしましょう。
この場合、
「マンションのローン残1200万円についてはきっちり返すので、家だけは手元に残すことにして。その他のローンは、チャラにして、助けて」
という要望が通る可能性がある、というわけです。

したがって、個人の民事再生事件については、
1 マイホームなど、どうしても残したい生活基盤を別枠にして、借金チャラの交渉をしたい場合、
2 言葉の問題として、「民事再生」という響きであれば我慢できるが、「破産」というおどろおどろしいレッテルを貼られるのはどうしても避けたいというセンチメントをお持ちの場合、
破産ではなく、民事再生が検討されるべきことになります。

逆にいうと、個人の民事再生事件について
「家は賃貸でいいし、車も必要ない。今の生活家財だけで十分」
だし、
「破産だろうが民事再生だろうが、言葉は違うが、まあ、同じようなもんだし、同じように裁判所にお世話になるんだったら、綺麗さっぱり全額チャラにしてもらって、すっきり再スタートを切りたい」
ということであれば、民事再生より、むしろ破産を選ぶことになります。

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01493_「裁判所の『威』を借りる狐作戦」で債務問題解決を志向する「特定調停」とは

任意整理は法律には載っていないので、場所はホテルのロビーでも銀行でも弁護士会の会議室でも構いません。

話の折り合いがつけば、電話でも大丈夫です。

ただ、やはり交渉ごとなので、お互い立場を譲らず、話をぶつけうだけでうまくまとまらない場合もありえます。

そんなときは、仲介役がいたり、それなりの舞台装置があったりしたほうがうまく運ぶかもしれません。

そんなときに役に立つのが
「特定調停」
です。

任意整理と特定調停の違いは、簡単にいうと
「仲介役と場所」
です。

特定調停は簡易裁判所で、裁判官と調停委員という
「民間のお節介役(落語に出てくるご隠居さんのような感じの世話焼きの人)」
もまじえて(実際は、裁判官は滅多に調停の場に出てきませんが)行います。

特定調停は、いわば、任意整理のアップグレード版、すなわち、
「裁判所の『威』を借りる狐作戦」
のような形で、裁判所を味方につけて、無理なお願いを通して窮地を脱する方法です。

以前、任意整理から特定調停に発展したケースがありました。

はじめは銀行を相手の任意整理ではじまり、銀行側も強硬な姿勢で、無理な提案ばかりしてきて暗礁に乗り上げました。

強硬な対応に債務者側は困ってしまい、簡易裁判所に
「特定調停」
を持ち込みました。

すると、銀行員の態度は一変しました。

また、特定調停中であっても、債権者は取り立てや差し押さえが可能です。

もしそれを避けたいのなら、特定調停の中で
「執行停止の申し立て」
をしなければなりません(ただこれには担保が必要なので、あまり使われることがありません)。

とはいえ、仮にも裁判所を仲介役として真摯に話し合いをしているところで、差押といった強硬な手段を行うと、裁判所から睨まれかねないので、執行停止の申立をしなくても、差押リスクは事実上とはいえ低減されることが期待されます。

ここで、任意整理リスケの違いについてもおさらいします。

まず、リスケは、あくまで、経済的に健全な債務者による、正常な取引プロセス、すなわちビジネスマターにおけるネゴ、と考えられます。

ここでは、取引自由の原則、すなわち、誰と、どのような条件で、どのような取引をするも、当事者間の自由、と考えられますので、
「あれやっちゃいけない」
「これやっちゃいけない」
といった法の介入を考える必要は少ないといえます。

結果、借入金融機関や債権者が複数以上いるような債務者がリスケを行う場合、金融機関ごとや債権者ごとに返済条件が変わって不平等感が出る可能性があります。

とはいえ、
「経済的に健全な債務者による、正常な取引プロセス」
であり、最終的に、すべて債務が返済できる、という期待が働きますので、不平等感があったとしても、
「約束どおり返済されたのだから文句ないでしょ」
という形で、法的に問題は生じにくいのです。

