00040_企業法務ケーススタディ(No.0009):会社法を活用したファミリー企業の内紛防止法

企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。

相談者プロフィール:
タカダ帆布鞄 社長 高田 信一郎(たかだ しんいちろう、65歳)

相談内容:
先生、いつもお世話になっております。
今日は当社の新製品をお持ちしました。
ウチの次男坊のヤツのアイデアなんですが、カバンよりアパレルが流行るってことで作ってみた帆布のジャケットです。
ちょっとゴワゴワして重いですが、着慣れると大変心地いいですよ。
もっとも着慣れるまで15年くらいかかるかもしれませんが。
え、分厚い柔道着みたいだって? そんなこといわないで、是非着てみてくださいよ。
売れなくて困っているんですから。
今日は、ちょっと先生のお知恵をお借りしたいと思い、参りました。
現在、私の子供3人とも事業を継ぐ気で仕事をしてくれています。
ですが、長男は仕事より遊びが好きで、こいつはどうしょうもない。
毎晩銀座でクラブ活動ですよ。
次男は次男で、アパレルをやりたいなんていっている。
そう、この柔道着、じゃなかった、帆布ジャケットを作ったのは次男で、
「パリコレに出るんだ」
なんて夢みたいなことをいってる。
もう泣けてきますよ。
職人気質のまじめな私のDNAを一番色濃く継いでいるのは三男なんですよ。
なので、私としては三男に会社を継がせたい。
とはいえ、今、私が引退して、三男に継がせると、長男、次男が反発して、会社の中がガタガタになる。
私の目の黒いうちに何かできることをしておきたいのですが、何かいい方法ありますでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点:“不平等で非民主的な統治秩序”が導入可能となっている、もはや「なんでもあり」の会社法
かつて、商法の一部として定められていた株式会社に関する法典や有限会社法が、
「会社法」
という独立した法典にまとめられ、施行して10年以上経過しました。
「商法時代」
から大規模な転換を遂げた会社法ですが、特筆すべき点は、一律にお仕着せの規制をしていた株式会社という組織の運営方法を、株主が自由に設計できるようにしたことで、この点については、革命的な変化ともいうべきものでした。
かつては、
「株式」
という基本的な権利については、内容が法定され、平等で画一的な権利内容として、厳格に定められていましたが、会社法時代になって、株式の権利内容そのものすら、オーナーである株主の一定多数の了解さえ得られれば、その裁量によって自由に設計できるようになりました。

モデル助言:
会社というのは、従来、保有株式数に応じた多数決で運営するという、
「平等で民主的な運営」
を基本原則としていました。
他方、組織というのは、独裁、すなわちワンマン経営がもっとも効率を発揮できます。
リーダー不在の状況で、それぞれの派閥が利害にとらわれワガママを言い出すと、組織なんてあっという間に潰れます。
創業社長が急逝して御家騒動が起こるのは、ある意味、このような
「民主的組織運営」
が必然的に持つ負の側面なんですよね。
旧商法から会社法に移行して以来、こういうジレンマを解消するための道具を用意してくれたので、使わない手はありません。
時期がくれば、三男が徹底した独裁経営ができるよう、今からシステムを整えておきましょう。
もっとも、以上の設計案は、あくまで紛争予防という点に絞ったもので、税務的な判断が別途必要です。
今度、御社の顧問税理士を交えて、詳細の検討に移りましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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