00066_意外と知られていない私製手形の活用法

一般的に手形というと、銀行に当座預金口座を作って、統一手形用紙が綴られた手形帳もらわないと発行できないと思われてる方も多いと思います。

しかし、手形法上
「手形は、金融機関の作った統一手形用紙を使って作成すべき」
などと書いてあるわけではなく、藁半紙に書こうが、紙ナプキンに書こうが、手形法に定める要件が記載している限り、手形としての効力が生じます。

すなわち、
「何時何時までに金いくらを払います」
という約束を記した手形を交付したら最後、どういう理由で作成したかを問わず、約束どおり、期限までに耳をそろえて支払いをなすべき義務が生じます。

手形の約束を反故したら、通常の民事訴訟のように和解手続きを含めチンタラ1年かけて裁判するのではなく、1回の期日で強制執行できる状態に持っていけます。

とはいえ、私製手形は手形交換所で取り扱われませんので、金融機関に持ち込んでも相手にされません。

そもそも
「手形の不渡り」
という事態が生じ得ませんので、何回不払いにしても銀行取引が停止になることはありません。

以上のとおり、
「2つ目つぶして、銀取停止に追い込んで、倒産させる(手形を2回不渡りにさせ、銀行取引停止処分、さらには破産に追い込む)」
という効果こそないものの、私製手形は、公正証書に匹敵する債権回収手段になり得ます。

公正証書(金銭の支払いに関するもの)は確定判決と同一の効果を有しますし、その意味で裁判外で作成するものとしては、最強の法的書面ですが、相手が公正証書に任意に応じることが前提となります。

すなわち、いかに公正証書作成の段取りを万全にしても、相手方がすっぽかしたり作成を拒否したりすると、公正証書の作成は不可能です。

不正行為を自認し、責任を負担することを表明している人間に対して、損害賠償義務を認めさせるケースなどでは、この私製手形を活用することが考えられます。

すなわち、不正を追求した段階でしおらしくしていても、公正証書作成を嫌がり、公証役場で
「あっかんべー」
されると、どんなに段取りを充実させても、公正証書は永久に完成しません。

しかし、不正を自白し、賠償義務を異議なく認めた場合に、こちらが用意した手形にすかさず署名させてしまえばいいのです。

仮に難癖つけて支払を拒否するようなら、手形訴訟に持ち込んでしまえば難癖をすべて遮断して判決を得ることが可能となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです