訴訟の場合、原告にとって一番負担となるのは、時間と費用です。
最近ではずいぶん改善されたとはいえ、やはりちょっと経過がややこしい紛争になると、裁判に1年以上かかるのは珍しいことではありません。
それと、裁判所に過度の期待は禁物です。
裁判所といえば、
「すごく優秀な人がなんでもお見通しで正義と公平を実現してくれるところ」
という印象をもっておられる方が多いのですが、これは間違いです。
裁判官も公務員で、公務員は文書や客観的事実と法律に基づいてしか権利を認めてくれません。
口でいくらワーワー叫んでも、肝心な文書がないと、
「主張を裏付ける証拠がない」
として契約の存在を認めてくれません。
裁判官のアタマの中での社会常識(これを業界用語では、「経験則」といいます)では、
「普通の人は重要な約束をしたら文書を取り交わすはずであり、主張している約束を記した文書がないということはそもそもそのような約束がなかったか、あるいはいまだ法律的な意味での約束にまで至っていなかった」
という定理が支配しています。
特に、きっちりとした予防法務の措置を取らず、裁判官の情緒に訴えようとして
「相手が不道徳だ、非常識だ、おかしい、変だ」
と非難し、大した証拠もなく、口でワーワー言うタイプの訴訟を展開するとなると、和解不調で判決ツモの状態にまで至るとなると、相当厳しい結果を予測しなければなりません。
ただ、裁判官といってもタイプはいろいろで、中には、和解を斡旋してくれるような裁判官もいます。
相手方の状況次第では、純法律的理由以外の理由で和解に応じる可能性もあり、この期待が相当程度考えられるとなると、訴訟を提起する意味もあります。
もちろん、相手が徹底応戦し、裁判官としても、
「記憶があっても、記録がない」
という状況で、感情的な話しか出てこないことに辟易しだすと、和解もそこそこに、厳しい判決が想定以上に早く出てしまうこともあります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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