ところが、債務の減免を伴う任意整理段階に至ると、これは、もはや、
「経済的に健全な債務者による、正常な取引プロセス、すなわちビジネスマターにおけるネゴ」
ではなく、
「約束どおり行動していては経済的に破綻しかねない、破綻者ないし破綻者予備軍の、約束を捻じ曲げての例外処理」
となり、リーガルマターと判断されます。

リーガルマターとなった場合、破綻処理ないし破綻者予備軍のための解決において、絶対的なルールとして、頭をもたげてくる原則があります。

これは、債権者平等の原則、といわれるものであり、債権者の誰かしらに迷惑を欠ける以上、
「依怙贔屓」
や、
「早いもの勝ち」
「強いもの勝ち」
など、同じ立場の債権者の間において不平等の扱いはご法度、というルールです。

ここで、
「同じ立場の債権者」
というのは、
「一定の含みのある言い方」
で、例えば、
「銀行は不動産に抵当権をくっつけているが、最後に貸し込んだ取引先や知人やノンバンクにはそういう抵当権設定はしていない」
という場合、銀行は、債権者平等の原則にかかわらず、他の債権者を押しのけて、悠々と、不動産を競売にかけて、競売代金を独占して自己の債権に充足して弁済できます。

このような債権者平等の原則があるため、債務者が勝手に、依怙贔屓をして、
「取引先や知人の借金は優先して全額返すが、後の債権者は5割カット」
といった悪さをしないよう、窓口を一本化して条件を平等にする必要があり、このため、任意整理については、弁護士が窓口を管理して、全体を制御することが必要となるのです。

この点でいえば、特定調停では、最終的な話し合いの決着について守るべき絶対的ルールが明確に存在するわけではありませんが、特定調停を使ったリスケであれば格別、債権者に減免をお願いするような任意整理の趣旨を含めた処理の場合、債権者平等の原則を守るため、弁護士や法律のプロが介入し、偏頗弁済(ある特定の債権者にだけ返済する行為)にならないよう注意をしながら進める必要があります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01492_「ちょいマケてよ」と値切って債務問題の解決を志向する任意整理とは

任意整理は
「債務の減免」
を狙う場合や担保不動産処理を行う際に取られる手段です。

任意整理には、元本が減る、利息が減るなどさまざまなメニューがあります。

リスケとの違いは、時間をいじる(返済額は変わらないが、返済期間だけ先延ばしする)だけでなく、額や担保等をいじらないとどうしょうもない場合、任意整理が検討されます。

平たくいいますと、
リスケが
「ちょいタンマ(Time out=待って)」
という時間猶予を求めるリクエスト
であるのに対して、
任意整理は
「ちょいマケてよ」
という、値切りを言い出すリクエスト
である。

そんなイメージです。

リスケはビジネスマターになりますが、任意整理はリーガルマターになります(ただし、必ず弁護士が介在する、というわけではありません)。

普通、最初に契約したとおりの約定金利を払えなくなると、遅延損害金という非常に高額な利息が発生し、これがものすごい勢いで増えていくことになります。

しかし、任意整理の場合、そこをなんとか落ち着けるという方向での回収プランを練ります。

稀なケースではありますが、スポンサーが借金の一部を支払うから、残債免除ということもあります。

つまり、
「返済できなくなったのなら仕方がない」
という現実的な前提をもとに、今できる範囲で最良の着地点を見出すことを任意整理というのです。

「任意整理法」
という法律があるわけではなく
「和解」
すなわち、妥協と互譲による話し合いのひとつです。

法律上の和解とは、お互い条件を譲歩して合意をするということです。

任意整理は、債務者側の弁護士から金融機関への打診になります。

「民事再生や破産などになってしまうと、銀行の取り分がなくなりますので、お互い痛み分けでいかがでしょうか」
というイメージです。

銀行から提案してくることは、まずありません。

銀行からすると、任意整理は自分たちが持っている債権を放棄することになるので、それを口にするということは
「会社の大事な商品を、自己判断で、廃棄する」
と同じになってしまうからです。

ただ、銀行はなかなか任意整理に応じてくれません。

なぜかというと、例えば
「お金がないから」
といわれても、本当にお金がないのか確認できないからです。

極端な話、庭に穴を掘って金塊を隠しているかもしれません。

債務者にいわれるがまま任意整理していたら、モラルハザードになってしまいます。

ですから、特定調停や再生、破産などの手続きによらずに強引に応じるだけの複雑な事情がなければ、易々と任意整理をしてくれません。

ただし、サービサー(委託ではなく買い取ったもの)の場合は例外的です。

例えば、会社と個人連帯保証人付きのバブル期の不良債権(10億円)あったとします。

それを中小企業の経営者が返せなくなりました。

ただ、銀行のバランスシートに乗っていると、いつまでたっても自己資本比率が改善しないので、銀行経営の足を引っ張ることになってしまいます。

そのとき10億円の債権をサービサーが買うのです。

銀行からすると、すでに引き当てが済んでいるので、10億円の債権は経済実態では安く売り払っても問題ない、という立て付けとなります。

そこで、名実ともに債権の本来の所有先もサービサーに変えるということです。

このとき債権を買い取る金額が、元本が数億円単位の債権が、50万円、100万円とかいう投げ売り価格で取引される世界なのです。

これを称して、業界では
「ポンカス債権(ポンコツで、カスの債権)」
などと呼んだりします。

もともと値段がつかないので1円でもいいわけですし、銀行としては放置しておくと毎期資産勘定になってしまい、会計士の手間とコストがかかるので早く持っていってほしいわけです。

そういう意味では、銀行内部に貯めておくと管理の手間がかかるような、お荷物なわけですから、50万円、100万円でも高いといえるでしょう。

サービサーからのアプローチは最初、サービサーが債権譲渡通知を送付し、また、
「今後は、銀行ではなく、当社(サービサー)が債権者なので、当社に返済してください」
という督促状を出してきます。

ちなみに、お金がないので、督促されても払えないので、そのままにしておき、とうとう5年超経った、という例がありましたが、これは、事業用の債権ということもあり、5年の時効が完成し、チャラになる、とう結末となったそうです。

サービサーに
「こんな額、払えない。絶対無理です」
と、相変わらず
手元不如意の抗弁
で対抗すると、今度は、サービサーから
「いくらなら払えますか?」
という返しが出てくることもあります。

そのとき、
「10億円のうち1000万円なら」
などといわれたら、サービサーとしては900万円の儲けになります。

ですので、そういうときは
「10億円ということで、あんまり失礼なこといってもあれですから、でも1万円とか無理ですよね。本当にお金がないんですよ。いくらなら、いいんですか。ほんとカツカツです」
などといいながら、相手から条件を出させる方向で打診してみるのがポイントです。

明確な着地点が決まっていない交渉では、先に条件を言ったほうが損ですから

任意整理では、
「全額支払うのは難しい。でも、お金持ちの取引先にスポンサーになってもらってちょっと援助してもらえる」
などというと、銀行はとても喜びます。

スポンサーは、無理して正常弁済をするために登場してもらうのではなく、手元不如意の後、トラブって、任意整理になって、銀行がギブアップしはじめた、というタイミングで登場してもらうのがベストです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01491_「ちょいタンマ(Time out=待って)」と時間猶予を求めて債務問題を志向する「債務のリスケジュール(リスケ)」とは

リスケジュール(リスケ)は、
「借金の返済のタイミングや返済計画そのものを見直す」
という方法です。

リスケとは、いわば、
「ちょいタンマ(Time out=待って)」
といった趣きで時間猶予を求めるリクエストです。

なぜこんなことができるのかというと、銀行は破産されるくらいだったら無理のない計画に引き直して返済してもらったほうがダメージは軽く済むからです。

リスケは、本人が相談できる場合もありますし、銀行から提案されることもあります。

もちろん弁護士が指導して行うケースもあります。

いずれにせよ、リスケは交渉であり、下手に回ってしまうと良い結果は出せません。

リスケとは支払い時期を延ばすことですから、その分の金利も銀行側は取れるわけです。

銀行側にとっても悪い話ではないので、堂々と臨むことが大切です。

こちらが強気でいったとしても、銀行側から恐ろしい返答がくるわけではありません。

ですから、むしろ
「なんとかしてくださいよ」
「条件を緩くしてくれないなら、こちらも考えがありますよ」
くらいのカジュアルでイージーな気持ちで、ダメ元でいってみる、という感じでプロポーズしてみる、という考え方で差し支えないとも考えられます。

とはいえ、返済しきれないほどの多額の債務を抱えた債務者の場合、いわば、末期の癌の治療と同じです。

「根治する」
わけでも
「寛解」
するわけでもありません。

末期の癌と同様、返済しきれないほどの多額の債務は、改善したりするものではありませんから。

「返済しきれないほどの多額の債務のリスケ」
は、
「『末期の癌の治療』と称する営み」
と同様、
「治療」
という名の
「実質的・実体的にはただの延命措置」
をとっているだけです(癌の延命にも、多額の債務者の時間稼ぎにも相応に意味と価値があることは否定しません)。

リスケの際は、無理なく、調整された新しい返済計画を現実的に履行できるかがポイントです。

より正確にいうと、返済原資、すなわち
「無理なく、持続可能な形で続けられる、通常の事業経営から生じる余剰資金」
で長期間、将来にわたって返済していく、ということが続けられるかどうかが焦点になります。

なお、リスケは銀行から提案をされた場合でも普通に断ることができます。

「無理です」
と答えれば、銀行として、ソフトランディングを前提とする限り、大人しく引き下がり、譲歩を考えるほかありません。

このように銀行が弱腰にならざるを得ないのは、お金がない債務者、すなわち、
「『最強・最凶の抗弁である手許不如意の抗弁』をもって支払を停止してくる債務者」
に対しては、債権者が凄腕の弁護士を何人揃えても歯が立たないからです。

したがって、お金がない債務者相手の債権回収は、
「相手の任意の弁済にすがるほかない」
というほかなく、債務者が圧倒的に有利な立場で
「借金問題解決ゲーム」
を支配する、という形で革命的にルールが変わるからです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01490_法律実務の世界における「最強・最凶の抗弁」としての「手元不如意の抗弁」

借金は
「必ず返さなければいけない」
ものなのでしょうか?

この点、債務者側に立って、債務者側の弁護活動として、事件の構築を考えてみたいと思います。

ローン返済や貸金返済ができず悩んでいる大半の債務者は、多額のローン返済を抱えて月々の支払いが負担なとき、
「払わなければならない。だけど、今後は払えそうにない。万一の場合どうなってしまうのか……」
と不安に思うものです。

今のところ毎月のローンは、貯金や給与や賞与のやりくりで何とか返済できていても、このまま続けば別のところから借金して対応しなければならず、そうなると金銭的な負担が重くのしかかり地獄に落ちそう……そんな状況です。

しかし、そもそも
「生活を犠牲にして、あるいは別のところから借金をしてまで対応すべきなのか?」
という前提を疑う必要があります。

多くの方は、子供の頃から
「借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラル」
という教育を受けてきたと思います。

しかし、債務者から返済地獄を上手に助け出すためには、その
「モラル」という名の「偏見」や「思い込み」
を疑うことから始めなければなりません。

借金というのは生活を切り詰めたり、消費者金融から借りたり、家族や友人に頼るなど“無理”をしてまで支払う必要はありません。

無理をすること自体が間違っているのです。

不動産ローンを抱えた債務者(いわゆる「サラリーマン大家さん」など)で返済に苦しんでいる人などにとっては、返済不能状態に陥りつつある不動産ローンは、日本がものすごいインフレに見舞われ、不動産価格が大幅に上昇して大金持ち(といっても重篤なインフレとなると貨幣価値自体がないので、貨幣を持っていてもあまり意味がないのですが)になったとしても、全額返すのは難しいかもしれません。

