01485_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>「仲裁条約非加盟国の企業」を相手とする仲裁手続

外国仲裁判断の承認及び執行に関する国連条約(いわゆる「ニューヨーク条約」)に加盟している国で行われた仲裁判断については、いずれの加盟国でも当該判断は、当然に承認し執行されます。

しかしながら、ニューヨーク条約に加盟していない国(リビア、ミャンマー、モルディブなどの非欧米諸国)の企業や法人を相手に仲裁を行う場合、苦労して仲裁判断を得ても、当然には執行できず、現地にて再度訴訟を提起するなど
「仕切り直し」
が必要となってしまいます。

「仕切り直し」
訴訟についても、ニューヨーク条約非加盟国においては、法制度や裁判制度の整備が未熟なところも多くあり、結局、
「泣き寝入り」
となってしまう結果になる可能性が少なくありません。

次のようなニューヨーク条約非加盟国・地域の企業や法人との間で仲裁を行う場合、特別な方法を構築する必要があります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01484_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>仲裁手続の活用

非欧米圏の企業や法人と取引する場合、現地の裁判制度が信頼できないケースがあるため、紛争解決手段として、現地裁判所による裁判を忌避し、仲裁手続を活用することが好まれます。

仲裁手続では、自ら仲裁人を選ぶことも可能ですし、仲裁判断は最終的なものとして扱われますし(仲裁においては上訴手続がない)、非公開であることから企業秘密や事件プライバシーを保持することもでき、さらには、海外でも比較的迅速に仲裁判断に基づく強制執行が行えるからです。

ここで、非欧米各国の仲裁手続の状況を概説しておきます。

1 中国

中国の裁判所(人民法院)は自国民保護の偏向傾向があるといわれており、中国企業との間で紛争が生じた場合、外国企業に対し不利な判断を行う危険性があります。

中国もWTO加盟とともに外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)に加盟することになりましたので、中国の企業・法人と取引する際は、契約上仲裁条項を定めておき、契約紛争が生じた場合には仲裁手続による紛争解決をすることが適切と思われます。

中国国際経済貿易仲裁委員会が北京、上海、深圳等にあり、中国企業と外国企業との間の紛争のほとんどは、これらの地域で仲裁に付されています。

また、中国では、合弁会社の解散は、法律上、中国側の同意が必要とされていますが、仲裁判断をもって解散が認められた場合には、当該法律にかかわらず解散が認められており、ジョイントベンチャー契約において、デッドロック解消手段とともに、仲裁による解決を定めておくメリットは極めて大きいといえます。

2 シンガポール

シンガポールの仲裁機関としては、シンガポール政府機関である貿易発展局と経済開発庁の協力により設立されたシンガポール国際仲裁センターがあります。

旧宗主国であった英国の進んだ弁護士文化があることから、国際取引に豊富な知見を有する有能な仲裁人候補を多数抱えており、スムーズな仲裁が期待できます。

3 香港

香港における仲裁ですが、1985年に設立された非営利の公益法人香港国際仲裁センターが仲裁解決を担っています。

同センターは、アジア地域の国際商事紛争解決の中心となることを日指し、紛争解決インフラの整備に努めるとともに、
「事案誘致」
にも積極的です。

同センターの事案処理実績ですが、2004年の国際仲裁申立件数が280件、2009年では309件、2011年には502件と、その申立件数は確実に増加傾向にあります。

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01483_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>相手先を訴える際の弁護士の選定

非欧米圏の企業や法人との契約が反故にされ、協議も整わない場合、日本企業サイドとしては、裁判や仲裁に訴えて被害を回復していくことになります。

ここで問題になるのは、どのように弁護士を探すか、です。

現地企業と取引を行う際に現地企業に同行する弁護士は、相手方の利害を代理する立場にありますので、当該弁護士を起用するわけにはいきませんし、当該弁護士に紹介を依頼することもできません。

ジョイントベンチャー会社の会計・税務面をサポートする税理士や監査法人も当然ながら、今や敵となった現地パートナー企業の
「息がかかった」者
ですので、彼らに紹介を依頼することも不適切です。

結局、取引先ないしジョイントベンチャーのパートナーである現地企業を訴えるには、独力で弁護士を探すことになります。

大使館や、現地に進出している商社、あるいは現地の弁護士会組織等に英語を解する現地弁護士の紹介を依頼することになります。

そもそも、有事に至ってから弁護士を探すとなると訴訟提起が遅れることになりますし、新しく起用することとなった弁護士にこれまでの取引の経過やジョイントベンチャーの内容等をレクチャーするための時間を要することも考えると、有事対応アクションがますます遅延していきます。

したがって、現地に進出することを決定した時点において、現地パートナーと利害関係から独立した弁護士を探して顧間として起用しておき、取引経過やジョイントベンチャーの状況を伝えて情報共有の上、万が一現地パートナーが契約違反をした場合、スピーディーに有事対応アクションがとれる体制を整えておくことが推奨されます。

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01482_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>外国公務員贈賄防止コンプライアンス

日本企業が
「法制度の確立が未熟で、贈収賄が横行しやすい非欧米圏の新興国」
に進出する場合、現地行政官への贈賄を通じてビジネスを円滑化するという悪弊が慣行化していきました。

他方、これを贈賄罪等で摘発しようとしても、そもそも当該贈賄は進出当事国の国家的法益の問題であり、
「日本の刑法の贈賄罪が、外国の国家的法益を保護するために、日本の主権の及ぶ範囲を越えて、海外で適用される」
等ということも法理上あり得ません。

しかしこのような新興国への腐敗を助長する行為が国際的に違法視されるようになり、これを受けて、
「ビジネス版不法行為総則」
ともいうべき不正競争防止法は、国境を越えた企業のアンフェア営業・セールス活動にも積極的な規制を及ぼすようになりました。

具体的には、不正競争防止法2004年改正により、それまで刑法では不可罰であった外国公務員への贈賄行為も
「不正競争行為」
として規制されるようになり、違反行為に対して刑事罰が科されるようになりました。

外国公務員贈賄防止コンプライアンスを確立する上では、不正競争防止法を所管する経済産業省の外国公務員贈賄防止指針経済産業省ウェブサイト)が参考になります。

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01481_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>国際商品売買(貿易取引)における決済方法

1 L/C

国際商品売買(貿易取引)の決済手法として著名なものにL/C(Letter of Credit、信用状)があります。

貿易取引においては、取引の相手方が遠隔の外国にいるため、
「商品を発送したとしても、買手が対価支払いをしない、あるいはできないのではないか」
との不安を招来します。

このような不安を解消するものとして、荷為替手形という方式(輸出代金を額面とする為替手形に船積書類を添付する方式)がありますが、 この方式に銀行による信用供与を加えてさらに確実にしたものが、L/C決済というシステムです。

2 国際ファクタリング

以上のようなL/C決済に加え、最近では、L/Cの事務負担を軽減し、より迅速化した決済手段として国際ファクタリングの利用が増えてきました。

国際ファクタリングとは、ファクタリング(他人が有する売掛債権を買い取って、その債権の回収を行う金融サービス)の仕組みを利用したもので、世界各国にネットワークを有する国際ファクタリング組織が海外販売先(輸入者)の信用調査を行い、その信用リスクを保証する形で輸出代金決裁を行う仕組みです。

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01480_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>貿易保険

貿易保険は、日本企業の貿易や海外投資等、国際取引にかかるリスクを回避するための保険の1つで、
「国際取引に対応した取引信用保険」
と考えることができます。

この保険は、公的機関である独立行政法人日本貿易保険が行っているもので、

・戦争や政情不安定、政策的な外貨送金規制等、取引先が属する国自体を原因とするリスク
・取引先の支払遅延や破綻等の与信リスク

といったリスクをヘッジしています。

具体的な保険の種類としては、

貿易一般保険(個別保険)
貿易代金貸付保険(2年以上)
企業総合保険
貿易一般保険(技術提供契約等)
輸出手形保険
前払輸入保険
海外投資保険
海外事業資金貸付保険
与信管理
限度額設定型貿易保険
知的財産権等ライセンス保険
中小企業輸出代金保険
簡易通知型包括保険

といった保険がありますが、詳細は独立行政法人日本貿易保険の保険商品説明のURLに掲載されています。

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01479_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>非欧米諸国に製品を輸出する場合の外為法コンプライアンス

欧米諸国に対して日本製品を輸出する場合はそれほど問題とはなりませんが、非欧米諸国への製品輸出に関しては、
「兵器の製造・開発などに転用されるおそれのある製品」
に関して安全保障貿易管理上の規制が及ぶ場合があります。

安全保障貿易管理とは、
「外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号。以下、「外為法」)」
に基づく国際テロ等への対策を目的とした輸出規制であり、具体的には、以下のとおり、
「リスト規制」
「キャッチオール規制」
の2種の規制が存在します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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そして、上記規制については一般に知られていませんので、知らないが故に規制違反の輸出を行ってしまう可能性があります。

この点に関し、実際、東証一部上場の機器メーカーであるヤマハ発動機が、上記許可を得ずに軍事転用可能な無人ヘリコプターを中国企業に輸出したとして、同社従業員3名が2007年2月に外為法違反及び外国貿易法違反の疑いで逮捕される、という事件が発生しています(最終的には、法人としての同社が略式起訴され罰金刑を受ける結果となりました)。

以上のとおり、安全保障貿易管理に関する規制違反行為に対しては厳しい制裁が予定されており、注意と警戒が必要です。

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01478_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>中国から撤退する際の手続

日本企業の中国への進出が拡大する一方、様々な理由で中国から撤退を検討する企業も増え始めているようです。

撤退の際、設立した合弁企業等を解散・清算することになりますが、その際、

・解散決議の際、中国側パートナーが反対してデッドロックに陥った場合の対応
・中国側が出資した資産に不動産等の国有資産が含まれていた場合の処理や
・労働者の解雇の問題
・税制上の優遇措置を受けていた場合の事後処理等

