00458_買主が行方不明で取引が前に進められない場合、状況を放置しておいて問題ないか?

約束の日時に商品を提供する義務からは免れられても、商品自体を納品する義務から免れることにはなりません。

そこで、このような売り主が商品を納品する義務からも免れるためには、契約自体を解除しなければなりません。

もっとも、裁判例の傾向としては、
「買い主側が受領遅滞した」
こと“のみ”を理由とする契約の解除は、原則として(特段の事情がない限り)認めてくれません。

そうなると、
「商品受領をほったらかしたまんま、休んでいるんだか、夜逃げしたんだか、分からない状況にあるいい加減な買主」
相手に、代金の支払を催告し、代金の支払がないかどうか確認し、その上で、代金不払いという債務不履行を理由として、契約解除通知を行う、といった面倒くさい段取りを踏む必要が生じます。

もちろん、この
「いい加減な買主」
がそのまま消息不明になってくれればいいのですが、量販店に売却してしまった後、同社社長が、ひょっこり戻ってきて、
「あの時の美顔機50台、早く持ってきて」
などといわれると、今度は、こちら債務不履行に問われることになりかねません。

「解除」
のような
「意思表示」
は、契約の相手方に到達しない限り効力がありませんので、相手方が行方不明などの場合、解除通知が不可能な事態に陥ります。

この場合、民法98条の
「表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる」
という規定にしたがって、
「解除の意思表示」

「公示する」
ことになります。

さらに、株式会社間の取引の場合、商取引として行っているわけですから、商法524条も検討する価値があります。

同条の適用により、商人間では、買い主が商品の受領を拒み、または受領できないときは、その商品を供託するか、相当の期間を定めて催告した後、その商品を競売できます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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