著作権法は、データベースについて
「データベースの著作物」
として保護されると規定されています。
しかし、著作権法は、
「創作的表現」
を保護するものであり、すべてのデータベースが平等に保護されるわけではありません。
同法によれば、
「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」
のみが保護されるとされています(同法12条の2)。
条文の文言から明らかなように、
「情報の選択」
や
「体系的な構成」
に独自の表現が存在することが、著作権法上保護されるための要件となっているわけです。
もう少し砕いていえば、たとえば、車に関するデータベースを考えてみると、
「実際に乗ってみた場合の主観的な乗り心地」
とか
「購入者の職業・家族構成」
のように、車に関するデータとして通常収集される年式・車種等を超えて独自性が認められる指標が存在する場合には、
「情報の選択」
に創作性が存在すると判断される余地があります。
また、
「ある車を検索すると似たフォルムの車が、お勧めとして自動でツリーのように表示される機能」
があったりすると、検索の利便性を独自に高度化しているために、
「体系的な構成」
に創作性が存在するとして、
「データベースの著作物」
と認められる可能性もあるものと考えられます。
ところが、著作権法は、上記のようにあくまでも
「創作的な表現」
を保護するものであり、人の努力の程度によって保護する、保護しないを決するわけではありません。
すなわち、ピカソが5秒でなぐり書きをしたスケッチは独創的な絵画としてもちろん著作物とされるものの、車についてありふれた条件を収集し、ありふれた体系に整えることに何年時間をかけたとしても著作物とはならず、たとえ、データの個数が100万個を超えていようが保護されないものはされないのです。
この点、
「額に汗をかくぐらい、お金と労力をつぎ込んだものについては、著作物として保護すべき」
という
「額に汗の法理」
が諸外国では唱えられることがあります。
このような法理は、EU諸国では比較的認められることもあるといわれていますが、日本や米国では、著作権法の趣旨に合わないことから残念ながら採用されていません。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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