一般社会においては、反社会的勢力その他、一定のレッテルを貼られると、あちこちで社会生活の妨害を受け、かなり窮屈な思いをします。
ところが、民事裁判においては、裁判所は、事件屋、反社会的勢力その他
「品位も常識もない、世間的には鼻つまみ者ともいうべき、法の不当利用者」
であっても、何の躊躇もなく勝訴判決を与え、他方で、そのような
「品位も常識もない、世間的には鼻つまみ者ともいうべき、法の不当利用者」
の被害者となった善良を絵に描いたような保護と救済に値するようなか弱き一般人を助けてくれない、ということが普通に起こります。
このように、
「法と正義の番人で、悪を倒すはずの裁判所」
が、ヤクザを助けて、カタギを苦しめる状況は、なんだか奇異な印象を受けます。
しかしながら、
「法は自らの権利保全に勤勉な人間を保護する」
という法諺があり、裁判所も、この原則を忠実に実現しようとします。
すなわち、
「パンチパーマで、剃り込み入ってて、ジャージ着てて、大きい声で、関西弁で、民事訴訟法や裁判実務をよく勉強し、ありとあらゆる手練手管を用いて、文書を徴収する」
ことを厭わない
「品位も常識もない、世間的には鼻つまみ者ともいうべき、法の積極的利用者」
こそが、
「自らの権利保全に勤勉な人間」
として民事裁判上保護すべき、ということになります。
逆に、法をあまり知らず、騙されて不利な文書に署名したりした善良な一般人は、可哀相といえば可哀相ですが、こういう人は、いってみれば
「ロクに文書を読まずにサインや押印をするようなだらしない人間」
なのであり、民事裁判を貫徹する本質的理念である自己責任の原則を徹底すれば、こんな
「 だらしない人間 」
など厳しい責任を課すこともやむを得ない、ということになるのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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