事業承継とは、その名のとおり、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。
一般に、中小企業等においては、オーナー兼社長の人脈や経営能力が会社経営の基盤となっていることが多く、このような経営基盤を引き継ぐのが誰であるのかといった人的承継の観点が、事業承継を成功させるにあたっての重要な要素となります。
実際、日本の中小企業をみますと、このような
「人的」
な経営基盤を承継しやすい親族内承継が過半を占めておりますが、その割合は近年急速に減速しており、従業員等やM&Aを利用して親族外に承継させる事例も増加しているといわれています。
経営者としての教育を含めたこのような人的承継について決断したとして、次に問題となるのが、経営権を確保するために株式をどのように移転するのか、という財産承継の方法等です。
株式という多額の資産価値が化体した有価証券が移動するのですから、それまで蓄積されてきた含み益が取引によって一気に現実化しますので、この
「利益」
が生まれた瞬間を狙って、日本最大の暴力団などと揶揄される税務当局がみかじめ料を徴求する機会が生じますので、これを逃れる途はなく、原則として課税が発生します。
逆に、もし、事業が赤字垂れ流しで、あるいは負債が多く、株式価値がゼロに近いという場合、当該事業は、承継する価値がなく、さらにいえば、赤字を垂れ流すということは
「1万円札を2万円で買ってきて、5000円で売りさばいている」
という愚劣なことに資源を投入して動員していることを意味し、経済社会の害毒そのものであり、承継はおろか、一刻も早く消えてなくなってしまった方がいい存在といえます。
要するに、承継する価値のある事業とは、株式に相当の価値が内在している企業を指し、となれば、オーナーシップ承継の上では、内在化・潜在化した価値の顕在化を不可避的に内包することになるのです。
すなわち、税務の問題を抜きにしてオーナーシップの承継を行うことはまず不可能です。
実際、いつどのようにして株式を移動するのかといった承継方法いかんによって、課される税金の額は大きく変わりますから入念な準備が必要です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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