お金を借りるときに
「支払える」
と判断しても、実際に払える状況になければ、逆立ちをしても、現実的にお金は返せません。

返せる可能性はほぼないのに金策に走り、友人や家族まで
「必ず返すから!」
とお金を無心するのは、友人や家族に嘘をついて騙すことになります。

そうなると家族の仲が引き裂かれ、友人も失い、取り返しがつかなくなります。

実に多くの方は、そこまでして借金を返すために頑張ってしまいます。

しかし、借金問題を解決する弁護士の常識からすれば、
「“(到底返せない)借金であっても、無理をして周囲に迷惑をかけてまで返さなければならない”というのは誤った固定観念であり、捨て去るべき偏見です」
ということになります。

昔から
「手元不如意」
という便利な言葉がありますが、これは
「家計が苦しくお金がない」
という意味なのです。

「生憎、手元不如意でな、払えぬものは払えぬ」
「不如意で支払いもままならぬ」
というセリフをテレビの時代劇で視たことがある方もいらっしゃると思いますが、これは
「借りたお金を返したいのは山々だが、お金がないので返せない」
という、なんとも志の低い、卑劣で、下劣で、呆れ返るしかない、開き直りの言い草です。

このように
「払いたいが、カネがないので払えない」
という弁済拒否理由を
「手元不如意の抗弁」
といい、法曹界という業界に限定すれば非常にメジャーな言葉です。

この抗弁ですが、法律実務においては
「最強・最凶の抗弁(支払請求に対抗するための拒否理由)」
といわれています。

この
「手元不如意」
が債務者から主張され始めると、どんなに恐ろしい暴力団や、どれほど優秀な弁護士であっても、手も足も出なくなります。

なぜなら、いかに強硬な債権者や優秀な弁護士でも、法律実務上では
「ないところからは取れない」
という、過酷な現実には立ち向かう術がないからです。

ちなみに、
「今から手元不如意の抗弁出します」
と宣言する必要はありません。

何もしないで大丈夫です。

放置です。

無視です。

ほったらかしです。

もちろん借金を返済せず、あるいは返済用の引き落とし口座に十分な資金がないまま入金もせず、ほったらかしにしていたら銀行は慌てますし、ほっといてはくれません。

この場合、銀行から
「どうされました?」
と聞かれます。

それでも、知らないフリをすればいいわけです。

といいますか、知らないフリしかできません。

なぜなら手元不如意だから。

話してもどうしょうもありません。

「話してもどうしようもないからといって、電話にも出ず、ガン無視する」
のは、たしかに
「人としてのモラル」
には反しますが、法に反することは考えられません。

将来、
「債権者無視罪」
とかが刑法典に加えられれば別ですが。

無視に、無視に、さらに無視をし続けて、しばらくすると、何度か銀行から
「どうされました?」
と聞いてきます。

とはいっても
「払えませんが何か?」
と答えるしかありません。

このようなやりとりが続くと、ようやく銀行の方で
「こいつ、手元不如意の抗弁で支払いを止めてきやがったな」
と認識するわけです。

これが、実務上の
「手元不如意の抗弁による支払停止方法」
なのです。

次に、ローンを提供した銀行等の債権者側からこの事態を観察してみましょう。

「訴訟」
にも
「コスパ」
という考え方があります。

例えば、皆さんが1億円を貸していた知人が、落ちぶれてホームレスになったとします。

この場合、どうされますか?

裁判を起こしますか?

訴訟を提起すると、弁護士費用に、裁判所に納める印紙代(裁判所利用料)、その他もろもろ、100万円はかかるかもしれません。

もちろん相手は争いません。

貸付は事実ですし、返済していないのも事実です。

争わない以上に、そもそも裁判にすら出頭しないかもしれません。

当然、欠席したことで、事実を争わず自白が成立したことになり、当該自白に基づき、1億円プラス延滞金利の支払いを命じる勝訴判決(欠席判決)が手に入ります。

でも、相手はホームレスです。

差押をしようにも、差押さえる財産そのものがありませんし、さらに十数万円の費用をかけて強制執行に赴いても、居住用資材として使っているダンボールとか、賞味期限切れのカップラーメンなど、処分するのに却って費用方がかかる廃棄物しかありませんので、強制執行は不能です。

