00028_紛争プライバシーを守る方法(揉め事を公にしない方法)としての、不起訴の合意と仲裁契約

訴訟沙汰なんてあまり聞こえがいいものではありませんし、ましてや衆人監視の下で法的トラブルをあれやこれや議論するなんて事態は誰しも避けたいと思われます。

しかし、憲法では国民に裁判を受ける権利を保障しており、かつ、裁判は原則として公開で行なわれることになっています。

従って、紛争の相手方に
「こちらのプライバシーも考えて、訴訟を起こすな」
ということをいう権利はありませんし、特段の事情がない限り、裁判所に対して
「頼むからこの裁判については密室でやってくれ」
などと注文することはできません。

しかし、このような
「こちらのプライバシーも考えて、訴訟を起こすな」
「頼むからこの裁判については密室でやってくれ」
という紛争プライバシーを実現する方法(揉め事を公にしない方法)があります。

さすがに刑事訴訟を密室で行なうことは困難ですが、民事裁判については、相手と事前に合意して、
「訴訟を起こさない」
という約束(不起訴合意などといいます)により、訴権を放棄させることが可能です。

民事裁判なんて、そこらへんの私人同士のカネや権利のトラブルですから、当事者の意に反してまで公開しておおっぴらにする必要性がないからです。

さらに、仲裁合意という方法もあります。

法的な紛争解決は、常にかつ当然に裁判所で行なわなければならないというものではありません。

当事者が合意の上で、
「裁判官でない、特定の人の判断に委ね、その判断に文句を言わない」
と合意すれば、仲裁法という法律に基づき、私人が裁判官役として、非公開のテーブルで、紛争を法的かつ終局的に解決することができるのです。

仲裁というと国際取引にまつわる紛争解決の際に使われるものですが、国内の一般的な民事紛争も利用できる方法です。

無論、相手が事前に仲裁することに同意してくれないと取りえない方法ですが、
「事件プライバシー」
を保ちつつ、紛争を表沙汰にすることなく、極秘的に解決するには最適な手続きです。

訴訟では3審制が取られ、当初の判決に不服があれば高裁、最高裁へとさらに2回の裁判を起こせますが、仲裁は1回勝負で、不服があっても上訴に持ち込むことができません。

その意味では、訴訟に比して、迅速な解決が期待できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです