土地(敷地)の賃貸借は、
「土地の所有者」と「土地を利用する者」
との間で締結されるものであり、また、建物賃貸借は、
「建物の所有者」と「建物を利用する者」
との間で締結されるものです。
それゆえ、
「土地を利用する者」が、
「土地の所有者」から土地を借りて建物を建築し、
今度は
「建物の所有者」として「建物を利用する者」に建物を貸した場合
であっても、
「土地の所有者」と「建物を利用する者」
との間に、契約関係はありません。
なお、
「土地の所有者」
にとってみれば、
「建物を利用する者」
は、建物の利用と同時に、事実上、土地も利用しているのだから、あらかじめ
「土地の所有者」
の許可を求めてもよいような気もしますが、この点について最高裁1971年4月23日判決は、法律上、土地を利用しているのは依然として
「建物の所有者」
であるとして
「土地の所有者」
の許可は不要であるとしています。
このように、
「土地の所有者」と「建物を利用する者」
との間には、何らの契約関係も、何らの利害関係もないのが通常です。
ところで、
「土地の所有者」と「建物を利用する者」
との間には、何らの契約関係も利害関係もない以上、仮に、
「建物の所有者」が「土地の所有者」に地代を払っていない場合
であっても、“代わりに地代を支払う”根拠を欠くとも思われます。
しかしながら、実際に
「建物の所有者」が地代を支払わなければ、
そのうちに土地(敷地)の賃貸借契約を解除されてしまい、結果として、建物からの退去を強制されてしまいます。
そこで、何とか、土地(敷地)の賃貸借契約を解除されないように、“代わりに地代を支払う”ことができるかが問題となります。
この点、最高裁1986年7月1日判決は、
「建物賃借人と土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが、土地賃借権が消滅するときは、建物賃借人は土地賃貸人に対して、賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあるから、敷地の地代を支払い、敷地の賃借権が消滅することを防止することに法律上の利益を有する」
として、
「建物を利用する者」
による地代の支払いを有効としました。
この判例を適切に活用することにより、きちんと家賃を支払っている建物を利用する者としては、
「『建物の所有者が土地の所有者に地代を払わない』等という、自分ではどうにもできない理由で、底地のオーナーから無理やり建物から追い出される」
という事態を防止できる、というわけです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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