様々な法的課題があり、予防法務の観点からの対策が必要となります。

1 中国法人解散における原則的手続

合弁企業等を解散するには、

・「董事会(日本の会社法における株主総会と取締役会の権限を併有した機関)」による全員一致の解散決議
・董事会による全員一致の解散決議書の作成及び審査許可機関への提出
・審査許可機関による当該決議の批准

といった手続が必要となります。

ところが、合弁企業における中国側パートナーは、解散に伴い、それまで享受していた合弁企業に対する各種優遇措置や、日本企業から提供を受けていた豊富な資金、優秀な人材、高度な技術等を失うことになります。

このようなことから、中国における合弁企業を解散する際、中国側パートナーの徹底した抵抗に遭遇し(しかも前述のとおり解散要件として全員一致決議が要求されているので日本企業としてもこれを無視しては先に進めないことになります)、
「いつまでたっても合弁企業の解散ができない」
というデッドロック状態に陥るリスクがありえます。

2 中国会社法(公司法)改正による解散要件の緩和

以上のような状況を受け、中国会社法(公司法)が改正され、一定の条件を具備した場合、解散を希望する会社の株主が人民法院に対し会社解散請求を申立てることができる、という制度が導入されました(「会社解散訴訟制度」。公司法183条)。

また、中国政府により公布・施行された
2008年5月5日付
「外商投資企業の解散及び清算業務を法に基づき適切に行なうことに関する指導意見(商務部意見)」3条
及び
2008年10月20日付
「外商投資企業の解散抹消登記管理に関連する問題の通知(工商・商務通知)」2条1項
によって、外国資本と中国資本によって設立された合弁企業にも上記会社解散訴訟制度が適用されることになっています。

これにより、
「董事会」
による全員一致の解散決議がなくても、人民法院の決定等を得ることで合弁会社の解散を進めることが可能となりました。

3 合弁企業が国有資産の出資を受けていた場合の清算手続

合弁企業設立に際して中国側が国有資産を出資していた場合、解散するにあたり、中国政府が指定する機関による価格評価や国有資産管理部門の確認等の手続が必要となります。

この手続を憚怠して財産処分をした場合、当該処分が無効となる場合もあるので注意が必要となります。

4 合弁企業が税制優遇措置を受けていた場合の手続

合弁企業が輸入関税上の優遇措置あるいはその他の免税措置を受けていた場合、解散にあたって、免除された税金の一定割合を追徴される場合があります。

中国における合弁企業解散にあたっては、上記のような税務課題もふまえて、必要な清算原資を確保して進めていく必要があります。

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01477_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>中国における債権回収事故の予防

中国においては、国民性、商慣習、企業体質等の面から、債権回収事故が生じやすく、予防法務上適切な対応が必要となります。

1 三角債(の抗弁)

中国において債権回収を行う過程で
「三角債(の抗弁)」
と呼ばれる理由をもって支払いを拒まれることがあります。

「三角債(の抗弁)」
とは、第三債務者、すなわち債務者が売掛債権を有する取引相手が債務を支払わないことを理由に、自己の債務の支払いを停止することです。

無論、法的根拠はないのですが、中国の商慣行では
「商流の下流の相手が払わない以上、こちらが払わないのは当然である」
という強固な考え方があるため、全く悪びれることなくこのような抗弁を持ち出されます。

債権管理・回収上、非常に大きな障害となるので、このような事象をふまえて、信用管理を行うべき必要があります。

2 不当な支払遅延

また、中国においては、経理の仕事が
「キャッシュフローを改善し、手元資金を厚くすることであり、そのためにあらゆる手段を講じること」
と理解されている節があります。

このため、債務者である中国企業の経理担当者が主体となって故意に支払を不当に遅らせる、といった事態が頻発します。

すなわち、納品が終わり支払期限が到来している債務が支払われなかったため、債権者の営業担当者が債務者の経理担当者へ連絡をすると、
「上司から請求書が下りてきていない」
「支払の責任者が出張中でわからない」
「既に支払っている」
「商品を返品したい」
等といった弁解が延々と行われ、支払いを不当に渋る、といつた事態に遭遇します。

3 推奨される信用管理

以上のような、中国での債権回収事故に対する予防対策として、以下のような方法が考えられます。

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01476_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>取引先のデフォルト対策の重要性

非欧米諸国の企業と国際取引する場合や、ジョイントベンチャー契約を通じて進出していく場合においては、常に契約違反があった場合を想定したリスク管理が必要となります。

特に、非欧米圏の新興国の企業や法人に関しては、契約違反によって損害を被って裁判に勝ち、あるいは有利な仲裁判断を得ても、みるべき資産がなく、
「訴訟に勝ったが、結局、取りっぱぐれた」
というケースも少なくありません。

したがって、信用や財産に乏しい相手先と国際取引を行う場合、事前に相手の資産調査を入念に行い、必要に応じて、確実な担保を設定するなど、
「いつデフォルトされても、確実に回収して撤退できる」
準備を整えておくべきです。

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