場所や当事者などの要素に外国が絡む渉外的な法律関係には、
「どこの国の法律により規律されるのか」
という問題があり、規律する国の法律を
「準拠法」
と呼びます。
わが国の法の適用に関する通則法(通則法)7条によれば、私人同士の契約の成立や効力についての準拠法は、当事者が契約の際に合意した国の法律となります。
仮に契約の際に準拠法を決めなかった場合には、例えば通常の動産売買契約であれば売主側の国の法律が準拠法となります(通則法8条)。
今回の場合、売買契約の際に準拠法が決められていなかったようなので、売主側の国の法律、すなわち日本法が契約準拠法となるのが原則です。
ところが、平成19年1月から施行された通則法において、消費者と事業者の間の契約(消費者契約)について、消費者保護の観点から、
「消費者契約の特例」
が新設されました(通則法11条)。
これによると、契約の際に準拠法が決められていなかった場合には、消費者が常日頃生活している国(常居所地)の法律が準拠法となります。
また、準拠法が決められていた場合でも、消費者が、自分の常居所地の法律のうち特定の強行規定(契約当事者同士が適用しない旨を合意しても、強制的に適用されてしまう規定)も適用するよう求めた場合には、その規定が適用されることになっています。
ですから、事業者は、外国人のお客さんと契約の場合、十分注意をしないと、思わぬところで
「アウェーの法律」
に縛られることになります。
もっとも、
「消費者契約の特例」
にも例外があります。
消費者自らが事業者側の国に赴いて契約を締結した場合(「能動的消費者」と呼ばれます)、
「自ら進んで外国の事業者と取引したのだから保護してあげる必要はない」
とされ、適用がなくなるのです。
ただし、事業者が消費者に対し、当該消費者の常居所地で
「勧誘」
を行っていた場合には、
「消費者契約の特例」
が適用されるので注意してください。
この場合は、
「外国の事業者の勧誘に乗っかって取引をしてしまったのだから、保護してあげる必要がある」
というわけです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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