本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2014年9月号(8月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」六十六の巻(第66回)「動画まとめサイトで著作権侵害?」をご覧ください 。
当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
相手方:
某動画サイト運営者
動画まとめサイトで著作権侵害?:
社長は、当社も動画まとめサイトの運営をし広告収入で儲けようと思いつきました。
リンクを張るだけであれば著作権の問題となるわけがない、と考えます。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「リンク貼るだけなら関係ない」と言い切れるか?
著作権のある動画や写真を、テレビやラジオ、インターネットといった公衆の電波上に公開する権利というものがあり、他人の著作物を著作権者の許可なくインターネット上に公開した場合、著作権者の公衆送信権の侵害となります(「公衆送信権」著作権23条)。
インターネット上に公開されている動画のリンクを自らのサイトに張った場合に、著作権の侵害となるかどうかは、経済産業省の
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
にて
「他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」
として記載されています。
リンクを張った人は、リンク先へ道案内を行っただけであり、リンクを張った人が公衆の電波に乗せたわけではないと考えられているのです。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:著作権侵害の「共犯」とされるリスク
リンクを張るだけであれば必ずしも著作権侵害とならない、というわけではありません。
他人の行った著作権侵害の幇助、すなわち、他人の行った著作権侵害を助けたとして、違法な行為を行ったとされることがあります。
裁判例では、
1.著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることがその内容や体裁上明らかではない動画であり、
2.動画のアップロードが著作権者の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちにリンクを削除している、ことから、著作権侵害の幇助にあたらないとされたのであり、
裏を返せば、
1´.著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることがその内容や体裁上明らかな動画であり、
2´.著作権者の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちにリンクを削除しなかった場合は、著作権侵害の幇助にあたり得る、
ということになるのです。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:動画へのコメントを放置することのリスク
著作権の侵害は民法上の不法行為にあたりますから、著作権を侵害したことによって生じた損害を賠償するようにと金銭を請求されたり、著作権者からの削除を求められたりする場合があります。
動画を掲載したサイトを運営するにあたって広告費用をもらっているような場合、途中で掲載動画を削除したりサイト運営を中断したことによって、違約金等が発生する可能性もあります。
また、動画の著作権者の許諾がある動画についてリンクを張り、その動画に撮影されている人物を誹謗中傷する記事の掲載や、コメント欄を作成し、読者に動画の批判をさせた場合、その人物の社会的評価を低下させる発言として、名誉棄損にあたる可能性があります。
名誉棄損にあたれば、金銭的賠償のみならず、名誉回復措置として謝罪文の掲載を求められることもあるでしょう。
さらに、名誉棄損は、民法のみならず、刑法にも規定されており、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が課せられる(刑法230条1項)と規定しています。
助言のポイント
1.「リンクを張るだけなら安心」ではなく、動画の内容や体裁から動画の著作権者に断りなくアップロードされていないか注意深く確認すること。
2.動画の著作権者から削除を求められたすぐに削除すること。
3.動画に対する記事やコメント欄を作成するときは、動画に登場する人に対する誹謗中傷になっていないかよく注意すること。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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