企業統治のお仕事の実際は、
「会社法に基づき、株主総会や取締役会を“仕切る”」
ということに尽きるのですが、
「“仕切り”が甘かったりすると、ボスが決まらなかったり、会社運営の基本方針が混乱し、会社を揺るがす大きなトラブルに発展する」
という意味で、非常に重大な任務であり、担当者は大きなストレスを抱えるようです。
ところで、株主総会や取締役会を仕切る法務部や総務部の責任者がストレスを感じるのは、
「会社法や会社紛争裁判例の知識が不足しており、あるいは紛争処理の経験がないため、異常事態や例外事象に対応できないから」
という事情のようです。
とはいえ、会社法や会社紛争裁判例の知識がなかったり、紛争処理の経験値が乏しい、と感じているのであれば、別に自分たちでウジウジ悩む必要はなく、会社のカネを使って外部から調達すればいいだけです。
「社会人の仕事」
と
「学生の勉強や試験」
との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って
「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」
という点です。
すなわち、学生時代においては、勉強や調べ物や宿題やレポートは全て自力でやり遂げるべきものであり、
「家庭教師にカネを払って代わりにやってもらう」
などということは言語道断であり、また、試験でカンニングしたり、替え玉に受験させたりするのは、犯罪行為とされます。
しかしながら、社会人が仕事を進める上では、
「『自分たちだけでやり遂げる』ことにこだわり、ロクに知識もない素人が何ヶ月かけてグズグズ議論する」
という方が給料の無駄であり、会社にとって有害です。
むしろ、迅速かつ適価にて、外部のプロから必要な資源を調達することこそが仕事のあり方として求められます。
法務部や総務部に配属される方は、どちらかというと生真面目な試験秀才タイプが多く、
「“仕事”と“お勉強”の違いがわかっておらず、企業統治という純経営課題を学究課題と勘違いし、時間がかかっても自力で調査する」
という無駄で非効率な方向性に向かいがちです。
無論、自力で正しい解決に辿りつければいいのですが、情報や経験の不足から、方向性を誤り、
「時間をかけた挙句、仕切りをミスって、会社に大きな迷惑を被らせる」
という悲惨なチョンボをしでかすこともままあります。
企業統治というお仕事、すなわち、
「会社法に関する専門的知見に基づき、株主総会や取締役会を上手に仕切る」
という課題処理は、要するに、
「会社法に明るい弁護士という“外注業者”をいかに上手に、適価で過剰に使い倒すか」
という点がポイントになります。
無論、最終的な社内ジャッジをする際には法務部や総務部の社員プロパーの仕事になるとしても、ジャッジに至るまでの大部分の情報収集や課題抽出や選択肢整理やプロコン評価といったものは外注処理で賄えば足りる話です。
バカもハサミも弁護士も使いようです。
「学生時代の勉強のように、カンニングや替え玉受験なしで、自力でなんとかしなければ」
と考えて無駄なストレスを抱え込むことなく、外注業者をうまく使いこなすことにより、ラクに、楽しくこなせる仕事にすることができるのです。
初出:『筆鋒鋭利』No.052-2、「ポリスマガジン」誌、2011年12月号(2011年12月20日発売)
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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