2010年ころになってから、
「中国進出ブーム」
なるものが日本の全産業界を席捲しました。
その当時の経営者向けのメールマガジン等を見てみますと、
「国連『世界人口白書』によると、世界の総人口が70億人を突破する予定です。そのうちの人口のトップは、約13億人で中国。単純に考えて、世界の5人に1人は中国人という計算です。この国が抱える13億人の一大マーケットは非常に魅力的」
なんてリードがあり、
「今、中国進出しないのはバカです! 何もしないと死にます!」
ともとれるような煽り文句が読み取れます。
この種の威勢のいい号令に従う形で、
「日露戦争における203高地への無謀な突撃」
の如く、数多くの中堅中小企業が中国に進出して行きました。
そこから数年経った2015年になると、中国ビジネスに関するもっともホットな経営テーマは、
「中国進出企業の撤退の実務」
に変貌します。
曰く、
「外国企業が中国事業から撤退しようとしても、日本での撤退手続のように、必ずしもスムーズにいくわけではない」
「中国では、外国企業の撤退に関する法制度が未だ完全には整備されていないため、手続が煩雑で、多くの時間とコストがかかる」
「また、撤退に際して、政府から許認可等を得る必要がありますが、各地方政府の担当官の裁量により、ケース毎に撤退に関する判断や要求が異なる場合が多くある」
「中国における清算の実務上のポイントを説明し、いくつかの実例を挙げながら、よりスムーズに撤退手続を行うための方策」
なるものを勉強しましょう、といったセミナーが、中国からの撤退を考える中堅中小企業の経営幹部に人気になりました。
こういう状況を冷静に観察すると、
「進出するのか、撤退するのか、どっちやねん!? お前ら(中略)ちゃうか?」
というツッコミを入れたくなります。
日本の中堅中小企業の経営者の多くが、なぜ、こんな無意味で愚劣な行為をするのでしょうか?
「東大卒弁護士」風情
では理解ができない、何か、高度で深淵な意味があるのでしょうか?
私はそう思いません。
「経営者が、多大な時間とコストとエネルギーを注ぎ込んで中国に進出した挙句、数年後、さらに多大な時間とコストとエネルギーを費消して撤退する、という壮大な愚挙を敢行する」
のは、何か深淵で高邁な意味があるわけではなく、単に、
「経営者が愚劣だから」
ということに尽きると思います。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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