外資系の金融機関は、非常に優秀な方が多く、いろいろな金融商品を開発し、提供してくれます。
無論、中には、緻密な理論を構築して、安全で高収益を生むような商品もありますが、すべての商品がまともであるという保証はありません。
節税商品とは、
「お金をリスクに晒して、その対価として利回りや配当を得る」
という本来の金融商品ではなく、シンプルに言えば、民事組合のパススルーシステム(組合の損金を直接自己の損金として計上できる)を利用して、
「税務上の損金を買う」
という仕組のものです。
ちょっと前に興行用の映画フィルムを使った節税商品がありましたが、映画フィルム以外では、飛行機や船を使ったリース事業を行う組合を作り、やはりパススルー制と組み合わせて損金計上するような商品(レバリレッジド・リースと呼ばれます)もあります。
どれも
「机上の」
税務理論としてはよく考えられていて、一見すると、効果的な節税ができそうなのですが、こういう
「実体の希薄な商品を使った、税務行政にケンカを得るような強引な損金処理」
を税務当局が笑って受け入れてくれるほど世間は甘くなく、どれも当局と大喧嘩に発展しています。
結論をいいますと、飛行機や船を用いたレバレッジド・リースは事業実体ありということで損金計上が認められ、最高裁もこれを容認しましたが、映画フィルム債の方は、フィルムが事業のために用いられているような実体がないということで、最高裁は税務署の更正処分と過少申告加算税賦課処分を認める判断をしています。
裁判所の判断だけをみると、飛行機と船はOKで、映画はヤバイ、なんて簡単に考えてしまいそうです。
しかしながら、税務署とのトラブルに巻き込まれた(最高裁までもつれこんでわけですから、事件に投入された時間やエネルギーや弁護士費用等はハンパなものではないでしょう)、という点では、飛行機や船のリース事業に参加した場合であっても相当シビアなリスクにさらされた、とみるべきです。
商品を売る側は、いかにも
「節税プランは完璧です」
ということを、セールストークに謳います。
ですが、売る側の金融機関は、売った後に顧客がどんな税務トラブルを抱えたとしても、
「損金計上できると判断するか、損金計上できると判断するとして、実際損金計上するかどうか等は、すべて自己責任だから、関知しない」
という態度を取ると思われます(もちろん、同情はしてくれたり、紛争対策のための税理士や弁護士を紹介してくれることはあっても、決して手数料を返したりはしてくれません)。
「いい話にはウラがある」
という警句は、実に的を得たものであり、たとえ売り込む側が、仕立てのいいスーツを着て、高価なネクタイをぶら下げ、学歴が高く、名の通った金融機関に勤めていても、セールストークを鵜呑みにするととんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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