企業経営者の中には、
「従業員たる者、滅私奉公の精神を持つべきで、サービス残業など当たり前」
との戯言を平然とおっしゃる方がおられます。
ですが、
「サービス残業」
というと聞こえはいいものの、
「客観的には企業が支払うべき残業代を支払っていない」
という事実に変わりなく、つまるところ
「労働基準法違反の常態化」
という違法行為を企業として明示または黙示に是認しているにすぎません。
賃金は、残業代を含め、正確に計算して全額支払うことが法律上の義務として定められており(賃金全額払の原則、労働基準法24条)、これに違反すると罰則も課され得ることが定められています(労働基準法120条1号)。
実際、サービス残業が基準監督署調査で露見しても、なおも
「こんなもん払えるか!」
と逆ギレして、無駄にお上(厚生労働大臣)に楯突く、よくわかっていない企業を見かけます。
こんなことをやったところで、返す刀で、書類送検され、新聞沙汰になったり前科持ちになるだけで、
「空気の読めないどんくさい企業(の経営者や人事責任者)」
というアホ姿を世間に晒す結果が待っているだけです。
書類送検ですし、起訴猶予、執行猶予、せいぜい罰金前科ですから、
「たいしたことない」
といえばたいしたことない(もちろん、個々人の感受性によります)のですが、ずっと後になって、叙勲選考の際に、この黒歴史が仇となって、勲章もらえなかったりすることもあります(無論、こちらも、勲章なんてもの欲しがるかどうか、という点も、個々人の感受性によります。私は、もらえるなら、ぜひとも欲しいですが)。
この種の違法の常態化を解消するのは実に簡単で、残業管理を適正に行ない、残業が不可避な業態の場合
「三六協定」
の締結を含めた法令遵守を実施し、きちんと残業代を支払うことです。
残業代を現実に支払うと事業として維持できないようであれば、基本給の見直しを行なって従業員に不利益変更に応じてもらうか、それもできないのであれば事業自体止めるべきです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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