00531_守秘義務条項を作る際の注意点

守秘義務条項については、機密の特定が問題になります。

単に
「秘密の持ち出し禁止」
といっただけではあまりに漠然としていて当該条項の法的有効性に疑義が出てきます。

一例を示すと、

1 事業資料及び財務資料 :
事業計画書、事業提案書、営業計画書、営業企画書、財務諸表及び経理資料、人事等に関する情報(従業員の地位、職責、住所、電話番号等の個人情報を当然に含むがこれに限らない)
2 価格情報 :
製品の原価情報、原価計算情報、販売価格・卸価格情報、リベート(値引き)に関する情報その他価格情報並びに価格決定に関する情報一切
3 コンピュータソフト及びデジタルデータ :
各種コンピュータソフトウェア(カスタマイズあるいは開発されたものやこれらの途上のものも含む)及びこれらの運用によって作成ないし整理されたデータ
4 顧客情報 :
現顧客潜在顧客を問わず、顧客情報、顧客リスト及び顧客に関連する情報一切
5 取引先・協力会社情報 :
貴社仕入先ないし貴社提携先の、存在、呼称・連絡先あるいはこれらの会社との契約内容・取引内容、技術援助、外部委託関係及びこれらに関連する一切の情報
6 製法等 :
事業モデルに関する情報、製品設計に関する情報、製品の原材料、製品製 造手法、製品製造工程、製品コンセプト、製品企画、製法マニュアル・使用マニュアル類、その他製品ないし販売方法に関する全てのノウハウ及び情報一切
7 実験結果 :
貴社在職中に行った実験、分析により得たデータや、他製品(試作品や部品を含む)開発過程で得たデータ
8 以上の他、私が、貴社在職中に知り得た貴社事業に関する情報一切

みたいな感じになりますが、この辺の特定の緻密さが、予防法務の専門家にとっての職人芸みたいなところになってきます。

あと、機密漏洩方法について行為面から特定していくことも重要です。

ここでいう
「行為面からの特定」
とは、機密が格納された媒体(書類や光学メディア等の一切)を許諾なく移動することを禁じたり、雇用契約終了時には機密格納媒体の返還を求めたりといった、具体的な場面を想定して、機密の漏洩を防ぐことを指します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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