本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年2月号(1月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」四十八の巻(第48回)「適格消費者団体」をご覧ください 。
当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
相手方:
特定非営利活動法人 市民のハートをくすぐるネットワーク
適格消費者団体:
当社営業マンが行った契約解除(クーリングオフ)の妨害行為について、内閣総理大臣認定適格消費者団体を名乗る団体から、当社宛に通知文が届きました。
当社の社長は
「政府の名前を騙ったりして、儲かっているわが社に難癖をつけてくる連中が多くて困る。
法人でもない市民団体に訴訟なぞ起こせるわけがなかろう。
弁護士でもないものが一般市民から相談を受けて通知文を出すなど、弁護士法違反も甚だしい。
逆に、営業妨害で刑事告訴する」
と怒っています。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:民事訴訟法における当事者能力・当事者適格
民事訴訟では、
「人」
が
「原告」
となって訴えを起こす必要があり、相手方となる
「被告」
は、自分の権利の実現を、実際かつ直接的に
「阻害している人(法人)」
を対象としなければなりません。
民事訴訟の当事者となれる
「当事者能力」
と、
「当事者適格」
を有することは、民事訴訟を適法に進めるための条件の1つです。
当事者能力や当事者適格を有さない者が
「原告」
となったり、当事者適格を有さない者を
「被告」
として訴訟を提起した場合、当該訴訟は不適法なものとして
「却下」
されるのが原則です。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:当事者能力・当事者適格の例外
「人」
「法人」でなくても、
「代表者(管理者)」
の規定があり、その者によってきちんと管理されている社団や財団は、民事訴訟法上、例外的に当事者能力が認められています。
わかりやすいものとして、大学のサークルや町内会があります。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:適格消費者団体制度
適格消費者団体制度とは、一般市民と企業との間の契約トラブル等により、1つひとつの被害額は少額でも、被害者が多数に上る悪質な営業などを行っている業者に対して、一定の要件を満たした消費者団体が被害者に代わって訴訟を起こすことができる制度をいいます。
「適格消費者団体」
として、認められるためには厳しい条件があります(消費者契約法13条3項) 。
1.特定非営利活動法人又は民法34条に規定する法人であること
2.不特定多数の消費者の利益擁護のための活動を主たる目的とし、その活動を相当期間継続して適正に行っていること
3.体制及び業務規程が適切に整備されていること
4.理事会の構成および決定方法が適正であること
5.消費生活の専門家および法律の専門家がともに確保されていること
6.経理的基礎を有すること
そして、このような条件を具備し、内閣府総理大臣から適格消費者団体として認定を受けた団体は、
1.消費者契約法に違反する営業行為に対して、書面をもってそのような営業行為をやめるよう請求する権利
3.当該書面でも是正されない場合に、民事訴訟の例外として、消費者に代わって、消費者契約法に違反する営業行為をやめることを求めて訴えを提起する権利
を付与されます。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:適格消費者団体が訴訟を行った実例
平成20年、貸金に対して利息以外の違約金を定めていた消費者金融業者に対し、ある適格消費者団体が訴訟を提起し、京都地方裁判所は、
「被告は、被告が消費者と金銭消費貸借契約を締結するにあたって、貸付金の最終弁済期日前に貸付金を全額返済する場合に、消費者が返済する残元金に対し割合的に算出される違約金を負担する内容の契約条項を含む契約の締結を停止せよ」
といった概要の判決を下しています(平成21年4月23日)。
助言のポイント
1.聞いたこともない団体からの通知だからといって放置は禁物。
2.適格消費者団体制度の意味、その権限についてしっかり理解しよう。
3.いきなり訴訟を提起されることはないが、違反の是正を求める通知が届いたら、まずは、事実関係の徹底した社内調査を行うこと。
4.争う姿勢を示すことも大切だが、適格消費者団体との真摯な話合いを求めよう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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