団体交渉といえば、春闘で、ベースアップがどうこう、景気が悪いから賃上げもこの辺で妥協、といった、マクロ経済の議論や物価の高低、景況判断を踏まえた、もっと、労働者全体が関わる、大きく広汎なテーマが話し合われるようなイメージがあります。
ところが、
「従業員を解雇したら、当該従業員が独立系労組に駆け込み、組合加入通知と団体交渉の申入通知が送りつけられてきた」
というケースにおいては、ほぼ100%、組合員の解雇という個人的な問題が、団体交渉の目的たる事項とされます。
一個人の労働契約に関する問題を、企業内のことをあまり知らない労働組合からとやかく口を差し挟まれるのは奇異な感じがしますし、
「そんな、ズレまくっているテーマでの団体交渉なんて、普通にシカト(無視)しちゃっていいんじゃないの?」
という話になってもよさそうです。
しかし、前記のような一労働者の解雇の是非といった超属人的な問題も
「団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇や団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」
である以上、義務的団体交渉事項として、会社は交渉に誠実に応じるべき義務(労働組合法上の義務)を負います。
会社が、かような交渉事項に関し、正当な理由なく交渉を拒絶した場合、労働組合法に違反する労働組合活動の妨害行為(「不当労働行為」といいます)として、様々なペナルティを負担することとなります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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