00937_企業法務ケーススタディ(No.0257):種類株式等の効用

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2011年4月号(3月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」二十九の巻(第29回)「種類株式等の効用」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
大神(オオカミ)キャピタル
パックマン・ファンド
テイク・アンド・オーバー投資銀行
マウンティング証券

種類株式等の効用:
当社が新たに設立する子会社に対する出資の打診が複数のファンドからきました。
出資をすべて受け入れると、ファンドに株式の過半数を握られ当社は少数派に転落、子会社を乗っ取られるということになるでしょう。
株式を設計するなどして、カネを引き出しつつ経営は維持する何かよい方法はないでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:株主平等原則
株式会社という制度は、経営については経営のプロに任せることで、出資者としての株主は何の能力を問われることもないという仕組みを前提に、多くの人からの出資を募ると同時に、経営陣がそれらを元手に会社の利益の最大化を図ることができ、結果として、株主に利益を還元することができることを指向しています(所有と経営の分離)。
株式会社の所有者は株主であり、 経営者は、所有者としての株主から信認を受けて経営を行っているにすぎません。
株主は、その保有する株式の内容と数に応じて取り扱(「株主平等原則」(会社法109条1項))われることとなりますので、会社経営については、基本的には多数の株式を所有する大株主の意向次第であるということができます(資本多数決の原則) 。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:種類株式
会社は、次の9つについては、普通株式とは、内容を異にすることができる種類株式を発行できます(会社法108条1項)。
1.剰余金の配当
2.残余財産の分配
3.株主総会で議決権を行使できる事項
4.譲渡制限
5.株主による株式の取得請求権
6.会社による一定事由の発生を条件とする取得条項
7.会社が株主総会決議でその種類の株式の全部を取得できること
8.株式会社の決議事項のうち、その決議の他、当該種類株主の種類株主総会の決議を必要とするもの
9.種類株主総会の決議で、取締役会・監査役の選任をすること

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:株式の属人的定め
さらに、全株式の譲渡が制限されている非公開会社に限って、株式の内容や数を無視して、株主としての権利を定款で定めることができます(会社法109条2項)。
利用することができるのは、
1.剰余金の配当
2.残余財産分配
3.議決権
に限られますが、例えば
「親会社は、他の株主の○倍の議決権を有する」
などとして、 子会社をより強固に支配することができます。

助言のポイント
1.株主の心理などすぐ変わる。信頼しすぎることなく、万が一に備えて、磐石な支配権維持を心がけよう。
2.平成17年改正会社法は、株主を不公平・不平等に取り扱う会社経営を容認している。ワンマン体制確立のための種類株を活用しよう。
3.種類株は多種多様。相手方がどのようなことを望んでいるのかを正確に把握した上で、緻密に資本設計を行う必要がある。
4.相手がカネにしか興味がなく経営に関心が無い場合には、株式の属人的定めも十分考慮しよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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