01472_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理

1 中国その他アジア諸国の法域に関する法令管理

中国の法務上の知見・情報を収集できる書籍として、
『最新中国ビジネス法の理論と実務』(田中信行編・弘文堂)
『そこが知りたい中国法務』(射手矢好雄著・時事通信社)
『中国ビジネス法務の基本がよ~くわかる本』(遠藤誠著・秀和システム)『「中国ビジネス法務」実務ガイド』(企業研究会)
『中国ビジネスの法務戦略』(范云涛著・日本評論社)
が推奨されます。

さらには、日本貿易振興機構も、経済の動向、貿易・投資制度の紹介から、海外進出のための手引き、現地コーディネーターや専門家の手配等、ビジネスに役立つ様々なサービスを提供していますので、こういったものも積極的に利用すべきです。

特に、中国の知的財産関連の法令であれば、日本貿易振興機構等が日本語訳とともに無償で公開しています。

2 イスラム圏の法令管理

イスラム圏の法務上の知見・情報を収集できる書籍として、
『イスラム金融』(イスラム金融検討会編著・日本経済新聞出版社)
『イスラーム私法・公法概説』(中田考・日本サウディアラビア協会)
等が挙げられます。

また、前記同様、日本貿易振興機構を利用することでイスラム圏の法務上の知見その他必要な情報を取得することが可能です。

3 その他の地域

その他新興国の法務上の知見・情報の収集方法として、当該国の大使館の利用が考えられます。

特に、企業誘致に積極的な国や地域の大使館では、現地のコーディネーターや弁護士を紹介したり、物産展等への招待等を通じ、様々な情報を開示してくれます。

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01471_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>その他の地域

アフリカ諸国は、独立後間もない国々もあり、十分な法整備がなされていない地域も多数存在します。

植民地時代はイギリス、フランス、オランダ、スペイン等の旧宗主国の法体系をそのまま導入していたところも多く存在しますが、独立後に植民地時代以前の古くからの慣習法や法文化を採り入れて法体系を再整備した国や、エジプト、アルジェリア等、国教としてイスラム教を取り入れたことに伴い、前記のようなイスラム教教義に基づく法の整備を行った国・地域もあります。

なお、新興国一般にいえるのは、法一般に対する考え方が未熟で、行政執行の現場においては、運用が属人的に変化するといったことが日常的に存在します。

したがって、以上のように、法制度一般を客観的に調査・検討するのみならず、様々な
「公式には明らかにされない、運用の実際」
について現地に詳しい者から直接をヒアリングするなどして、法にまつわるリスクを総合的に管理することが必要になってきます。

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01470_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>イスラム圏

1 イスラム教教義

イスラム圏における法律は、イスラム法(シャリア法)、イスラム聖法などと総称されており、全てイスラム教の教義によって定められているという特徴があります。

もっとも、イスラム教の教義に基づくとはいえ、宗教的な規定のほか、民事関連法、刑事関連法、訴訟関連法、行政関連法、戦争法等、極めて幅広く制定されています。

イスラム法のうち、イスラム教に関わる規範部分がイバーダート(儀礼的規範)と呼ばれ、世俗における生活様式に関わる部分がムアーマラート(法的規範)と呼ばれています。

2 法の適用における属人主義

また、イスラム法における特徴の一つとして法律の適用ルールが挙げられます。

欧米の法体系においては、いわゆる属地主義を採用しているところが多く、当該法律が制定された国内の出来事や居住者に対してのみ当該法律が適用されることとなります。

しかしながら、イスラム法においては、ムスリム(イスラム教徒)であることを法律適用の要件とする属人主義を採用しており、ムスリムであれば世界のどこへ行ってもイスラム法が適用され、一方、非ムスリムであれば、たとえイスラム圏に滞在・居住していたとしても、原則として、イスラム法が直接適用されることはありません(非ムスリムに対しては法が差別的に適用されたり、非ムスリムとムスリムの間に生じた事案に関してイスラム法が直接適用される結果、非ムスリムがイスラム法の適用を受けるということはあります)。

3 法の差別的適用

また、イスラム法は、宗教や性別によって法規定を差別的に適用する、という仕組みを内包しています。

例えば、イスラム法における不法行為法は、被害者がムスリムの男性で死亡した場合、損害賠償額は10万サウジアラビアリアル(約220万円(2011年4月26日現在))と定められており、キリスト教徒、ユダヤ教徒の場合は5万サウジアラビアリアル、女性の場合はさらに低額に定めています。