とすると、
「期待値ゼロ円」
のプロジェクトに、100万円超を投じたことになります。

弁護士費用に加え、銀行内部の資源動員として費消した時間や労力、さらには機会損失等を考えると、サンクコスト(埋没費用)は、数百万円に上るかもしれません。

このように、訴訟といっても、
「コスパ」
を考えないと、さらなる大損をする危険性があるのです。

これが、
「お金がない人を取り立てても意味がない」
ということであり、
「手元不如意が債権回収実務において最強・最凶の抗弁」
と言われる理由でもあるのです。

「借りたものは必ず返さなければならない。それが最低限のモラル」
という固定観念(プロの債務整理弁護士からすると誤解ないし偏見)に支配され、生活を破壊せんばかりに無理し、別のところから借金をし、家族や知人に迷惑をかけてまで自主的に返済してくれる真面目で義理堅い人は、銀行からするとありがたい存在ではあります。

しかしながら、
・「手元不如意の抗弁を武器にしぶとく、したたかに対応していき、銀行と戦ってでも生き残りと再生を考えて死地や窮地を脱する」という行動の価値と有用性を深く知り、
・そのためにこそ味方になってくれる弁護士を見つけ出し、常識やモラルや固定観念ではなく、法律知識や「手元不如意の抗弁」や「訴訟のコスパ」といった、業界内の特殊なゲームルールを武器に生き残り策を考える、
といった
「クレバーな債務者」
に遭遇すると、銀行はひとたまりもありません。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01489_法的トラブルに遭遇したとき、「ネットで弁護士の書いた情報を探しても、事件がうまく解決できない現象」のメカニズム

法的トラブルに遭遇し、行き詰ってくると、ほぼ全員といっていいほど認知能力が下がり、正しい思考ができなくなるようです。

「不安やストレス、焦り、緊張、パニックは、人を愚かにする」
ということは、経験上ご理解いただけると思います。

「ヤバい! これは、訴訟が起こされ、大変なことになりそうだ……」
という危機感を抱いた時点で、大半の人がすることはインターネットの情報収集です。

このとき、インターネット記事の中で、根拠があって信憑性が高そうなものを選んでいくと、自然と弁護士の先生が書かれたサイトに行き着くことになると思います。

しかし、高等教育を受けた人であっても、ネット上の記事を読んでも、弁護士の方々が
「何をいっているのかさっぱりわからない!」
という現象に陥ります。

弁護士の先生方は会話の水準を下げたり、話の目線を下げるスキルが不足しています。

また、間違った説明を書いてしまうことを恐れるあまり、自然と記事の中は、専門用語だらけとなります。

「正しい説明」=「親切でわかりやすい説明」
とは限りません。

「法律的に正確無比な説明」=「腹が立つくらいわかりにくく、何を言っているのかさっぱりわからず、まるで役にたたないクズ情報」
という公式が成り立つ関係に立つ、といえます。

その結果、一般の人(しかも精神的に追い込まれている)にとっては理解が難しい……いえ、端的にいうと
「言葉もわからない、話も見えない、いったい何を言いたいのか意図も不明な暗号文」
のような代物になってしまいがちです。

法的トラブルに遭遇し、危機感を抱き救済を求めて、ネットを何時間も彷徨(さまよ)っても、そこに出てくるのは古文か漢文、英語かドイツ語のような、僅かな手がかりはあるものの、読んでもさっぱり理解できない呪文か暗号文でしかない、という状況に直面する。

これが
「法的対処でしくじりそうになって、ヤバいトラブルに陥った一般的な方々」
の一般的状況です。

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01488_非欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>中国における知的財産問題

1 中国における知的財産権侵害状況

中国では、
「コピー天国」
といわれるほど海賊版が横行し、著作権侵害や商標権侵害等が多発しています。

2001年の世界貿易機関(WTO)加盟・知的財産権に関するTRIPS協定が適用されたことに伴い、中国でも知的財産権保護に関する国内法の整備が進められましたが、状況はなかなか改善されません。

これは、問題の背景に、

・一般市民には正規品の値段は高すぎるので、安い模造品が好まれる
・「物を盗るのは悪いが、作り方を真似することは盗みとは違い、許されることだ」という考え方が中国社会に根ざしているから

