00931_企業法務ケーススタディ(No.0251):海外で訴えられた! その2 懲罰的損害賠償の敗訴判決など放っておけ

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2010年10月号(9月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」二十三の巻(第23回)「海外で訴えられた! ~その2懲罰的損害賠償の敗訴判決など放っておけ」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
アメリカ合衆国 某

海外で訴えられた! その2 懲罰的損害賠償の敗訴判決など放っておけ:
当社は、訴訟に負け、懲罰的損害賠償を請求されました。
賠償額は驚くほど多額なうえに、懲罰的損害賠償というものは、日本の法律には存在しません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:外国での判決の有効性
法律というものは、その国で問題になった事柄を解決するために存在するものであり、主権の及ばない他国での適用は想定されていません。
したがって、どれほど権威ある外国で出された判決であったとしても、それを別の国が、自国の判決として
「承認」
するかどうかは別問題です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:外国判決と日本の公序良俗
外国で判決が出されたとしても、その判決が日本で常に有効的であると扱うことは、日本の常識や価値観を否定することにほかなりません。
このような状態を調節するために、承認要件(4)
「日本の公序良俗に反する判決でないこと」
があげられています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:萬世工業事件
萬世工業事件(最高裁平成9年7月11日判決)では、最高裁は、損害を填補する意味合いの賠償額は認めたものの、懲罰的損害賠償の部分は
「我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しない」
と判断しました。
日本での損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、制裁を与える趣旨等は基本的に含まれていません。

助言のポイント
1.懲罰的損害賠償? 日本にそんな制度はない。すなわち、日本でそのような制度に基づく巨額な損害賠償が強制執行されるおそれは、まずない 。
2.どこかの国で出た日本の法感覚からズレる判決なんて恐れるに足りない。自分の常識や価値観を信じよう。焦って弱みにつけこまれないようにしよう 。
3.知らない法律の話と直面したときには、自らの判断で不利益をこうむらないように、これに精通した専門家に相談すること。それこそが、無用なリスクを回避する最善策 。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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