4 イスラム金融

最後に、イスラム圏における国際取引法務の課題として、イスラム金融を概観します。

イスラム金融とは、イスラム法に則った金融取引の総称をいい、イスラム教の教典であるコーランが利息の受取りを禁止していることから、
「金利」
という概念を用いない点に大きな特徴があります。

イスラム金融における
「金利」
という概念を用いない欧米からみてユニークな取引モデルとして、以下のような、ムラバハと呼ばれる商品売買契約や、バイ・アル・イナと呼ばれる売買同時契約、ムダラバと呼ばれる信託金融といったものがあります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

イスラム金融においては、このような各取引の構築を行うことによって、利息の受取りを禁止したコーランの抵触を回避しながら、実質的なローンビジネスが行われています。

以上のように欧米からみるとユニークな取引もありますが、イスラム法に基づく金融取引としては、通常の預金取引、保険事業、リース事業が存在するほか、プロジェクト・ファイナンスやアセット・ファイナンス、さらには集団投資スキームといったものまで存在するなど、欧米における先端的な金融取引と同様のメニューが整備されています。

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01469_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>中国

中国における法体系としては、まず、日本の国会にあたる全国人民代表大会が制定する
「法律」
があり、
「法律」
の下位規範として、
「行政性法規」
と呼ばれる国務院(中央政府の機関の1つ)が施行する法令が存在します。

「行政性法規」
は法律よりも圧倒的に多くかつ詳細にわたっており、具体的で私人に直接作用する規範として機能しています。

次に、国務院に所属する委員会や部が、それぞれ公布する法令が
「部門規則」
と呼ばれており、これらも法規範としての性格を有します。

2001年のWTO加盟により、輸出入の規制緩和、知的財産制度の改革、市場参入における自由化等がスピーディーに進められました。

その結果、中国における法律の制定。改正は目まぐるしく行われ、急速に整備が進んでいます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

ガバナンス法務に直接関係する会社法(「公司法」)ですが、2005年10月、2006年1月の大改正を経て現代的な法体系を確立するに至っています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

製品市場に関する規律のトピックとしては、2009年に制定された不法行為法において製造物責任に関する特例が設けられ、
「製品に欠陥が存在することを明らかに知りながら製造・販売を続け、死亡又は健康に対する重大な損害をもたらした場合」
には、
「相応の懲罰的賠償」
の支払いをしなければならない(不法行為法第5章47条等)と規定されました。

2010年7月からすでに施行されていますので、今後、中国国内で製品の製造、販売を行う場合には、このような懲罰的賠償リスクに対する注意と警戒が必要になります。

中国進出にあたり、M&Aにより中国企業を買収し、大幅な時間短縮を図る企業も多いかと思われるので、M&Aの法令環境を概説しておきます。

中国企業とのM&A一般に関しては、以下のとおり、多数の法規が同時に関係することになるなど、複雑な規制課題が発生することになります。

また、外国企業が、買収等の方法で中国企業の経営権を支配する場合には、競争的観点及び国家安全保障による観点からの規制が働きます。

すなわち、外資による中国企業買収の際
1 国における戦略上の重要産業である場合 
2 国家経済の安定性に影響を与える場合
3 対象会社が中国における著名商標や伝統的標章を保有する等の場合
には、中国政府当局に対して当該取引の報告が義務づけられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

報告を憚怠した場合、中国政府によって、当該買収等を
「国家安全に対する害悪」
と判断し、該当取引を中止させられたり、関係資産を強制的に譲渡させられたりといった強権的なペナルティを受ける可能性があります。

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01468_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>課題と対応の基本

1 中国を中心とするアジア圏を対象法域とする国際法務実践上の課題と対応の基本

近年、中国における経済環境、法令環境は目まぐるしく変化しています。

そして、日本企業が、中国企業と提携したり、中国市場に直接乗り込み製品やサービスを提供したり、その他中国企業への投資を行ったり、といった活発な国際取引を開始しています。

このような中国に関係する国際取引を実施する場合には、中国契約法をはじめ、知的財産法、競争法、通商法、製造物責任法など複雑化・多様化する各種法令の精査、理解に加え、中国政府との関係構築などの非法律的対応も必要となります。

また、中国は
「法の支配ではなく、人の支配がいまだ色濃く残る法環境である」
といわれますので、中国に現地法人を設立したり、合弁・合作会社を設立する日本企業は、
「中国のファジーな法環境において、どのようにして、法的合理性に基づく緻密な内部統制を構築するか」
という課題にも直面します。

さらに、中国でのビジネスでは、中央政府や地方政府の役人達とのリレーションが欠かせません。

これは、決して、不正競争防止法において禁止される外国公務員贈賄行為を意味するものではありません。

日本企業が持ち込む事業が成功すれば、その地方に与える経済効果は大きく、担当者にとっては、中央の人事当局における成績評価を改善する絶好のチャンスとなります。

したがって、事業の意義や成功した場合における地域経済や労働市場に与える影響等をしっかり説明すれば、地方の行政当局の積極的な協力を得ることも不可能ではありません。

このように、
「属人的に物事が進む法文化」
を持つ中国の実態を見極めることで柔軟に対応しながら、日本及び現地の法令を確実に遵守していく、というところが、中国に進出する際の国際法務実践上の要諦となります。

2 イスラム圏を対象法域とする国際法務実践上の課題と対応の基本

他方、中東等のイスラム諸国では、イスラム教という信条、理念に基づいて制定されたイスラム法の理解、また、イスラム圏特有のイスラム金融やスクークと呼ばれるイスラム債券の理解が必要不可欠となります。

中東特有の政治リスク(政情不安、政府による強権発動等)にも対応しなければなりません。

3 その他の地域を対象法域とする国際法務実践上の課題と対応の基本

その他の地域の国際法務を実践していく上では、旧宗主国であった欧米諸国の法環境を想定し、これがその後の歴史的・政治的経緯によりどのように変容してきたか、という点を折り込みつつ、的確に現地の法体系や法文化の特徴をつかみながら、法務対応していくことになります。

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01467_非欧米国際法務>非欧米国際法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説

日本国内では、低迷する経済状況と、少子高齢化を原因とする内需の縮小により企業の成長が鈍化してきています。

他方、近隣のアジア諸国をみると、10億人超の市場を持つといわれる中国には世界中から投資マネーや工業用資材が流入していますし、韓国製家電の世界進出や、シンガポールや香港の証券取引所の発展等、どの国も目覚ましく成長を続けています。

また、中東の新興国も潤沢なオイルマネーを背景に成長が期待されます。

以上のような状況をふまえ、日本企業は、これまでのような欧米諸国との取引に依存することなく、このような新興国市場への進出を開始しています。

とはいえ、非欧米諸国の企業や法人との取引を企業法務の観点から考察する場合、“法文化の違い”以前に、そもそも“法文化”が存在しない国も多く、欧米以上に法的トラブルが多発することを想定しなければなりません。

また、一括りに
「非欧米国際法務」
といっても、様々な国や法体系が無数に存在するため、その一般的傾向を抽出し、これを統一的に整理し把握することは非常に困難です。

とはいえ、“非欧米諸国における国際取引一般についてのリスク発見と対策の勘どころ”のようなものをまとめることは可能だと思われますので、以下、非欧米諸国を、おおまかに
1 中国を中心とするアジア圏を対象法域とする国際法務
2 イスラム圏を対象法域とする国際法務
3 その他の地域を対象法域とする国際法務
と3つに区分します。

運営管理コード:CLBP664TO664

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01466_欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>外国消費者からのクレーム対応

コンシューマー市場の国際化に伴い、外国の消費者が日本企業の製品に対してクレーム(プロダクトクレームやセールスクレーム)を主張してくるケースも想定されるところです。

このような事例においては、事案解決基準となる準拠法をどのように定めるかが問題となります。

このような国際的なコンシューマーセールスにおける準拠法問題については、2007年1月から施行された
「法の適用に関する通則法」
に解決のための基準が定められています。

この法律は、消費者保護を徹底する観点から、消費者と事業者の間の契約(消費者契約)については、極力、消費者の居住国の法律が準拠法となる形の取扱いがなされています。

運営管理コード:CLBP662TO663

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01465_欧米国際法務>特殊な課題・新たな課題>EU独占禁止法(競争法)の域外適用

2007年1月24日、欧州委員会は、ガス絶縁開閉装置(GIS。変電所等において用いる機器)の販売業者が入札談合等のカルテル行為を行ったとして、日本企業5社を含む計10社に対して、総額7億5,071万2,500ユーロ(当時のユーロのレート155円/ユーロを適用すると、日本円で約1,163億円)の制裁金を命じました。

日本企業は、EU市場におけるGISの販売はほとんど実施していませんでしたが、
「『EU内の企業を相手として、相互の市場でGISを販売しないというカルテル協定』を結んでいたことが、EU市場における競争を制限したものである」
とされ、違反認定されました。

これは米国においても同様であり、米国の独占禁止法運用上、
「海外の企業の行為であっても、自国内の競争に影響を及ぼす場合には、米国独占禁止法を適用する」
という立場が採られます。

