00485_定年後の継続雇用の際、選り好みをして、問題労働者を排除できるか?

公的年金の支給開始年齢が65歳になっていくのに伴い、空白期間が生じないよう継続雇用を実現するために、2006年に高年齢者雇用安定法が改正・施行され、65歳定年制等を段階的に進めることが義務付けられました。

この結果、65歳までの雇用確保措置として、
1 定年引き上げ
2 継続雇用制度の導入
3 定年制度廃止
のいずれかの措置を講じなければならなくなり、設例企業のように2を選択する企業が多いのが現状です。

継続雇用制度を導入する場合、労使協定により、対象者について基準を定めること、すなわち
「希望者全員を対象とはせず、選り好みする制度」
としてしまうことも可能です(法9条2項)。

この基準は、労使の協議により、各企業の実情に応じて定められますが、具体性・客観性が必要とされ、他の労働関連法規や公序良俗に反するものは認められません。

この
「選り好み高年齢者継続雇用システム」
に関連して、2012年11月29日に最高裁判決が出されました。

本件では、定年後1年間の嘱託雇用契約により雇用された労働者が、同契約終了後の継続雇用を求めたものの、基準を満たしていないとして拒否されました。

これについて最高裁は、
「基準を満たすものであったから、被上告人(労働者)において嘱託雇用契約終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由がある」
「基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく・・・雇用が終了したものとすることは・・・客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」
として、再雇用されたのと同様の雇用契約上の地位を認めました。

本件では、点数制の基準となってはいたものの、実際は会社に都合の良いように算定されていたため、企業側は敗訴しました。

このように、継続雇用の場面でも、具体的・客観的な基準と、
「客観的合理的な理由」
及び
「社会通念上の相当性」
という解雇の場面で適用されるのと同様の法理により、企業が意図的に特定の労働者を排除することは認められません。

ところで、2013年4月に施行された高年齢者雇用安定法は、再雇用の選別基準を廃止し、65歳までは希望者全員を再雇用の対象とする制度になっています。

ただし、13年度から12年間は経過措置があり、老齢厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢に達した者については、引き続き再雇用の基準を利用できます。

そのため、経過措置に伴い
「選り好み」基準
が使用される場面では、先程の最高裁判例が依然として意味を持ちます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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