00775_紛争・有事状況のゲーム環境たる裁判システムを理解する6:裁判所における事件処理の実体(4)裁判官に好まれる処理しやすい事件と面倒な事件

書面をことのほか尊重(偏重)する民事裁判官の仕事の進め方からは、裁判官にとって
「好まれる処理しやすい事件」

「処理が面倒で好まれない事件」
が存在するという推定が導かれます。

裁判官が好きな事件とは、正邪が明瞭な事案で、かつ正しいとされる側に証拠がきちんと揃っている事件です。

逆に裁判官の頭を悩ます
「処理が面倒で好まれない事件」
とは、
「言っていることは正しいが、肝心要の証拠が全くない」
というタイプの事件や、
「一見証拠はきちんと整っているが、何かうさん臭くて、裏がありそう」
というタイプの事件です。

いずれの事件も、最後まで心証形成が困難で、尋問で勝ち負けのイメージがひっくり返る可能性があり、思考経済上マイナスの事件運営を迫られる要素が孕んでおり、仕事に余計な手間がかかる案件ということが言えます。

このような
「処理が面倒で好まれない事件」
を持ち込む当事者の対応としては、嫌われるような要素をなるべく省く努力をすることが肝心となります。

すなわち、
「言っていることは正しいが、肝心要の証拠がまったくない」
というタイプの事件については、主張の正しさに酔いしれることなく、証拠の弱さを常に意識し、
「主張を直接裏付ける証拠はないが、主張を間接的・補助的に裏付けるこれだけの資料がある」
といった形で、自らの不利を積極的に補う形で立証の努力を怠らないことが推奨されます。

他方、
「一見証拠はきちんと整っているが、何かうさん臭くて、裏がありそう」
というタイプの事件については、
「こちとら証文あるんだから四の五の言わずにカネ払え!」
みたいな強硬な対応ではなく、
「自らの主張が経済的にも社会的にも正当性・妥当性に支えられている」
ということを補完的に主張し、全体として自らの法的立場が形式(証拠)のみならず実質(妥当性・合理性)も具備していることを積極的にアピールすることが求められるのです。

理想的な勝ち方としては、法(形式的な話の筋)で勝ち、事実(実体的な背景)で勝って息の根止める、というものです。

他方で、このような理想的なゲームできない場合は、
「法で負けるなら事実で勝て、事実で負けるなら法で勝て」
で臨むことになります。

どっちもダメなら、という場合はどうすべきでしょうか。

引き延ばして、泥沼化して、消耗戦で勝つほかありません。

ジタバタして、時間と労力を消耗させ、相手も裁判官も反吐が出るほどうんざりさせて、妥協を図れ、というところでしょうか。

運営管理コード:HLMGZ7-5

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです