M&Aといっても、その本質は売買取引で、売買の対象が、車や不動産ではなく、事業や会社に変化しただけです。
さらにいえば、売買形態の圧倒的多数を占めるのは株式譲渡であり、いってみれば、会社の株全部を売買する、という株の売買取引、というのがM&Aのほとんどの取引の実体です 。
では、M&Aがなぜ小難しいかといいますと、
1 売買の対象が極めて不明確で移転が観念しにくい点(事業譲渡の場合に顕著ですが、株式譲渡でも現実の支配交代が完全なものとなるまで、PMI(=Post Merger Integration、“占領統治”的な意味合いを持つ、買収後の経営統合実務]と呼ばれる面倒な実務上のプロセスが発生します)、
2 企業をいくらで売り買いするか、という点については、いわゆる相場というものが観念しにくいので商品(事業)に値段を付けにくいという点、また、
3 企業再編税制という複雑な税制があり、取引組成の仕方を間違えると税務上のデメリットを被る場合もあり、取引の設計に神経を使う点、
4 買収後に想定外の事象が起こることが多、特に、騙された場合のリスクを大きく負担することになる買い手にとって予防法務的な観点でリスクの発見・特定やリスクに対処するための契約設計が大変、
5 その他労働法、(上場企業の場合)インサイダー関連法規、(市場でのプレゼンスが大きい企業の場合)独禁法等、規制遵守項目も多い、
などによります。
これらの項目はすべて専門家に委ねられますので、買収の打合せが始まると、偏差値の高そうな方が集まって専門用語を使ったコミュニケーションをするので、当事会社の経営陣にとっては実に面倒くさい、眠い話が続くということになります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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