02178_調整役はつらいよ:弁護士間の意思疎通_“火消し役”にあらず

依頼者にとっては“最強布陣”であるはずの複数弁護士による共同受任。 その調整役というと、「損な役回り」と思われがちですが、実のところ、“うま味”があるポジションでもあります。 依頼者との距離が近い弁護士がその役に就けば、関係者間の交通整理を通じて、案件の動線そのものを握ることができます。 全体を俯瞰する立場にもなりやす...

02177_刑事事件は社内から始まる_企業法務の刑事化リスクその2

「企業法務は民事マターが中心」いまだにそんな牧歌的な幻想を信じている法務部員や経営者が、想像以上に多いようです。 契約書の条文を丁寧にチェックし、利用規約の文言に頭を悩ませ、取引先との合意形成に汗をかく。 いずれも立派なお仕事です。 しかし、その丹精込めて整えている社内業務のど真ん中に、もし“刑事事件の地雷”が埋まって...

02176_刑事事件は社内から始まる_企業法務の刑事化リスク

企業法務の世界は、一般に「民事中心」と思われがちです。 実際、多くの法務担当者にとって、日々の関心は契約書のチェック、取引先との合意形成、社内規程の整備、労務管理といったところにあります。 ところが、企業法務のあらゆる場面に、“刑事事件のリスク”の芽がある、といっても過言ではありません。 しかも、そのリスクは、「悪意の...

02175_見えないものをミエル化する知恵_「協力的」_税理士と弁護士、同じ案件に向き合うときに起きる“温度差”の正体

ある企業で、顧問弁護士が交代しました。 契約関係やリスク対応を、より専門的に支えてくれる人材を求めての変更だったといいます。 社長としては、次のステージに進むための、前向きな判断だったそうです。 その「次のステージ」とは、具体的には事業承継でした。 親族への株式の引き継ぎを見据えて、支配構造を整理するフェーズに入ったの...

02174_見えないものをミエル化する知恵_ファミリービジネスにおける事業承継の「段取りと視点」

事業承継の現場には、法務だけでは語りきれない「感情のもつれ」がつきものです。 親子間のわだかまり。 兄弟姉妹の不公平感。 義理の家族との距離感。 たとえば、長男に会社を継がせると決めていた父親が、いざ引退の時期が近づいてくると、急に決断を先送りにしはじめる。 あるいは、会社を手伝ってきた長女が、いくら貢献しても「経営は...

02173_見えないものをミエル化する知恵_議事録に署名があっても、責任の所在は見えない

“うなずいていたから、理解していた”のは、本当か? たとえば、美術館の展示会で、音声ガイドを聞きながら歩いている人がいます。 黙ってうなずきながら、説明に耳を傾けている。 けれども、その人が展示内容を本当に理解しているかどうかは、外からは見えません。 「うなずいていたから、理解していたはず」とは、言い切れないのです。 ...

02172_見えないものをミエル化する知恵_株主総会の議事録が無効になるとき_“納得のプロセス”をどう残すか?

企業では、「理解しました」という言葉がよく交わされます。 それがそのまま「同意があった」と受け取られてしまうことも、少なくありません。 しかし、法務の立場から見ると、「理解=同意」とは限りません。 たとえば、「Aという事実があったことは理解している。でも私はそれに納得していないし、同意もしていない」。 こう言われてしま...

02171_修正申告は企業法務の落とし穴_“収益の帰属”を見誤った善意の訂正が招いた結末

「修正申告=正しい対応」とは限らない 税務の世界には、誤りを正すための「修正申告」という制度があります。 たしかにこれは、制度として当然のものと言えるでしょう。 実際、多くの企業が、税務署から指摘を受けては、すぐに修正し、納税し直しています。 ところが、そこには落とし穴が潜んでいます。 そもそも修正申告とは、あくまで「...

02169_確認メールはどこまで“証拠”になり得るか_“契約未満”の合意を文書に残す技術と視点

確認メールが“社内防衛”で終わっていないか? 私のもとに寄せられる企業法務の相談には、ある共通点があります。 それは、「言った・言わない」の泥仕合が、背景に潜んでいるということです。 その多くは、社外とのやりとりに起因しています。 取引先との協議、外部関係者との打合せ、委託先との折衝—— その場ではうまく進んでいたはず...

02168_議事録がなぜ“契約未満”であって“証拠以上”なのか_実務担当者が知っておくべき文書の真価

議事録は、契約書とちがって署名も押印もされていないことがほとんどです。 したがって、厳密な意味での「合意書」ではありません。 それにもかかわらず、実務の現場では、この議事録がときに 「契約書以上の意味」 を持つことすらあります。 それはなぜか。 どうして「契約未満」なのに、「証拠以上」の役割を果たすのか。 この一見矛盾...