等といわれています。

被害国は、日本、アメリカ、 ドイツ、フランス、イタリアなどの多くの国に及んでいます。

このような現状から、米国通商代表部(USTR)は、知的財産権侵害に関して、中国をスペシャル301条(米国通商法における知的財産権侵害国に対する対外制裁規定)の優先監視国に指定しています。

2 日本の著名商標の無断登録

日本企業が被害を受けるケースも多く、従前から、著名ブランドのコピー商品やドラマやアニメの海賊版DVDの製造販売といった被害を受けています。

最近では、以上のような単純な模倣被害から、
「日本の著名標章が中国内で無断商標登録される」
といった知的財産権法を巧妙に利用した事件も発生しています。

この対応策に関しては、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所知的財産権部が
中国商標権冒認出願対策マニュアル
を作成しており、このようなものを参照しながら対策を取っていくことになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01487_非欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>中国における労働関連法令

中国においては、労働者としての権利意識が強まりつつあり、これに並行して、労働関連法規の整備が急速に進んでいます。

具体的には、従来から存在していた
「労働法」(1995年1月1日施行)
が労働者保護という点で不十分であったとして、労働契約の詳細を規制した
「労働契約法」
が制定され、2008年1月1日から施行されています。

「労働契約法」
では、労働契約の長期化と安定化を狙って、労働契約解除の場合のみならず、労働契約が期間の満了を理由に終了する場合も、使用者は原則として、経済補償金を支払わなければならないと定められています。

経済補償金は、原則として労働者の勤続年数満1年につきその1ヶ月分の賃金に相当する金額とされ、また、労働契約終了後に使用者が労働者に競業避止義務を課す場合には、競業避止義務が課される期間中(最長2年間)、毎月、経済補償金を支払わなければならないとも定められています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

また、2008年9月18日には、さらに労働者保護を強化した実務上の運用方針である
「労働契約法実施条例」
が施行されています。

以上のとおり、従前は
「安い労働力を提供できる世界の工場」
であった中国ですが、労働者保護が強化され、これに伴い賃金が上昇していくことになると思われます。

「労賃が安いから」
という安易な理由だけで中国進出を検討している日本企業は、以上のような現実をふまえて戦略を再構築する必要があるといえます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01486_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>二国間協定(他国間協定)を利用する仲裁方法・第三国を利用する方法

1 仲裁に関する二国間協定(他国間協定)を利用する方法

仲裁判断を執行する国・地域がニューヨーク条約の加盟国ではない場合でも、仲裁判断を行った国・地域(「A国」とします)と仲裁判断を執行する国・地域(「B国」とします)が、個別に締結している
「仲裁判断の承認に関する三国間の協定」
又は、多国間協定などを利用することで、仲裁判断に基づいた執行を行うことが可能となります。

後者の例として、アラブ連盟に加盟する国・地域が締結している
「司法協力に関するアラブ条約」
が挙げられます。

2 第三国を利用する方法

第三国(「C国」とします)を通じて、A国で行った仲裁判断に基づきB国にて執行を行う方法です。

(1)B国がニューヨーク条約に加盟していない場合

A国及びC国がニューヨーク条約に加盟している場合で、B国とC国が個別に
「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」
を締結している場合には、
ア まず、ニューヨーク条約に基づき、C国の裁判所に対し、「A国で行った仲裁判断」の承認を求め、
イ 次に、上記C国の裁判所が行った「A国で行った仲裁判断の承認」をふまえて、C国とB国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、B国にて執行する、
といった方法が考えられます。

(2)A国がニューヨーク条約に加盟していない場合

A国とC国が個別に「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」を締結している場合で、B国とC国が個別に
「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」
を締結している場合には、
ア まず、C国の裁判所に対し、A国とC国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、「A国で行った仲裁判断」の承認を求め、
イ 次に、上記C国の裁判所が行った「A国で行った仲裁判断の承認」をふまえて、C国とB国間の「仲裁判断の承認に関する二国間の協定」に基づき、B国にて執行する、
といった方法が考えられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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