このように、海外競業他社との合意等を行うことは、日本の独占禁止法のみならず、海外の当局から海外の独占禁止法に抵触すると認定されうる可能性があり、十分な注意が必要です。

なお、EUの独占禁止法運用上、親会社及びそのグループは、単一かつ同一の経済主体とみなされ、子会社が行ったカルテル行為について、親会社が責任を負担させられることもあります。

したがって、海外進出先の現地法人が、進出先の独占禁止法に違反することがないように、十分な内部統制を行う必要があります。

運営管理コード:CLBP662TO662

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01464_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>ITC(lnternational Trade Commission 米国国際貿易委員会)

米国企業から、あるいは
「米国企業ではない第三国の企業」
から日本企業に対して、ITC(lnternational Trade Commission 米国国際貿易委員会)手続における審理開始が申立てられる場合があります。

ITCは、アメリカ国内へ輸入される製品のダンピングの有無や知的財産権侵害の有無等を調査し、不公正商品(ダンピングによる廉売品や知的財産権侵害品)であった場合に、アメリカヘの持込みや輸入販売などを排除する権限を有する独立行政委員会です。

日本においてもこれと類似した制度として、税関長が、特許権等の侵害品貨物の輸入を差し止める、輸入差止申立制度(関税法69条の13、同法施行令62条の17)があります(日本の輸入差止申立制度においては、知的財産権侵害品の水際差止めを主な目的としており、ダンピングを理由とする差止めは認められていません)。

ITCでは、輸入製品が侵害品であるか否かを審理し、侵害を認定した場合、

・限定排除命令(Limited Exclusion Order。侵害を行った当事者のみ輸入を禁止される措置)
あるいは、
・一般排除命令(General Exclusion Order。何人も排除対象製品を輸入することを禁じる措置)

を発令します。

裁判所(司法機関)で行われる特許侵害訴訟は、司法手続という性格上、主張・立証が厳格に行われ、審理も長期化します。

他方、ITC手続は、行政手続であり、迅速に結論が出されます(陪審制度がなく、審理期間も15ケ月以内とされています)。

例えて言うなら、知的財産権侵害事件における訴訟対応が“無罪を争う刑事事件”とすると、ITC手続は“交通違反の際の反則事案処理”ともいうことができ、迅速かつ強権的に進められます。

このようなITCの迅速性・強権性から、米国市場における知的財産権侵害やダンピングに関するトラブルについて、ITC手続で争われる事例が増加しています(日本のシャープと韓国のサムスンによる、液晶テレビの輸入禁止を巡る争いなど)。

しかしながら、ITCの権限にも限界はあります。

すなわち、ITCの命令発出は販売や通関を禁止する命令に限定されており、損害賠償についての判断をすることができません。

このため、知的財産権侵害を受けたと主張する米国企業(や米国市場に進出する他国企業)は、ITCに提訴する一方で、同時に裁判所にも並行提訴するという戦略を採用することが一般的です。

このように、日本企業が米国市場において知的財産権侵害紛争に巻き込まれた場合、以下のような
「ITCへの申立書」

「米国裁判所に提起された訴状」
の2種類が同時に送達されてくる可能性がある、というわけです。

なお、このような訴状ないし申立書が、和訳も添付されず、いきなり当事者の関係者や代理人が持参してきたり、あるいは直接郵送されてきた場合、前述のとおり、送達の有効性を争って審理を合法的に引き延ばしたり、これにより相手方の時間やコストを消耗させ、疲弊させる戦略を採りうる可能性があります。

慌てて応訴することなく、送達の違法性を争うことも視野に入れて対応を検討すべきです(無論、すでに米国に事業拠点や執行されうる財産が存在する場合や、輸出差止めにより直ちに事業に大きな影響が出るような場合、速やかな応訴が必要となりますので、“引き延ばし戦略”は採用の限りではありません)。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01463_欧米国際法務>欧米国際法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>日本企業が、日本の裁判所に訴訟を提起し、外国企業を訴える場合その2

2 日本の裁判所の管轄権

契約違反事例ではなく、国境をまたぐような事件・事故が発生し、日本企業が外国企業等を不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起する場合についても少し述べておきます。

上記のような事例において日本企業が日本の裁判所で訴訟提起をしようとしても、そもそも、日本の(国際)裁判管轄権があるか否かが問題となります。

この点、民事訴訟法には、日本の国際裁判管轄に関する明文規定が存在しなかったのですが、2011年4月に民事訴訟法が改正され、以下のとおり、国際裁判管轄の規定が整備されました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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