特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を総称して、産業財産権(かつての工業所有権)といいます。
近年のわが国の
「知的財産戦略」
のお陰で、特許権をはじめとする産業財産権は一躍脚光を浴び、マスコミ等が騒ぎ立てる
「発明で大金持ち」
のシンデレラストーリーと相まって、
「何でもかんでもとにかく出願」
という風潮が高まりました。
しかしここ最近、こうした状況に疑問を呈する声が上がり始めました。
といいますのも、特許権をはじめとする産業財産権に共通する特徴として、権利として保護されるためには
「登録」
が必要であるという点が挙げられます。
この
「登録」
という制度は、裏を返せば
「世界の中心で企業秘密を絶叫する(企業機密を、自主的に世界中に暴露する)」
ことを示しています(ただし、意匠権については3年以内に限り登録内容を秘密にする制度があります)。
確かに、登録された権利を侵害して商売する企業などには、利用の中止を求めたり、利用許諾の対価を請求したりできますが、単に家庭内で利用する場合等、個人使用の範囲にとどまっている限りは利用の中止や対価を求めることができません。
つまり、一般消費者を対象とする
「誰でも作れちゃう」商品
の作り方を出願して、これが一般に公開された場合、たとえ他企業がマネしなくても、商品の売れ行きは落ち込んでしまうわけです。
さらに、知的財産権の属地主義(登録した国の国内のみしか効力が及ばないこと)の原則のお陰で、わが国でせっかく出願・登録されても、海外で別途出願の手続をとらなければ、海外ではパクられ放題となってしまい、これを避けようとして、たくさんの国で出願すれば、それだけ多額の費用が掛かります。
これが、
「わが国での無計画な出願の乱発が、かえってわが国の貴重な知的財産流出の深刻な要因となっている」
との批判(ないし嘆息)がなされている所以です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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